ご心労 の意味と心痛との違いは?使い方と例文

ご心労 の意味

日常で耳にする言葉の中に「ご心労」があります。心を労う、と書く「心労」は、その文字から何となく精神的なものについて使う言葉であることがわかります。

しかし、なぜその「心労」に「ご」を付けるのか、そもそも本当はどういう意味なのか、という点については知らない人も多いかもしれません。

「ご心労」とは精神的な疲労のこと

「心労」とは、「心配」または「精神的疲労」という意味です。

相手や話題の対象となっている第三者が、年長者や立場が上の人、その他敬意を払うべき人である場合は、敬意を表す接頭語の「御」を付けて「ご心労」という謙譲表現にします。

「心労」は、「心配」・「悩み」・「気疲れ」などとほぼ同義語ですが、それらと比較すると硬い言葉であり、自分の精神状態について使うと少し大げさに感じられやすい言葉です。そのため、自分の精神的な疲れに対しては、あまり使うことがありません。

しかし、他人に関してはよく使われる言葉であり、特に目上の人に対しては、会話や書簡文の中で思い遣りの気持ちをこめて「ご心労」が普通に使われます。

ご心労の例文

ご心労のほどお察し申し上げます。

皆様におかれましては、さぞご心労のことと拝察申し上げます。

ご家族のご心労いかばかりかと胸が痛みます。

ご心労が多々おありかと家内も心配いたしております。

ご心労が絶えませんね。

ご心労が重なり、さぞお疲れのことでしょう。

ご心労を重ねてしまい申し訳ございません。

私事ですが、このところ心労が重なっておりまして・・・

心労が募ります。

ご心労が募っておられることでしょう。

ご心労が絶えず、気の休まる暇がないでしょう。

「ご心労」の使い方と例文

「ご心労」は、精神的な疲れを意味する「心労」の敬語表現です。以下では、目上に対する「ご心労」と、自分や身内に対しても使える「心労」の使い方と例文をご紹介します。

「ご心労」は心労の敬語表現

目上の方に対して「ご心労」を使う場合は「ご心労」または「御心労」と書きます。

会長のお加減が良くないのは、ご心労が原因の一つであると、私どもは考えております

仕事のことだけでなく、ご子息のこともいつも気にかけておられて…課長のご心労はお察しいたしております

どちらであっても伝えたい気持ちに変わりはありません。しかし文章にするのであれば「ご心労」と書くと少しやわらかい雰囲気になりますし、「御心労」と書くと重々しい印象にすることができます。

相手の方との関係性や、相手が感じている心労の度合いなどによって使い分けると良いでしょう。

また、相手が目上の方でなくても「ご心労」は使うことができます。口頭でも文章でも、改めて相手にお詫びをしたり、気持ちをかけたいときには「ご心労」を使って問題ありません。

大変な思いをした部下や同僚などへの手紙やメールなどでも「ご心労はいかばかりかとお察しします」などとすることで、立場を越えて相手を思いやる気持ちを伝えることができます。

ご心労が重なる

  • 「ご心労が重なり、さぞお疲れのことでしょう」
  • 「ご心労を重ねてしまい申し訳ございません」
  • 「私事ですが、このところ心労が重なっておりまして」

「重ねる」という言葉と併せて使うことで「心配ごとがいくつもある」「たびたび疲れる」という状態を表すことができます。

「重ねる」は「かさむ」と言い換えても同じ意味で使えます。「ご心労がかさんでおられるのではありませんか」などとすることで「幾重にも心労が重なってしまっているでしょう」という意味になります。

「かさむ」とは「かさばる」などと同じで、何かが多くて手に余る、混雑するという意味です。「心労がかさむよ」と言えば、一言で他にも心配ごとを抱えているということが伝えられます。

