間違いやすい「措置」の意味と使い方・例文と類語

「措置」の意味

「措置(そち)とは、事務上必要な手続きを含めた、事態への対処の仕方のことです。簡単に言うと「物事への対処」です。

・彼には相応の措置を執ります

・調査にはそれなりの措置が必要です

措置を検討してから、改めてご連絡します

「措置」の使い方

「措置」は決まった言葉と一緒に使うことが多く、定型化されているフレーズが多くあります。

「暫定措置」

「暫定措置(ざんていそち)」とは、暫定的(仮の一時的な取り決め)な対処という意味です。物事を進めるために、その途中経過となる事柄について一時的な対処をすることを指します。

「暫定措置」は「暫定的な措置」とも言います。他には「暫定の措置」と助詞で接続して使うこともあります。

「暫定措置」は「一時的な取り決め」という意味なので、同時に「これからどう変わるかはわからない」という隠れたニュアンスも持っています。

・その件については暫定措置をとりましたので、いったんご放念いただいて結構です

・国の暫定措置は国民の賛同を得ているようだ

・まだ決定ができないのであれば、せめて暫定的な措置でも先方に伝えるべきだろう

「異例の措置」

「異例の措置(いれいのそち)」とは異例(前例のないこと・珍しいこと)の対処という意味です。これまで前例を踏襲して来た事柄が、これまでに例のない対処をすることを指します。

「異例の措置」は「極めて異例な措置(異例の中でも特に珍しい措置)」「この措置は極めて異例」など、一つのセンテンスの中で分けて使われることもあります。

「異例の措置」は「その場所や特定の団体などの中」では前例がない対処、という意味です。そのため他の場所や団体が既に行っている措置についても「異例の措置」は使えます。

・今回の不祥事について、A社は該当社員を刑事告訴するという異例の措置をとった

・感染症が蔓延し、社員を全員リモートワークにするという異例の措置をとることになった

・B社との取引中止は、これまで取引先を切ったことがない自社にとって極めて異例と言える措置

「万全の措置」

「万全の措置(ばんぜんのそち)」とは万全(少しの手落ちもないこと)の対処という意味です。すべての準備が整っている状態で、物事に対処することを指します。

「万全の措置」は「措置は万全」と前後を入れ替えて使うこともあります。または「準備万端の措置」など、他の言葉を使って同じ意味を表すこともあります。

・今日の式典は来賓も多いので、万全の措置で臨んでください

・先方にご迷惑をおかけしないよう、万全の措置をとってください

措置が万全だったおかげで、被害を最小限に抑えられました

「万全の措置」は、ビジネスシーンでも頻繁に使われます。特に大きな契約や施策など、決して失敗が許されない緊迫した場面で「万全の措置」が求められるためです。

「法的措置」

「法的措置(ほうてきそち)」とは、法律に則った対処という意味です。相手の対応に対して、自分の感情や都合ではなく法律に沿った、平等な対応をすることを「法的措置」と言います。

・これ以上支払いが遅れるのであれば、法的措置を執ります

・A社はこれまで模倣品ばかりを販売してきたが、遂に消費者から法的措置を執られたらしい

法的措置を前提とした対応を心がけます

「法的措置」が使われるのは、主に金銭や権利などで争いが生じている場面です。

本人同士の話し合いでは決着がつかず、どちらの言い分を通すのかを法律に決めてもらおう、という考えで「法的措置」が用いられます。

「措置をとる」「措置を講じる」

「措置をとる」とは、対処をするという意味です。「措置」は「とる」という動詞と一緒に使われることが多い言葉です。この場合の「とる」は、執行するという意味の「執る」です。「取る」ではないことを覚えておきましょう。

措置をとるのは今でなくても良いのではないでしょうか

・今、措置をとっておくことが成功への鍵だろう

・彼は措置をとるのがとても上手く、そして速い

「措置を講じる」は、対処をする・対策を立てるという意味です。「講じる」とは「手段をとる」というニュアンスがあり、「措置」と一緒に使うことで「措置」について考え、思うように行動することを意味します。

