「よしもない」意味と類語・「知る由もない」の例文

読み方

知るすべ

「よしもない」の意味と漢字

まずは「よしもない」の意味と漢字について解説します。

「よしもない」とは「手段がない」

「よしもない」とは、手段や方法がない、という意味です。

あの時、僕は彼にそのことを伝えるよしもなかった、彼はすでに飛行機の中だったからだ

前回、このトラブルをどうやって乗り越えたのか、前任者に聞きたくても退職をしてしまっていて、聞くよしもない

「よしもない」の「よし」は、方法や手段のことです。後に続く「もない」の「も」には、「~すら」を意味しています。「すこし”も”ない」「連絡”も”ない」などの「も」です。「ない」は「無い」です。

つまり「よしもない」は「方法や手段すらもない、到底無理だ」というニュアンスを含んでいます。

「よしもない」の漢字・語源は「由もない」

「よしもない」には漢字があります。「よしもない」を漢字で書くと「由もない」です。

「由」を使った言葉に「由無い(よしない)」があります。「由無い」にはいくつかの意味がありますが、その中の一つが「なすべき方法がない・仕方がない」です。

「由無い」のこの意味に、強調の「も」が加わって「由もない」という言葉になったと言われています。

「よしもない」の使い方と例文

次に「よしもない」の使い方を解説します。

「よしもない」は対策が立てられないことに使う

「よしもない」は「手段や方法がない」という意味です。

そのため、その事柄をどうにかしたくても、対策すら立てられない場面で使います。工夫をすればどうにか対策が立てられる、という場合には「よしもない」よりも「難しい・困難」など別の言葉を使った方が自然です。

「よしもない」は、どんなに手を尽くしたとしてもできないことについて使います。

例えば、すでに時が過ぎてしまった過去の瞬間について知ることや、特定の人しか知らないことをその人に聞きたくても、すでにその人がいない、などです。

「知る由もない」とは知るための方法がないこと

「よしもない」を使った言葉で、頻繁に見聞きするのが「知る由もない(しるよしもない)」です。「知る由もない」とは、真相を知りたくても、知るための方法や手段がない、という意味です。

① 私が退社した後に、会社でそんな事件が起きていたなんて、私には知る由もなかった

② いつも元気そうだった彼が、実はそんな悩みを抱えていたなんて、誰も知る由もない

「知る由もない」は、状況的に知りたくても知ることができなかっただろう、と考えられることに使います(例文①)。

「知る由もない」には、単に知る方法がないという意味以外にも、「知ろうとすることすらできないほど、全く知らない、想像もしていなかった」という意味でも使えます(例文②)。

「よしもない」の言い換えに使える類義語

次に「よしもない」の類語について解説します。

「知る術もない」の「術もない」

「術(すべ)もない」とは、手段がないという意味です。「よしもない」と同じように、方法や手段がないことを意味します。「術もない」は、「知る術もない」というフレーズで使われることが多い言葉です。

当時の私は入社したばかりで、仕事を覚えることに精一杯でした、その私がそんな重要機密を知る術もありません

この世界の情勢に、私たち一企業は為す術もありません

「術もない」は、「為す術もない」というフレーズでも使われます。「為す」とは「する・やる」という行動を指す言葉です。そのため、「為す術もない」とは、手も足も出ない、どうすれば良いかすらわからない、という意味です。

「栓無い」はなすべき手法がない

「栓無い(せんない)」とは、なすべき手段がない・仕方がない、という意味です。

最近体調が思わしくなくて、疲れがたまっているようです、しかしなかなか休めず…詮無いことです

うちは田舎なので生活には車が欠かせません、ガソリン代もバカになりませんが、こればかりは詮無いことですね

「栓無い」は、栓の無い・栓なし、など他の言い方でも同じ意味として使われます。「よしもない」に比べると、「栓無い」を使うのは、手段や方法がなくて困っている本人であることが多いでしょう。

相手の話を聞いて「栓無いですね」など、相槌に使うことはできますが、ビジネスシーンでは聞き手が「栓無い」を使うことはあまりないでしょう。

「よしもない」を使った慣用句

「知る由もない」の他にも、「よしもない」を使った慣用句がいくつかあります。どれも「〇〇する手段がない」という意味で使われるので、一緒に覚えておきましょう。

直すよしもない

「直すよしもない」とは、それを直す(改善する、正す)手段がない、という意味です。漢字では「直す由もない」と書きます。

彼は自分の行動について全く疑問を抱いておらず、現状では彼の行動を直すよしもない

20年遣い続けた来た洗濯機は、これまでも故障と修理を繰り返してきたが、部品の製造が終わっており、いよいよ直すよしがなくなった

直したいけど直せない、そもそも直らない、という場合に「直すよしもない」が使えます。

また、この「直すよしもない」には、諦めのニュアンスが含まれていることが多く、「これ以上のことはできない」という気持ちで使われやすい言葉です。

比べるよしもない

「比べるよしもない」とは、何かと何かを比べたくてもその手段がない、という意味です。

A商品とB商品のスペックを比較したくても、そもそもそれぞれが別の用途を目的としている以上、比べるよしもない

姉と妹だからといって、何でも比べられるわけではない、増してやそれぞれに良いところがあるのだから、比べるよしもないのだ

「比べるよしもない」は、現実的に比較が困難な場合に使われます。例文のように比べられる対象でない場合や、比べること自体が困難である場合です。

「比べる由もない」には、比べても意味がないというニュアンスが含まれやすいことも知っておくと良いでしょう。

たどり着くよしもない

「たどり着くよしもない」とは、目的地までたどり着ける手段がない、という意味です。

こんな深夜に、渋谷から横浜までだなんて、歩く以外にたどり着くよしもない

ただの会社員だった私が、まさか世界で活躍する俳優になりたいだなんて、当時はそんな遠すぎる目標までたどり着くよしもありませんでした

「たどり着くよしもない」は、単に移動手段がないというだけでなく、目指すものや地位が遠すぎて、どうすれば良いか思いつかない、という意味でも使えます。

いずれにしても「途方に暮れるニュアンス」が強い言葉です。

「よしもない」の英語表現

最後に「よしもない」の英語表現について解説します。

「よしもない」は英語で「little did I know」

「よしもない」を英語で表す場合は、「little did I know」を使います。

Little did she knows she was about to come across the stranger.(見知らぬ人に遭遇するなんて彼女は知る由もなかった)

Little did he knows he forgot to set the alarm.(彼が目覚ましをセットし忘れたことを知る由もなかった)

「little did I know」は、日本語の「よしもない」という意味でも使えますが、同時に「思いも寄らない」という意味でも使えます。