「齟齬」の意味と使い方!勘違いは誤用?

「齟齬」の意味と読み方

「齟齬」という言葉を見聞きしたことがある人は多いでしょう。しかし漢字の読み方が難しく、読み方がわかっても意味を推測するのは困難です。

まずは「齟齬」の意味について解説します。

「齟齬」の読み方は「そご」

「齟齬」は「そご」と読みます。

「齟齬」にはどちらも「歯」という漢字が使われていますが、この「齟齬」には上の歯と下の歯がかみ合わない、という意味があります。

「齟齬」の右半分だけを読もうと意識すると「そご」と正しく読みやすいかもしれません。

「齟齬」とは「くいちがい」のこと

「齟齬」には「くいちがう」という意味があります。この場合の「くいちがう」とは、双方の意見が食い違ったり、物事が上手くかみ合わない様子のことです。

私と彼の意見には齟齬があるようです、まずは2人でもう一度話をしてみます

先方とのトラブルの原因は、そもそもの認識に齟齬があったことでした

部長の解釈と課長の解釈には齟齬があるようで、それが社員の混乱につながっている

例文のように、意見や認識、物事の解釈などにくいちがいが生じることを「齟齬」という熟語で表します。

「齟齬」の使い方と例文

次に、「齟齬」の使い方について例文を交えて解説します

齟齬がある・齟齬が生じる

「齟齬」を使う場合の形として、もっとも多いのが「齟齬がある」または「齟齬が生じる(しょうじる)」です。「齟齬」は「くいちがい・いきちがい」と言い換えることができるので、「ある・生じる」を使います。

まずは、自分の認識に周囲との齟齬があることを自覚した方がいいと思うよ

先日の打ち合わせで、先方とは齟齬がないことを確認しています

こんな雑なやり取りでは、相手と齟齬が生じてもおかしくない

仕事は一人でやるものではないので、私は相手と齟齬が生じないように気をつけています

「齟齬」は「ある・生じる」で使えるので、「ない・生じない」でも使えます。

「齟齬」を遠回しの抗議に使う

「齟齬」はくいちがい・行き違いという意味です。この意味を利用して、相手へ遠回しの抗議をする場面でも使われることがあります。

大変恐れ入りますが、当方から差し上げた内容と、御社のご対応に齟齬があるように考えているのですがいかがでしょうか

部長のおっしゃることはわかりました、しかし大変失礼ながら部長のご理解には社員の認識と齟齬があるのかもしれません

この場合の「齟齬」も基本的な使い方は変わりません。この「齟齬」が遠回しな抗議として機能するかどうかは、状況と齟齬の内容や背景によります。

これは考え方を変えると、「齟齬」を使う状況・内容・その背景によってはこちらにそのつもりがなくても、相手にとっては「抗議をされている」と受け取られる可能性がある、ということです。

相手を責める気持ちがない場合は、誤解を招かないよう注意をするか、「齟齬」以外の言葉を使った方が無難でしょう。

【誤用】自分だけの勘違いは齟齬ではない

「齟齬」の誤用として多いのが「自分の単なる勘違い」を「齟齬」と表すことです。「齟齬」は「くいちがい・行き違い」を意味するため、相手がいなければ「齟齬」は発生しません

× 今日の遅刻は私が電車の時間を齟齬していたためです

〇 今日の遅刻は私が電車の時間を勘違いしていたためです

例文のように、自分の中だけしている思い違いや勘違いに「齟齬」を使うと誤用となりますので、注意をしておきましょう。

「齟齬」の類義語と対義語

次に、「齟齬」の言い換えに使える類語と、反対の意味を持つ対義語について解説します。

類語は「相違・乖離」

「齟齬」の類義語には「相違(そうい)」「乖離(かいり)」などがあります。

「相違」とは「互いに異なること・違い」という意味です。日常でも比較的使いやすい言葉で、「齟齬」と同じように「ある・ない」で使います。

「乖離」とは「そのものとの結びつきが一切なくなること」という意味です。主にはビジネスシーンなどで使われる言葉で、「する・しない」で使います。

「齟齬」の「くいちがい」という意味よりさらにその先の「お互いの意見や考えがかけ離れる」という意味で使われることが多い言葉です。

私と先方の意見に相違があることはわかっています、しかし私は自分の意見を変えるつもりはありません

私と先方の意見に齟齬があることはわかっています、しかし私は自分の意見を変えるつもりはありません

確かに現状では私と先方の意見は乖離しています、しかし根本的な部分の希望は双方で合致しているはずなのです

些細な齟齬から始まった二人の意見は、いつの間にか乖離することになってしまった

「相違」はくいちがいの状態、「乖離」は最初から、または次第に、意見や考え方などがかけ離れた状態について使う、と覚えておくと良いでしょう。

反対語は「一致・通じる」

「齟齬」と反対の意味を持つ対義語は「一致」「通じる」です。

「一致」とは「本来別々のものが比較対象する点のすべてにわたって矛盾がないこと」という意味です。「意見が一致する、考えが一致する」などの形で、日常でもよく使われています。

「齟齬」が持つ「くいちがい」という意味とは反対の意味なので、反対語として使えます。

「通じる」とは「一方から他方に何かが伝わってつながる状態」という意味です。「話が通じる、気が通じる」などの形で使われます。

やはり「齟齬」が持つ「くいちがい」という意味とは反対の意味で、反対語として使えます。

私と先方は意見が一致しているため、今後の進行についてもお任せいただいています

弊社と御社では、この件についての考えが通じている、という認識でよろしいでしょうか

「一致」は、二つ以上のものがきちんとかみ合う様子、「通じる」は、2方向がお互いに支障なくつながっている、と考えると使いやすいかもしれません。