ご心労が募る

「ご心労」と「募る」を一緒に使うと、心の中にある心配ごとへの思いがどんどん高まって行く様子を表すことができます。

  • 「心労が募ります」
  • 「ご心労が募っておられることでしょう」

イメージとしては、心の中にある心配ごとが停滞している状況ではなく、刻一刻と変化し続け、その変化によって更に気が落ち着かない、いう状況です。

今まさにそのできごとのまっただ中にいる、というイメージも伝えることができます。

ご心労が絶えない

「ご心労」と「絶えない」を一緒に使うと「一つ終わったと思ったら、また次の心配ごとが出てくる」という状態を表せます。

  • 「心労が絶えず疲れます」
  • 「ご心労が絶えず、気の休まる暇がないでしょう」

心配ごとがまるで波のように次々と押し寄せているような状態は、まさに心労の絶えない状態です。

他にも「絶え間のない心労」「心労が止まず」などと表すこともできます。

ご心労を察する

相手が心労を抱えていることを知っている上で、その苦労を推し量る気持ちを表す場合は「察する」という言葉と一緒に使うと良いでしょう。

  • 「ご心労お察しします」

これはかなり頻繁に使われる表現です。「あなたの心労はわかっています」「想像できています」と、相手の気持ちに寄りそっていることを相手に伝えられます。

「察する」は自分が心労を抱えている場合にも使えます。

「私の心労を察してほしい」などとすれば、相手に対して「もっと気持ちに寄り添ってほしい」と注文を出すこともできます。

注意
しかし「心労」と「察する」を自分について使うと、やや相手を非難する表現になるので使う状況には注意しましょう。

ご心労がたたる

「心労」と「たたる」を一緒に使うと「心労によって何か別のことが起きた別のこと」という意味になります。

  • 「心労がたたったのか体を壊してしまった」
  • 「あまりご心労を溜めるとお身体にたたります」

「たたる」は主に「体の不調」を表すことが多いでしょう。

「たたる」とは、怨霊などの「祟り」と同じ意味です。心労のせいで祟られてしまうのではないか、という少し大げさな例えとして「たたる」という言葉が使われています。

「そんなに心配ばかりしていると、体を壊してしまうよ」「心配ごとが原因で病気になってしまった」という状況と同じです。

「ご心労」の言い換えに使える類語

「ご心労」は、相手の心の疲れを表す言葉です。しかし、場面によっては「ご心労」と似た意味を持つ類義語を使った方がしっくりと来る場合もあります。

以下では「ご心労」の言い換えに使える類語をご紹介します。

「心痛(しんつう)」はお悔やみの場で使う

「心痛」とは、文字の通り「心を痛める」という意味です。

心配ごとによって心が痛くなる様子を表しています。この「心痛」は自分に対しては使わず、自分以外の人に向けてのみ使います。また、使えるシーンも限られており、主にはお悔やみの場で使われます。

  • 「この度はご愁傷様でございます、さぞご心痛でいらっしゃるでしょう」

心配ごとよりももっと大きな不幸などについての心の痛みに使われます。そのため、ビジネスシーンや日常の会話では使いません

「気苦労(きぐろう)」は日常的な心配

「ご心労」と似た言葉で、比較的気軽な会話に使えるのが「気苦労」です。

  • 「気苦労が絶えません」
  • 「気苦労ばかりしています」

「気苦労」は近況報告のひとつとして使われることも多い言葉です。「気苦労」は深刻な心配ごとではなくても使えますし、やや謙遜の意味や軽い自虐として使うこともできます。

ただし、この「気苦労」は相手の心配ごとには使いません。相手の心配ごとが軽いものだとわかっている場合でも「それはご心労ですね」または「お互い苦労が絶えませんね」など自分と同じ位置、または相手を自分よりも高い位置に置いた言葉を選ぶようにしましょう。

「ストレス」は心労を具体的にした類語

「ご心労」は、気持ちの上での疲れのことです。実際に体を動かして得た疲れではない部分が、理解や表現に迷う原因かもしれません。

しかし、心労の多くは何かしらの「ストレス」によって発生します。そのため、多くの怒りや悲しみ、心配などはストレスと言い換えることができます。

  • 田中さんは新人教育が上手くいかず、ストレスが溜まっているようだ
  • 私は家庭のことで悩んでいたためか、ストレスで眠れなくなってしまった
  • 社長のストレスは相当なもののようで、最近では食事もあまり入らないらしい

例文のように、ストレスという言葉に言い換えると日常での会話でも使いやすくなります。

ただし「ストレス」という言葉が日常的となっている分、大きな悲しみや困窮に対する心労をストレスと表現してしまうと、人によっては自分の心労が軽視されていると感じる場合もあるかもしれません。