間違いやすい「ありき」の意味と使い方・例文

ありきの意味とは

「ありき」という言葉には、主に2つの意味があります。ひとつは「ありき」の本来の意味、もうひとつは「ありき」という言葉から派生した、日常でも使える意味です。

本来の「ありき」の意味は「あった」

「ありき」の本来の意味は「(物や人などが)あった(いた)」または「ある(いる)」です。「あり」(有り・在りの連用形)に過去・回想の助動詞「き」が接続したものと考えることができます。

「そこに人ありき」とすれば「そこに人がいる(いた)」という意味になり、「ここに書籍ありき」とすれば「ここに本がある(あった)」という意味です。

この場合の「ありき」は古い表現であるため、現代の日常会話ではほとんど使われることはありません。現代で使われるとすれば、硬く改まった文章内ですが、それであっても使われることは稀でしょう。

日常で使われる「ありき」は「前提・仮定」

「ありき」は物事の「前提」あるいは「仮定」という意味でも使われます。「ありき」がもともと持っている「あった・ある」という意味から派生した使い方で、「それがあったとして」「こうだったとして」などの、前提や仮定の意味として機能します。

「結論ありきの話をしたい」とすれば「結論があるという前提で話したい」という意味になり、「顧客ありきで考えてほしい」とすれば「顧客がいるという仮定で考えてほしい」という意味です。

この場合の「ありき」は、ビジネスシーンなどで日常的に使われています。本来の意味で使われる「ありき」と違い、古い言い回しというイメージもありません。むしろ「もしも」「~だったとして」などの言葉よりも、ややフォーマルなニュアンスを含む場合もあるため、目上の人と話すときにも使えます。

「ありき」の使い方

「ありき」は使いなれていない人にとっては、やや使いにくい言葉かもしれません。しかし使い方がわかれば情緒的に、またはロジカルな会話とするための定型句として使うことができます。

「あった」という意味での「ありき」は文学的に使う

まずは「ありき」の本来の意味である「あった・ある」を表す使い方です。この場合の「ありき」は文学的・情緒的に使います。

通常の会話で「教室にあった本」と言うところを、「ありき」を使って文学的に表すと「教室にありき書籍」「教室に書籍ありき」などと変化します。

主には小説の中などで使われる用法ですが、現代では小説や文章の中でもほぼ見ることはありません。

「前提・仮定」の意味での「ありき」は日常的に使う

次に「~を前提として・~と仮定して」という意味での「ありき」の使い方です。この場合の「ありき」はビジネスシーンなどの日常でも使われます。

たとえば、通常の会話では「お客様を優先することを前提として考える」というところを、「ありき」を使って「お客様ありきで考える」とすることもできます。つまり「ありき」という言葉を使うだけで、おおよその話の筋を表すことができます。

同様に、通常の会話では「失敗することを仮定して話さないで欲しい」というところを、「失敗ありきで話さないで欲しい」とすることもできます。

「結論ありき」はすでに結論が出ていることを表す

ビジネスシーンでは、「結論ありき」という表現が多く使われています。この「結論ありき」とは、すでに結論が出ていることを表す言い方です。

「結論ありきの会議は時間の無駄だ」といえば、「既に結論が出ているのに、その上で会議をするなんて時間の無駄だ」ということです。

以下では、「ありき」を使った言葉の中でも特に多く使われる「結論ありき」を使った例文をご紹介します。

「結論ありき」を使った例文

今回の方針決定に関しては、当初より結論ありきだったのでしょう。
結論ありきの会議など、まったく時間の無駄です。
彼らは結論ありきで調査に臨んでいますから、この調査結果は信用できません。
初めから結論ありきの研究姿勢に批判が集中しました。
最初から結論ありきという会社側の説明に、参加者は激しく反発した。

「ありき」を使うときの注意点

「ありき」という言葉は、現代では「前提・仮定」という意味、もしくは「ありき」の本来の意味である「ある・あった」という意味で使われると先で解説しました。その上で、「ありき」を使うときの注意点があります。

それは「未来のことについて”ありき”を使うことはできない」というものです。「前提・仮定」「ある・あった」は、一見別の意味のようにも見えますが、時制が現在と過去でしかないという点は共通しています。

そのため「あるだろう」「あると思う」という、未来の時制で「ありき」を使うことはできません。

「今月末の目標達成ありきで予定を立てる」など、「ありき」を未来の不確かなことについて使うこと自体が間違いです。