・今やらなければならないことは、最善の措置を講じることだろう

・できる限りの措置を講じたが、結果として足らない部分が多くあった

措置を講じると一口に言っても、具体的なことはまだ何も決まっていない

「措置」は名詞なので、動詞と一緒に使わなければ「措置」をどうするのかが伝わりません。「とる」「講じる」などを使って、「措置」をどうしたいのかという部分まで言葉にしましょう。

「措置」の言い換えに使える類語

「措置」には複数の類語があります。状況によっては「措置」よりも適した言葉がある場合もありますので、類語も覚えておくと良いでしょう。

「処置」

「処置」とは、物事を取り計らって対処することです。ある物事や事象に対して、何らかの結果を想定して行動をすることをいいます。「措置」は公的・法的な行動について使われることが多い言葉ですが、「処置」は日常やビジネスシーンでも頻繁に使われます。

・ケガの処置をするために救急病院に向かった

・彼は今回の不祥事で、厳しい処置を受けたようだ

処置さえきちんとしていれば、大事になることもないだろう

「処置」には始末というニュアンスも含まれています。そのため物事を結論付けて終わらせるという意味もあります。

「対処」

「対処」とは、物事に応じて適切に対応することです。「対処」は日常でもビジネスシーンでも非常に頻繁に使われます。何かの物事や事象に対して、必要な処置をとることが「対処」です。

・この件については、慎重な対処が求められています

・報道で見る限り、A社の対処はあながち間違いではなかったようだ

・素早い対処が、信用の第一歩と言えるだろう

「対処」は、物事や状況に応じて動く「対応」と似ていますが、「対応」よりも事務的なイメージが強くなります。

「対応」は相手の要望に応えることですが、「対処」は状況に応じた処理をすることです。

「処分」

「処分」とは、不要なものを片付けることです。物理的に物を捨てるだけでなく、人事の降格や法律的な権利の行使なども「処分」です。

・引っ越しに備えて、不要な物は早々に処分しなければならない

・彼女の処分が決まった、下請け会社の課長になるようだ

・彼はついに行政処分を受けることになってしまった

「措置」が事態への対処の仕方であるのに対し、「処分」は対処の結果として下される決定の一つとも言えます。ある物事に「捨てる」という結論を付けて片付ける、ある人に対して「ネガティブな人事」を決定するなども「処分」です。

法的な権利の行使を指す「処分」も、ポジティブな意味で使われることはほぼなく、やはりネガティブな権利の行使について「処分」を使います。

「善処」

「善処(ぜんしょ)」とは、上手く処理をするという意味です。フランクな言葉に変えると「何とかします」「上手くやります」などでしょう。「善処」の「善」は善悪の善です。そのため「悪いようにはしない」というニュアンスも含まれています。

・A社との件は、私の方で善処します

・この件は君に任せるので、何らかの善処をしてくれ

・彼の言う善処とは、契約を切ることだったのか

「善処」と言う段階では、どのように対応するか具体的には決まっていないこも多いかもしれません。

ある事象や状況について、責任を持つ人が上手く片付ける、上手く対応することが「善処」です。

「快刀乱麻を断つ」

「快刀乱麻を断つ(かいとうらんまをたつ)」とは、古いことわざの一つです。切れ味の良い刀で、もつれた麻の糸を切るように複雑な事柄を鮮やかに解決する様子を表します。

・一時はどうなることかと思ったが、課長の発言で一気に進んだ、まさしく快刀乱麻を断つだったな

・まるで快刀乱麻を断つような、画期的な改善案が出た

・もうどうすれば良いのか…何か快刀乱麻を断つような名案が浮かばないものか

「快刀」とは切れ味の良い刀のこと、「乱麻」とはもつれた麻の紐のことです。

つまり、もつれてほどけない麻の紐を切れ味の良い刀で切ってほどいてしまうような解決を「快刀乱麻を断つ」と言います。