間違いやすい「屈託」の意味と使い方・類語と例文・英語

「屈託」の意味と使い方

まずは「屈託」の意味と使い方について解説します。

「屈託」とは気にしてくよくよする様子

「屈託」とは、物事を気に留めてくよくよとする様子を表します。「屈託」の読み方は「くったく」です。

彼は前回のミスのことがあるので、終始屈託していた

私の屈託を見抜いた上司は、重要なアドバイスをしてくれた

何かが気になり、そのことを気にして落ち着かずくよくよする様子を「屈託」と言います。

しかし、日常生活やビジネスシーンでは「屈託」という言い方ではあまり使いません。

気に留めてくよくよする様子は「くよくよしている」「気にしている」など、他の表現が使われることがほとんどです。

「屈託のない笑顔」は晴れ晴れとした笑顔

「屈託」を使った言葉で、もっとも多く使われるのは「屈託のない」「屈託なく」などです。

彼女は屈託のない笑顔で喜んだ

その子供は屈託なく笑いかけてきた

彼の振るまいはいつも屈託がなく気持ちがいい

「屈託」を打ち消す意味の「ない・なく」と一緒に使うことで、明るく晴れ晴れとした様子を表します。特に「屈託のない笑顔」は、天真爛漫でくよくよしない様子を表す際の定型句です。

笑顔の他にも、その人自身の振るまいや性格に嫌味がない様子を「屈託がない」を使って表すことも多くあります。

「屈託がない・屈託ない」は褒め言葉

一般的に「~がない・~がなく」などの打ち消しの言葉は、あまり良い意味では使われないことが多いかもしれません。しかし「屈託がない」については逆で、「屈託がない・屈託ない」は褒め言葉として使われます。

あなたの良いところは、いつも屈託がなく、誰に対しても明るく接するところです

彼女の良いところと言えば、何と言っても屈託のないあの笑顔だろう

その人がくよくよしておらず、相手に明るい態度で接する様子を「屈託がない・屈託ない」を使って表せます。

自分が持っている心配ごとや悩みを表に出さず、相手に気持ち良く接する姿勢は喜ばれることが多いため、褒め言葉として頻繁に使われています。

「屈託」の言い換えに使える類語と例文

次に「屈託」の言い換えに使える類語について解説します。

「鬱々」は心がふさぐ様子

「鬱々(うつうつ)」とは、心がふさぎ気持ちが沈んでいる様子を指します。

「鬱」とは、気持ちが晴れずに塞ぎ込むことです。「鬱々」は、その鬱が「々」によって重ねられ、気分が晴れずふさぐ様子が強調されています。

最近の課長は鬱々としている、きっと例の件が気になっているのだろう

昨日は仕事のことや家のことが気になって、一日中鬱々としていたよ

しかし「鬱」だけで「今日は鬱としている」などとは使いません。「鬱々」という言葉になって初めて、気持ちが晴れない様子を相手に伝えられます。

「屈託」との違いは、言葉のニュアンスです。「屈託」は、どちらかと言えば表情や態度にくよくよする様子が見られますが、「鬱々」は本人の心の中がふさいでいる様子です。

「屈託」「鬱々」のどちらも、本人の気持ちが晴れないことに変わりはありませんが、態度に出す・出さないにかかわらず、気持ちの奥に秘めた晴れない気持ちが「鬱々」、愚痴を言ったり悩んでいることを表面上に出しながらくよくよするのが「屈折」と言えるでしょう。

「忌憚」は遠慮して控える様子

「忌憚(きたん)」とは、発言を遠慮することです。

「忌(いみ)」には、「嫌って避ける」という意味があります。「憚(はばかる)」とは「遠慮する」という意味です。この2つの言葉で構成された「忌憚」は「発言を避けたり、遠慮したりする様子」を表します。

今日はぜひ、皆様忌憚のないご意見をお願いいたします

あの日彼が何も言わなかったのは、彼の忌憚でしかなく、本音では言いたいことがあったはずだ

「忌憚」が日常会話やビジネスシーンで使われる場合のほとんどは「忌憚のない・忌憚ない」という形でしょう。会議や意見交換会などの挨拶で頻繁に用いられます。

「忌憚のない・忌憚ない」は、どちらも「ない」という打ち消しの言葉を用いて、「忌憚」の状態を否定しています。つまり「発言を遠慮しないで欲しい」という意味で「忌憚のない・忌憚ない」が使われているのです。

一方「発言を遠慮する」という意味で「忌憚」を使うこともできます。ただし、その場合はやや文学的な表現になることも知っておいた方が良いでしょう。

「屈託のない意見」は「忌憚ないご意見」の誤り

先に解説した「忌憚のないご意見」を、「屈託のない意見・屈託のないご意見」とするのは間違いです。

「屈託のない」は「くよくよしない」であるため、「屈託のない意見」としてしまうと「くよくよしない意見」となり意味が通りません。「忌憚のない意見(遠慮のない意見)」とするのが正しい表現です。

もしも、くよくよせずに意見を出して欲しいと言いたいのであれば「屈託ばかりしていないで、意見を出しなさい」となるのでしょうが、日常会話・ビジネスシーンのいずれでもほぼ使われません。

「屈託」の英語表現

日本語で「くよくよする様子」を表す「屈託」は、英語でも表現できます。

「屈託」は英語でworry・care

「屈託」を英語で表現する場合は「worry」または「care」を使います。「worry」とは心配ごと、「care」とは気にかかること、です。何か心配ごとや気にかかることがあって、くよくよとするイメージを「屈託」に当てはめて使います。

He is worried about his daughter.(彼は娘のことで屈託している)

She is carefree.(彼女は屈託がない)

「屈託がない」は「carefree」「free from worry」などで表します。

freeとは、何かが「ない・解放する」という意味を持つため、「carefree」は「気がかりなことがない」、「free from worry」は「心配ごとから解放された」というニュアンスです。

いずれも日本語の「屈託がない」として使えます。