「ご自愛ください」 の正しい意味と使い方と例文

「ご自愛ください」 の正しい意味

「ご自愛ください」は、文章の締めの言葉として非常に頻繁に使われています。手紙や年賀状などの最後に書かれている、「ご自愛ください」という表現が気になるという人は多いようです。

まずは、以下で「ご自愛ください」の正しい意味について解説します。

ご自愛くださいとは「体を大事にしてください」

「ご自愛ください(ごじあいください)」とは、「(あなたの)体を大事にしてください」という意味のフレーズです。体を大事にする、ということは「健康に気をつけて、元気でいてください」と解釈することができます。

この「ご自愛ください」を、手紙の締めとして使うのは、相手へのいたわりです。相手に、いつでも、いつまでも元気でいてほしい、という気持ちを持っていることを、「ご自愛ください」の言葉に込めています。
「ご自愛」の「ご」は丁寧語です。「自愛」とは、文字通り「自分を愛する」という意味を持っています。この場合の自分を愛する、とは「自分自身である、自分の体(健康)を大切にする」ということです。
この「ご自愛」の後に、「ください」をつけて、相手の健康を祈っている様子を伝えるのが「ご自愛ください」です。

ご自愛の例文

寒さきびしき折、くれぐれもご自愛ください。
暑さ厳しき折柄、何卒ご自愛のほどお願い申し上げます。
皆様のご健勝とご自愛をお祈り申し上げます。
何はともあれ、貴君の元気な顔を見ることができて良かったです。末筆ながら、お仕事の成功とご自愛を祈ります
※「貴君」は、友人のような同等程度の男子に対する敬称です。
ご商売繁盛にてお忙しいことが何よりとは言え、お体のことが心配です。末筆ではございますが、ご自愛のほどお祈りいたします
あなたは一途な性格ですから、ひとりで頑張り過ぎてしまうではと心配です。任せられることは人に任せて、くれぐれも御自愛なさいませ
※ これは目下の相手に対する大人の女性の手紙文です。
余談ですが、毎朝のランニングで 5kgの減量に成功しました。目標の 10kgまで頑張ります。酷暑の折、柳浦様も御自愛下さい
季節柄、通勤電車の中で咳をしている人が増えていますが、遊佐様にはお変わりございませんか。寒冷のみぎり、ご自愛のほどを
※「ご自愛のほど」に続く「お願い致します」などの動詞句を省略した形です。江戸時代に普及した長々と皆まで言わない書かないことが粋とする手紙文の名残りです。
この度の入院では皆様にご心配をお掛けしました。吉岡様におかれましても、歳末御多忙の折柄、御自愛専一に
先生におかれましてはご自愛ご専一に。
※「専一」(せんいつ)は、最優先にするという意味です。
弊社一同、貴殿の一日も早い御快癒を祈念致しております。何卒、御身御自愛下さい
※「御身」は「おんみ」と読み、相手の体のことを意味する尊敬語です。古くは相手に対する尊称でもあり、「あなた様」の意味でも使われていました。

ご自愛の類語の例文

任地が決まり次第、改めて御挨拶に参上致します。時節柄、御身御大事に
※「御身御大事」の読みは、「おんみおだいじ」です。古語の「御身御大事に為さりませ」や「御身御大事にし給へ」などの動詞句を省略して言い切る手紙文の慣用語であり、会話ではさらに省略して単に「お大事に」と言います。
先日、お母上にお会いしましたが、あなたのご健康を気に掛けていらっしゃいました。くれぐれもお体をお大事に
アスリートの安達様にこのようなことを申しては釈迦に説法ですが、インフルエンザがまた流行とのこと。よくよく御身大切に
世間のケンコー、ケンコーと連呼する輩には辟易ですが、我々も年には勝てませんので、貴君も御身御大切に
※「御身御大切に」は、「御身御大事に」の場合と同様、以下に続く動詞句などを省略して言い切る手紙文の慣用語であり、読みは「おんみおたいせつに」です。御が漢語に付く場合には「ご」と音読みすることが基本的なルールですが、「御大切」を「ごたいせつ」と読むと、かつてのキリシタン用語で愛を意味することになりますのでご注意。
末筆ながら、ご挨拶が遅れましたことをお詫び致します。また、時節柄くれぐれもお体をおいとい下さい
※「厭う」(いとう)は、大事にする、気を付ける、かばうという意味です。難しい漢字ですので、仮名書きが一般的です。

