濡れ衣を着せるの意味と類語・使い方と例文

「濡れ衣を着せる」の意味と語源・由来

まずは、「濡れ衣を着せる」の意味について解説します。

「濡れ衣を着せる」とは無実の罪

「濡れ衣を着せる(ぬれぎぬをきせる)」とは、無実の人に罪を着せるという意味です。

彼は何もしていないのに、私は彼が会社の金を横領したと濡れ衣を着せた

部長は、課長に背任行為の濡れ衣を着せた

本人の身に覚えがない罪を「濡れ衣」と言い、その罪をその人がしたことだする様子を「濡れ衣を着せる」と言います。

「濡れ衣を着せる」の語源・由来

「濡れ衣を着せる」の語源・由来には諸説あります。その中でも、もっとも有力とされる説は、継母による義娘への仕打ちです。

奈良時代、現在の福岡県のある地方に住んでいた家族がいましたが、娘の母親は死んでしまいます。父親と娘だけとなったため、父親は再婚をしました。

しかし、再婚した継母は義娘が美しいことに嫉妬します。継母は義娘が寝ている間に、濡れた漁師の釣り衣を着せて、義娘がそれを盗んだことにしました。父親は娘の行いに腹を立てて、娘を斬り殺します。

実際は継母による策略でしたが、この話から無実の罪を着せることを「濡れ衣を着せる」と言うようになった、と言われています。

「濡れ衣を着せる」の使い方と例文

次に、「濡れ衣を着せる」の使い方を例文と一緒に解説します。

濡れ衣は「着せる」「着せた」「着せられた」と使う

「濡れ衣」は「着せる」「着せた」もしくは「着せられた」と使います。

彼女は彼に濡れ衣を着せることにした

私は彼女に濡れ衣を着せた

私は部長に濡れ衣を着せられただけです

「濡れ衣を着せる」と「濡れ衣を着せられた」の違いは、時制です。現在・過去・未来に適した形を使います。

「濡れ衣」とは濡れた着衣のことです。そのため、「濡れ衣」は「着せる」以外の言葉とは組み合わせません。

「濡れ衣」だけでも使える

「濡れ衣を着せる」は、「濡れ衣」だけでも同じ意味として使えます

私はそんなことはしていません、濡れ衣です

彼は濡れ衣だと言っていますが、実際はどうなのですか

言葉としては「濡れ衣を着せる」が正しくはありますが、「濡れ衣」は「濡れ衣を着せる」以外に使われない言葉です。

そのため「濡れ衣」だけでも、覚えのない罪を着せられたと言っていると伝わります。

「濡れ衣を着せる」の言い換えに使える類語

次に、「濡れ衣を着せる」の類語について解説します。

「冤罪」は無実の罪

「冤罪(えんざい)」とは、実際にその人が犯してはいない、無実の罪のことです。「濡れ衣を着せる」は冤罪る、という意味なので、類語として使えます。

彼が冤罪であることは、社の誰もが信じている

結局は冤罪だったが、彼女の人生は大きく変ってしまった

「冤」には、ぬれぎぬという意味もあり、「罪」と組み合わせることで「無実の罪」という意味になります。「濡れ衣を着せる」との違いは、「冤罪」は着せるものではないという点です。

「冤罪」は「冤罪」という言葉だけで、その人が無実の罪に問われていることがわかります。

「詰め腹を切らされる」は責任を転嫁される

「濡れ衣を着せる」と似た意味を持つことわざに「詰め腹を切らされる(つめばらをきらされる)」があります。「詰め腹を切らされる」とは、本当は負わなくて良い責任を負わせられる様子です。

A社が契約を打ち切って来たのは、田中君のせいだ、と課長が部長へ報告したため、田中君は詰め腹を切らされて異動することになった

部下に詰め腹を切らせるようなことをして、課長は恥ずかしくないのだろうか

「詰め腹」は「切らされる」、「切らせる」のいずれかで使います。

「詰め腹」とは、昔の切腹のことで、「詰め腹を切らされる」は誰かから切腹するよう強制される様子を意味します。

「あらぬ疑い」は事実ではない疑い

「あらぬ疑い」も「濡れ衣を着せられる」の類語として使えます。

彼はあらぬ疑いをかけられて、結局地方にとばされてしまった

私はインフルエンザで欠勤していたが、本当はさぼったのではないかとあらぬ疑いをかけられた

「あらぬ疑い」とは、事実ではない、本人にとっては思いがけない疑いのことです。

「あらぬ」とは、あってはならない・まちがった、という意味で、その後に続く「疑い」が事実ではないことがわかります。

「濡れ衣を着せる」の英語表現

最後に、「濡れ衣を着せる」の英語表現について解説します。

「濡れ衣を着せる」は英語で「be falsely accused」

日本語の「濡れ衣を着せる」は、英語の「be falsely accused」を使って表現できます。

That is a false accusation.(それは濡れ衣です)

He was a false accusation for her.(彼は彼女に濡れ衣を着せた)

他にも「scapegoat(スケープゴート)」など、日本でも知られた単語を使って、濡れ衣を着せる様子を表すこともできます。

その場合は「They used me as a scapegoat.(私は濡れ衣を着せられた)」などと使います。