間違いやすい「机上の空論」意味と使い方・類語と例文・英語

机上の空論の意味と語源

まずは、「机上の空論」の意味と語源について解説します。

机上の空論とは「想像だけの役に立たない考え」

「机上の空論(きじょうのくうろん)」とは、実際に行動には移さず想像しただけで、役に立たない考え方や思考のことです。

彼の話は机上の空論ばかりで、どれも現実となった試しがない

机上の空論ばかりでは何時間話しても仕方がない、まずはやれることからやってみよう

「机上の空論」の「机上」とは、文字通り「机の上」を指します。「机の上」とは、実際に行動には移さず、ただ話しているだけという状態の比喩です。「空論」とは「現実味のない想像だけの話(=役に立たない考え)」のことを表します。

「机上」はたとえなので、実際に話している場所が机の上であるとは限りません。その話の内容に現実味がなく、ただの想像や理想の範囲でしか役に立たない思考を「机上の空論」と言います。

机上の空論の語源は「無駄な議論」

「机上の空論」の語源は、中身が空っぽの無駄な議論と言われています。

本来の議論とは、現実を鑑みた行動を前提に行われるものですが、その議論に現実味がなく行動も前提とされていない「無駄な議論」を「机上の空論」という言葉で表したことが始まりです。

現実味の無さを「机上」、中身のない無駄な議論を「空論」として、「机上の空論」という言葉ができました。

机上の空論の仕事での使い方と例文

次に、「机上の空論」の使い方を例文と一緒に解説します。

行動に移さず想像だけで行われる議論を表す

「机上の空論」を使うシーンで、もっとも多いのが「行動には移さない想像だけの議論」が行われたときです。

課長の案はいつも机上の空論ばかりで、あれはもはや妄想と言っても良いだろう

君の目標はすばらしいかもしれないが、何の努力もしようとしないのでは机上の空論となってしまうよ

大きな目標や、壮大な計画ばかりを話して、実際には何の行動にも移そうとしない場面で「机上の空論」が使えます。

 

ポイントは「何の行動にも移さない」という部分です。実際に行動に移せば、それは「机上の空論」ではなくなります。

たらればばかりの話を表す

「たらればの話」ばかりをするシーンでも「机上の空論」が使われます。

そんな仮定ばかりのたらればを話していても、ただの机上の空論だよ

あなたの話はいつもたらればだね、仮定ばかりの机上の空論をするのは時間の無駄だ

「たられば」とは、仮定の話のことです。「こうなったら、こうすれば」と表現を使って「もしも」の話を繰り返す様子を「たられば」と言います。「もしかしたら~」という話を重ねても、何の策もないままでは意味がなく、机上の空論となります。

「机上の空論」には、無駄な議論という意味もあるため、この「たられば」の意味合いも含まれるのです。

卓上の空論・砂上の空論は誤り

「机上の空論」を「卓上の空論(たくじょうのくうろん)」「砂上の空論(さじょうのくうろん)」とするのは誤りです。どちらも存在しない言葉ですので注意しましょう。

「卓上の空論」については、「机上」を「卓上」と言い換えているだけで何となく意味は通じるかもしれませんが、正しい表現ではありません。

「砂上の空論」については、恐らく「砂上の楼閣(さじょうのろうかく)」と混同されたものだと思われます。「砂上の楼閣」とは、「まるで砂の上に建った建物のように、足元が固まっていない不安定な様子」のことです。

「砂上の楼閣」は「基礎がなっておらず現実できそうにないこと」の例えで使われることがあります。「机上の空論」も実行に移さない時点で「現実できそうにないこと」です。この点が共通しているので、誤って使われやすいのかもしれません。

「机上論」は机上の空論を略した言葉

「机上の空論」はたまに「机上論(きじょうろん)」と略されることがあります。これは誤りではありません。

彼の言っていることは机上論に過ぎない、なんの現実味もないのだから

あの頃の私は、今考えてみると机上論ばかりを繰り返していました、だから何も変わらなかったのだと思います

「机上の空論」「机上論」のどちらを使っても意味は同じです。単に言葉を略しているだけなので、同じ意味として考えて問題ありません

「机上の空論」の類語と対義語(反対語)

次に、「机上の空論」の類語と対義語について解説します。

類語は「取らぬ狸の皮算用」「絵に描いた餅」

「机上の空論」の言い換えに使える類語には、「取らぬ狸の皮算用(とらぬたぬきのかわざんよう)」「絵に描いた餅」などがあります。

あなたは「100個売れたら売上が10倍になる」と言うけれど、何の確証もないのなら、それは取らぬ狸の皮算用に過ぎないよ

理想ばかりを掲げても、それを実現する手がないのなら絵に描いた餅でしかない

「取らぬ狸の皮算用」とは、不確実な期待をすることです。不確実な期待は「机上の空論」によって生み出される「無駄な議論」と同じ意味であり、類語として使えます。

「絵に描いた餅」とは、役に立たない事です。絵に描かれた餅を見ても、食べられるわけではなく意味がないという意味のことわざです。

「取らぬ狸の皮算用」も「絵に描いた餅」も、「役に立たない」という意味で「机上の空論」の類語として使うことができます。

対義語は「案ずるより産むが易し」

「机上の空論」の対義語(反対語)としては、「案ずるより産むが易し(あんずるよりうむがやすし)」があります。

いろいろと心配なことはあるだろうけど、案ずるより産むが易しというじゃないか、まずはみんなでやってみよう

部長がおっしゃる通り、案ずるより産むが易し、先方に何とかご理解いただくことができました

「案ずるより産むが易し」とは、「実行するまではさまざまな不安や心配があっても、実行してみれば案外簡単にできた」という様子のことです。

考えている時点では確証がない、という部分は「机上の空論」と同じですが、「案ずるより産むが易し」は実行に対して積極的で、「何とかなるだろう」という楽観的な視点が主となります。

「机上の空論」の英語表現

最後に、「机上の空論」の英語表現について解説します。

「机上の空論」は英語で「It looks good on paper」

日本語の「机上の空論」を、英語で表現する場合は「It looks good on paper」「pie in the sky」などを使います。

It looks good on paper.(それは机上の空論だ)

What you said is like pie in the sky.(君の言っていることは机上の空論だ)

「It looks good on paper」とは、直訳すると「紙の上では良い感じだ」となります。日本語の「机上」が英語では「紙の上(紙に書いた内容)」と変化しているのです。「It looks good on paper」は「good」の部分を「great」など他の単語に変えることもできます。

「pie in the sky」とは、「机上の空論」よりもどちらかと言えば「絵に描いた餅」に近い表現です。スラングのひとつで、比較的気軽な会話に用いられます。