「ご自愛ください」の使い方

「ご自愛ください」は、相手の健康を祈るフレーズで、一見いつ誰にでも使えそうに見えます。しかし、「ご自愛ください」は使える場合と、そうでない場合があるのです。

また、間違った言葉として使ってしまうことも多いので、以下にて詳しく解説します。

「ご自愛ください」は目上(上司・義父母等)に使える

相手が男女どちらでも関係なく使うことができますし、丁寧語なので相手が目上であっても問題なく使えます

むしろ、目上の方へのお手紙などの締めで「元気でいてください」などの言葉を使ってしまうと、少し幼い印象を与えてしまうことがあります。

目上の人で、その方が現在お元気にしているのであれば「ご自愛ください」が一般的です。

手紙やメールの場合は、主に最後の締めくくりの言葉として使うことが多いでしょう。

「ご自愛ください」の間違った使い方

間違いやすい使い方としてよくあるのが「お体ご自愛ください」というものです。

「ご自愛ください」の意味を、より正確に伝えようとすると、ついお体ご自愛ください、と書きたくなるかもしれません。しかし、それは誤りです。

ご自愛という言葉自体に「お体」も含まれていますから、この言い方だと同じ意味の言葉が重複していることになります。「ご自愛ください」のみで使うのが正しい使い方です。

「ご自愛ください」を使ってはいけない場面

相手が、すでに体調を崩していたり何らかの病気の治療中である相手には使いません。

「ご自愛」には、今現在(元気な状態)を大事にしてください、というニュアンスがあります。そのため、現時点でお元気ではない方へ「ご自愛ください」は使えません。

相手が現時点で病気やケガをしている場合は、早期の回復を願う言葉をかけるようにするといいでしょう

「ご自愛」の言い換えに使える類語

「ご自愛ください」は、一般的で非常に使いやすい言葉です。しかし、何度もやり取りをしていると、決まり文句のような印象が強くなってしまいます。

以下では、「ご自愛ください」の言い換えに使える類語について解説します。

「何卒ご自愛専一になさってください」

これは「ご自愛」を具体的に伝える言い方の一つで「ごじあいせんいつ」と読みます。

「専一」とは「何をおいても、そのことを最優先に」という意味ですので、「ご自愛されることを最優先にしてください」と伝えているのです。

ご高齢の方や、病気はしていないけど身体が比較的弱い方などに「本当に気を付けてほしい」という気持ちを伝えることができます。

「おいといください」

これも「身体をいたわってください」という意味の言葉で、「厭(いと)う」こと、つまり「厭(いや)なことを避けるために気を付けてください」という気持ちを表します。

古風な言い方ですので、相手が年配の方であったり、言葉に長けている方へ伝えると喜ばれます。

「御身お大切になさってください」

「ご自愛ください」と意味は同じですが、「身」という文字が入っていることで「ご自愛」よりも具体的な印象を持ってもらうことができます。

また「お大切に」という言葉の音とリズムがやわらかく、優しく親切な印象を持ってもらいやすいでしょう。

体調を崩している方への「ご自愛」の言い換え

「現状元気ではない人」への「ご自愛」は使わない、というのはご紹介しました。では、体調を崩されている方への手紙やメールでの結び文は何が相応しいのでしょうか。

「何か回復をしなければならない体調」を持っている方へは「一日も早い回復を願っております」という一文で結ぶと良いでしょう。

「早く元気になってほしい」「早く回復してくださいね」という気持ちを込めることができますし「今もあなたの体調を案じています」
という気持ちも伝えることができます。

「ご自愛」よりもライトに結びたい場合の言い換え

手紙やメールの相手によっては「ご自愛」という言葉が決まり文句であったとしても固く感じて躊躇する場合があります。そんな時は季節と絡めた気遣いの一文で結んでみましょう。

  • 「暑い日が続いておりますので、体調にはお気をつけください」
  • 「寒くなって参りましたのでお、お風邪など召されませんようお気をつけください」

などとすれば、相手も「そうだな、そんな季節だな」と季節を感じることもできますし、体調についての気遣いもすんなりと受け取ることができます。