間違いやすい「おいでになる」の意味と使い方・例文

おいでになる

「おいでになる」の意味

目上の人のいくつかの行動について「おいでになる」という言葉を使うことがあります。いずれの場面においても、相手を敬う言葉で、やわらかい印象を持たれやすい言葉です。自分自身や自分の身内、自分と同等の立場の人や目下の人へは使うことはありません。

仲の良い友人や家族などに「おいで」ということがありますが、その場合の「おいで」には「来なさい」という意味しかなく、行動が一つに絞られています。「おいでになる」の「おいで」は「来なさい」という意味ではありませんので、間違って認識しないようにしましょう。

「おいでになる」という言葉には大きく分けて三通りの使い方があります。
  • 「来る」という意味の「おいでになる」
  • 「行く」という意味の「おいでになる」
  • 「居る」という意味の「おいでになる」

ここからはそれぞれの「おいでになる」の意味や使い方について解説します。

「来る」という意味の「おいでになる」

一つ目は「来る」という言葉の尊敬語である「おいでになる」です。

目上の人が来る場合に「来られる」という表現を使うこともありますが、「来られる」というと「来ることができる」という意味にも取ることができますし、「られる」という表現はビジネスの場などには相応しくありません。

「来る」という意味の敬語には「おいでになる」の他に「お越しになる」「お見えになる」「いらっしゃる」など、さまざまな表現があります。どれを使っても特に問題はありませんが、「おいでになる」とだけ言うと「おいでになる」が持つ他の意味と間違えてしまう人も出てくるので、注意が必要です。

「来る」という意味で「おいでになる」を正しく使うには、「誰が」「どこから」「どこへ」「いつ」などの情報を欠かさないことです。

本日○○様が弊社会議室へおいでになる」と言えば、「おいでになる」が「来る」の意味で使われていることが明確になります。
また「本日」「これから」「○時に」など時間の情報も「来る」を表すためには必要な情報ですので、極力言葉を省略しないようにしましょう。

「行く」という意味の「おいでになる」

二つ目は「行く」という言葉の尊敬語である「おいでになる」です。

「来られる」と同じで「行かれる」ということもできますが、「逝かれる」「怒れる」など同音異義の言葉もありますので、やはり別の表現を使った方が安全でしょう。
「行く」という言葉の尊敬語には、「おいでになる」の他にも「いらっしゃる」という言葉もあります。「行く」という意味で使うのであれば「おいでになる」「いらっしゃる」のどちらを使っても問題はありませんが、「いらっしゃる」という言葉にも「おいでになる」と同じように「行く」「来る」「居る」と三つの意味があるので、言葉の前後を丁寧にしなければ意味が通りません。

「行く」という意味の「おいでになる」であれば「誰が」「どこへ」「どこから」「いつ」などの付属する情報が必要です。

「○○様がおいでになります」だけでは、もう向かっているという意味なのか、どこかへ出かけると行っているのかがハッキリしないからです。
「○○部長が、××株式会社様へおいでになります」などとすれば「行く」の意味で使われているということを明確にできます。

「居る」という意味の「おいでになる」

三つ目は「居る」の尊敬語である「おいでになる」です。

目上の人が「居る」ということを「そこに居ます」とは言えません。「○○様はそちらにおいでになります」などとして、○○様への敬意を表さなくてはなりません。

「居る」という言葉は、他にも「いらっしゃる」と表現することができますが。「いらっしゃる」という言葉も複数の意味を持っていますので、相手によっては意味を取り違えてしまうこともあるでしょう。

たとえば「○○様は会議室においでです」「○○様は会議室においでになっています」など「おいでに」の後の言葉を丁寧に選ぶことで誤解を回避することができるでしょう。
特に、すでに相手が居る状態なのであれば「○○様はすでに会議室においでです」「○○様はすでに会議室にご到着されています」など、「既に」や「ご到着」という言葉を意識的に使って「もう来られている」ということを明確にしましょう。

「おいでになる」という言葉を間違いなく使うことも大切ですが、言葉は相手へ伝えるためのものです。上手く伝わらず、うっかり勘違いをした他の人が、○○様には聞かせたくない話を近くでしてしまった、などのアクシデントがあってからでは遅いのです。

「おいでになる」は自分には使わない

当然のことですが、「おいでになる」は敬語ですので自分や自分の身内への行動には使いません。

しかし、社会に出て間もない人や敬語が苦手という人は、相手から「おいでになりますか?」などと問いかけられた時に、何と答えたら良いかわからないものです。
「行く」という意味なら「伺います」「参ります」、「居る」という意味なら「居ります(おります)」など、謙譲語を使って答えましょう。自分の行動について伝える時に「来る」という表現はほとんどなく、相手から見て「来る」はあなたから見れば「行く」ですので、やはり「伺います」などが良いでしょう。先方へ向かう途中で「もうすぐおいでになりますか?」などと聞かれた場合は「向かっております」などを使って「今来ているところ」という状態を伝えることができます。