「首が回らない」の意味と使い方!手が回らないとの違いも解説

「首が回らない」の意味と由来

「首が回らない」という慣用句を耳にしたことがある人は多いでしょう。しかし「首が回らない」の意味を知らない人にとっては、それがどんな様子を表しているのか見当がつかないかもしれません。

以下では「首が回らない」の意味と語源について解説します。

「首が回らない」はお金がないという意味

「首が回らない」とは、その人が経済的に困窮している様子を表す慣用句です。

一時的にお金がないのではなく、比較的長い期間、お金に困っていることを表す場面で使います。

彼は借金がかさんで、もう首が回らないらしい

父は事業に失敗して首が回らなくなり大変な思いをしたことがあると言っていました

毎月の支払が収入を超えているなんて、首が回っていないじゃないか

「首が回らない」は、単に収入が少ないという意味ではあまり使われません。借金が多く、支払いに追われているためにお金がないという状態が「首が回らない」です。

「首が回らない」の由来は諸説ある

「首が回らない」という言葉の語源や由来については諸説あります。

  • お金がないストレスが続くことで首の筋肉が緊張し、実際に首が回りにくくなる
  • 借金取りと鉢合わせをしないように顔を伏せて歩くから、首が回せない

この他にもいくつか説はありますが、由来と言われているのは主にこの2つのようです。

「首が回らない」の使い方と例文

「首が回らない」は、主に2つの場面で使われます。以下では、それぞれの使い方と例文をご紹介します。

「個人的にお金に余裕がない」という意味での使い方

1つ目は「個人的な金銭事情」についてです。その人個人がお金に困っている様子を表します。

彼女は実家の負債を抱えていて、首が回らなくなっていると聞いた

あの頃の僕は、いわゆる首が回らない状態だったと思います

首が回らない、というけれど何か別の手段を考えてみてはどうだろうか

「首が回らない」は、その人にお金がない理由が「借金」である場合によく使われます。しかし、借金が「首が回らない」を使う条件というわけではありません。

働いていて、身の丈に合った生活をしていれば首が回らなくなるようなことはないだろう、という想像の元に「首が回らない=借金があるのだろう」という意味で使われることが多いようです。

「資金繰りが上手くいかない」という意味での使い方

2つ目は、企業や商店などの経営状態が悪く、資金繰りが上手くいっていない様子を表す場合です。

A社は不景気の煽りを受けながらも頑張っていましたが、とうとう首が回らなくなったそうです

うちみたいな小さな店は、年中首が回っていない

次の決算で、うちの会社の首が回らなくなるのは目に見えている

この意味での「首が回らない」は、主に企業や事業について使います。

個人が借金を抱えている場合に使う「首が回らない」と意味は同じですが、企業などの団体になると借金があるのは前提となることが多いためです。

「首が回らない」の誤用に注意

「首が回らない」は金銭的に困窮する状況にしか使いません。そのため「仕事が忙しくて首が回らない」などは誤りです。

「首が回らない」という言葉で、金銭的事情以外のその人の苦しさや辛さを表すことはできないため、誤用のないようにしましょう。

似た言葉の使い方にも注意

「首が回らない」の誤用に関連して、似た言葉の使い方にも注意しましょう。

  • 「手が回らない」:人手が足りず、忙しくてやるべきことができないという意味
  • 「頭が回らない」:寝起きや体調不良によって頭が朦朧としているという意味

手が回らない・頭が回らない、は「首が回らない」に比べると実際の体の動きに近い言葉です。それぞれに上記のような意味があり、日常でも頻繁に使われています。

「首が回らない」だけは比喩表現であり、金銭事情を表すもの、という部分を抑えておくと良いでしょう。

「首が回らない」の類語

以下では「首が回らない」の言い換えに使える類義語について解説します。

「金欠」は一時的にお金がない様子

お金がない、という様子を表す言葉の中で頻繁に使われるのが「金欠(きんけつ)」です。

今月は買い物をしすぎて、早くも金欠

忙しさに追われて外食ばかりしていたら、すっかり金欠になってしまった

金欠というほどではないけれど、今月は余裕はないな

「金欠」は主に、何らかの理由によって一時的にお金がないことを表す場面で使います。「首が回らない」というほどの経済的困窮ではないことがほとんどです。

「自転車操業」は資金難を繰り返す様子

「自転車操業(じてんしゃそうぎょう)」とは、借金と支出を繰り返しながら事業や会社の運営をしていくことです。

余裕があるなんてとんでもない、うちの会社は自転車操業そのものですよ

今はまだ自転車操業ですが、3年後には安定させられるよう計画しています

「自転車操業」は、まるで自転車をこぎ続けるように、休みなく事業を回していくイメージです。こぐことを止めるとすぐに倒れてしまうことから、働き続けるという意味で使われています。

「火の車」は金銭的な窮地に立っている様子

「火の車」は、主に家計が困窮している様子に使う言葉です。

夫がリストラされてしまい、うちは火の車と化しました

子供にお金がかかるので、常に火の車ではありますが、何とかやっています

「火の車」とは、仏教用語の「火車(かしゃ)」が元になった言葉です。

火車とは地獄行の乗り物のことで、悪行を働いた者が乗せられると言われています。この火車に乗っているかのような経済面での苦しさを表すのが「火の車」です。