取り急ぎ の意味と使い方

「取り急ぎ」の意味

「取り急ぎ」とは、本来は「取り敢えず」と同じ意味で、急いで、真っ先にという意味合いです。

ただし、現在では、「取り敢えず」は”順序が先であること”の意味合いが強くなり、”急であること”を意味する言葉としては「取り急ぎ」を使用することが一般的になっています。

もっとも、「取り急ぎ」と書かれていても、必ずしも急用であるとは限りません。むしろ、特に意味のない慣用的な修飾表現として使われているケースが多いと思われます。例えば、次のような使われ方をしています。

「取り急ぎ」の例文

八十八夜という言葉に初夏の訪れを知る今日この頃、○○君にはお元気でお過ごしでしょうか。
先週、拙宅の裏山にある茶畑で新茶の摘み取りが始まりました。私は茶摘みのお手伝いなどしていないのですが、かねて親交のある農家の方より貴重な八十八夜の朝摘み新茶をお裾分けして頂きました。
些少ではありますが、取り急ぎ爽やかな初夏の香りをお届けします。

「取り急ぎ」という言葉は、実際の急な知らせの場合だけでなく、予期せぬ便りの唐突さを取り繕うようなニュアンスや、相手のことを大事に思う気持ちなどを表現したいために、慣用的に使用されているケースが多いと言えます。

「取り急ぎ」を目上の人(上司・社長・義父母など)へ使う場合

特に急ぐべきことを連絡する際に使う「取り急ぎ」は、準備が十分でないという意味を含んでいます。

そんな不十分な状態での連絡に対して許可してくださいというニュアンスも感じられます。ですから、本来ならきちんと準備をして連絡や報告をすべき上司や取引先、目上の人に使うのはあまりおすすめできません。

目上の人に使う場面は、例えば、取引先から至急回答を求められた場合や業務上の緊急事態が起きた時などに、部下として上司に、取り急ぎお伝えしますので指示をお願いいたします、というケースでしょう。

「取り急ぎご連絡まで」という使い方をよく見るようになりましたが、基本的に気を使わなくてもいい相手に対してのみ使うようにしたいものです。

十分な準備をしていないという意味の「取り急ぎ」に文末表現を省略した「まで」を加えていますから、適当な感じだという印象をもたれかねません。

取り急ぎ一筆申し上げます。
・○○の件につきまして取り急ぎ現時点での報告を申し上げます。
・明日のアポの内容について確認しました旨取り急ぎご報告いたします。

「取り急ぎ」「至急」「早急」の違い

「取り急ぎ」という言葉には既に記述の通り、唐突な便りを取り繕うための使い方などが含まれていますが、「まずはこれだけでも知らせておきたい」という急を要するイメージで使われることが多い言葉です。そこで「急いでいる」という状態を表す言葉をいくつかご紹介します。

「至急」

至急という言葉は非常にメジャーであるため「とても急いでいる」「急を要している」という状態や気持ちは十分伝わるでしょう。

もともと「至急」という言葉は、主に電報で使われていた言葉であるため、本来であれば口頭よりも文書で使われる言葉です。「急ぐ状態に至る」という状況を「至急」という言葉で表します。

「取り急ぎ」に比べると、「至急」を使う側の事情をやや優先した印象を与える言葉ですので、目上の人やお客様へは使わない方が無難です。

「早急」

「さっきゅう」「そうきゅう」どちらの読み方も間違いではありません。

「早急」という言葉は「非常に急いで」という状態を表す言葉です。「取り急ぎ」は「まだ準備不足ですが、せめてこれだけでも急いで伝えます」という意味ですので、急ぐレベルが違います。

「早急に対処いたします」と自分の行動について使うこともできますし、「大変恐れ入りますが、早急に書類をご返送ください」などとすれば、相手に強い要求をする文書となります。

相手に対して「早急」を使う場面は限られており、「もういい加減にちゃんとやってくれないと困る」というニュアンスを伝えることになりますので、使い方には注意しましょう。

「取り急ぎ」の間違った使い方

「取り急ぎ」という言葉は、万全の準備を整えていない状態でも使えますし、急いでいるという気持ちも伝えることができるため、とても便利な言葉と言えるでしょう。

しかし、使う状況を間違えてしまうと「取り急ぎ」という言葉は、ただの逃げ口上として受け取られてしまいます。

たとえば「取り急ぎ契約書を作成いたします」などと言われた方は「契約書は大切なものなのに、ろくに準備もできていない状態で急いで作成するなんて、適当なんだな」と受け取る可能性が十分にあります。

「取り急ぎ」という言葉はあくまでも「とりあえず」という意味を含んでいることを忘れないようにしましょう。

「取り急ぎ」を目上の人へ伝える場合の注意点

「取り急ぎ」の言い換え

「取り急ぎ」という言葉は目上の人へも使うことはできますが、文面などでは誤解が生じる可能性もありますので、できれば他の言葉に置き換えたいものです。

たとえば、上司や取引先へ「何かについてのお礼」を「取り急ぎ」「書面」で伝えたい場合は、「略儀ではございますが、まずは書面にてお礼申し上げます」「末筆ながら、メールにてお礼申し上げます」など「取り急ぎ」という言葉自体を別の言葉にした方が間違いがありません。

電話であれば「まずはお礼申し上げたく、ご連絡いたしました」などと伝えれば、「急いで電話をしてくれたんだな」と気持ちを汲み取ってもらうことができるでしょう。