「痛み入ります」の使い方間違ってませんか?正しい意味と使い方・例文

痛み入りますの意味と使い方

痛み入る」は、心の痛みを感じるという意味の動詞「痛む」の連用形にそのような感情が深いことを意味する補助動詞「入る」(いる)が接続した動詞です。他人からの好意、親切、厚遇などに対して感謝の気持ちを表します。

ただし、率直な感謝の言葉である「ありがとう」とは異なり、自分にはもったいない、過分であるという謙遜の気持ちが含まれ、それゆえ申し訳ないという恐縮する意味合いもあります。

「恐れ入る」や「恐縮」とよく似ていますが、相手への失礼や迷惑で身が縮むというお詫びの意味では使わず、あくまでも感謝の言葉として用います。

注意
この言葉を実際に使うときは、立場が上の人に対して「痛み入ります」という敬語として使うことがほとんどです。礼儀正しいかしこまった印象を与えます。
しかし、多少古風な響きがありますので、改まった場や手紙などに向いている言葉です。なお、対等以下の人に対しては、だ・である調で「痛み入る」と言ったり書いたりすることもできますが、そうすると滑稽な言葉遣いになります。

痛み入りますの例文

昨日は急に思い立っての参詣でしたが、ご住職にはご本尊様の拝観を快くお許しいただき、ご親切痛み入ります。改めて御礼申し上げます。
パーティでは伊藤先生にご丁寧に紹介していただき痛み入ります。お蔭で、先生から親しくお話を伺うことができました。
このたびの講演会では商工会の皆様に熱心に聴講して頂き、また過分なるおもてなしに与りまして誠に痛み入ります
この度のことでは皆様に少なからずご迷惑をお掛けしたことと存じますが、寛大なるご理解を賜りました上に温かい励ましのお言葉まで頂戴し、誠に痛み入ります
本日は、私には過ぎたお褒めの言葉をいただき痛み入ります。先生の門下として恥ずかしくない研究成果をあげられるよう日々精進いたしますので、今後ともご指導のほどお願い申し上げます。
本日はお叱りを受けるものとばかり思っておりましたが、意外にも過分なるご評価をいただき、励ましのお言葉まで頂戴いたしまして誠に痛み入ります

「痛み入ります」の言い換え

お礼や感謝の意味で「痛み入ります」を使う場合は、他の言葉に置き換えることもできます。

相手との関係性や距離感、自身の年齢などによっては「痛み入ります」という言葉が正しく機能しない可能性もあります。特に年齢は「痛み入ります」という言葉自体が古風ということもあり、比較的若い方が使うと「仰々しい」「自分の言葉ではない」と感じられることもあるでしょう。

「お心遣いに感謝いたします」

相手から褒められたり、気遣われたときには「お心遣いに感謝いたします」と伝えると良いでしょう。相手が自分のことを思って言ってくれた言葉や、してくれた行いに対して感謝の気持ちを伝えることができます。

さらには「あなたが私のことを思って言ってくれた(してくれた)ということは、きちんとわかっています」という、心情に対しての理解を示すこともできます。

相手に親切にした人が、相手に理解をして欲しいのは「なぜ自分があなたのためにこう言った(した)のか」という部分です。そこをきちんと受け止めているという意思表示をすることで、相手にはお礼以上の気持ちを伝えることができます。

「恐縮でございます」

「恐縮」という言葉だけでは「痛み入ります」の言い換えとしては不十分ですが、言葉を付け加えることで似た働きをさせることができます。

たとえば、相手から褒められた場合は「お褒めにあずかり恐縮でございます」などとして気持ちを伝えることができます。

「そのようなことまでしていただいて、誠に恐縮でございます」など、いずれも何に恐縮しているのかを伝えているところがポイントです。「恐縮」だけでは伝えきれない部分を言葉を付け加えることで形にすることができます。

「痛み入ります」と言われたときの返し方

自身が言ったことやしたことに対して、相手が「痛み入ります」という言葉をかけてくれたときにはどのように返すのが良いでしょうか。

せっかく相手が「痛み入ります」という格式の高い言葉を選んでくれたのですから、こちらもそれに見合うような言葉で返したいと考える方は多いでしょう。「いえいえ」「いいんです」などでは、相手の気持ちを受け止めきれたとは言いにくいかもしれません。

「とんでもないことです」

「痛み入ります」という言葉には「とんでもないことです」または「とんでもないことでございます」が無難でしょう。

「とんでもないことです」という言葉には「当たり前のことです、お礼には及びません」というニュアンスが含まれています。大変スマートでありながら、相手がくれた感謝の気持ちをしっかりと受け止めることができる言葉と言えるでしょう。

注意
ちなみに「とんでもない」「とんでもありません」は正しい言葉ではありません。「とんでもないことです」が咄嗟に口から出にくいのでれば「こちらこそ、恐れ入ります」など、温度を合わせた言葉が出るように意識しておきましょう。