「乱筆乱文」の意味と手紙での使い方・類語と例文

「乱筆乱文」の意味

「乱筆乱文」は、「乱筆」と「乱文」の二つの言葉からできています。以下では、それぞれの言葉の意味と、「乱筆乱文」の意味について解説します。

乱筆とは「上手くはない文字」

「乱筆」とは、上手とは言えない文字のことです。筆(ペン先など)が乱れる(美しくない)、と書いて「乱筆」です。

しかし、日常で字が上手くないことを「乱筆」と表現することはあまりありません。以下では「乱筆」と同じ意味の言葉を使った例文をご紹介します。

僕は字に自信がなくて、読みにくいと思いますが…

私の字はまずい、とよく家族から笑われます

「字に自信がない」「字がまずい」これらは、乱筆と同じ意味を持つフレーズです。自分の文字について謙遜する場面で使われます。

乱文とは「まとまりのない文章」

「乱文」とは、まとまりがない文章、上手くない文章のことです。「文が乱れる(まとまっていない)」と書いて「乱文」です。

この「乱文」も、乱筆と同様に日常ではあまり使いません。以下では「乱文」と同じ意味の言葉を使った例文をご紹介します。

私は子供の頃から文才がなくて…

読みにくい文章で申し訳ありません

「文才がない」「読みにくい文章」など、具体的に文章が拙いことについて言葉にすることが多いでしょう。

この場合の「文才」とは、本当に文才があるかどうかではないですし、「読みにくい文章」も本当に相手が読みにくいと感じるかどうかはわかりません。やはり、自分が書いた文章に対する謙遜やへりくだりの意味でのフレーズとして使います。

乱筆乱文とは「読みにくい文章と文字」の謙譲表現

「乱筆乱文」の読み方は「らんぴつらんぶん」です。「らんびつ」ではない点に注意しましょう。

この「乱筆乱文」とは、「上手くはない文字で、読みにくい文章」という意味の、謙譲表現です。読んでくれる相手に向けた、気遣いの言葉とも言えます。

乱筆乱文でお恥ずかしいのですが、よろしければお目通しください

我ながら乱筆乱文だとは思うのですが、気持ちを込めて書きました

「乱筆乱文」は、相手に対して自分がへりくだる謙譲表現です。そのため、本当に字が下手で読みにくい文章であるかどうか、という点は問題ではありません。

自分が手書きをした手紙の中や、手紙を渡すときに相手へ向ける決まり文句のようなものと覚えておくと良いでしょう。

「乱筆乱文」の使い方と例文

次に、「乱筆乱文」の使い方を例文と一緒に解説します。

手紙の冒頭で「乱筆乱文にて失礼いたします」

手紙の冒頭では、挨拶文の一部として「乱筆乱文にて失礼いたします」などと書くことがあります。

「~にて失礼いたします」の部分は、他の言葉を使うこともありますが、いずれにしても「これから読む手紙は読みにくいと思いますが」という気遣いを伝えるフレーズです。

拝啓 乱筆乱文にて失礼いたします。大変ご無沙汰をいたしておりますが、〇〇様におかれましては変わらずお元気にされていることと存じます~

前略 乱筆乱文ご容赦ください。この度はお誘いをいただき、誠にありがとうございました。喜んでうかがわせていただきます~

手紙の冒頭と言えば「拝啓」などの頭語がありますが、「乱筆乱文」は頭語の後に書きます。「乱筆乱文」というフレーズを使った場合でも、頭語・結語の位置や使い方に変わりはありません。

文末で「乱筆乱文で申し訳ありません」

手紙の最後に、読みにくい手紙であったことを詫びる意味で「乱筆乱文で申し訳ありません」等と書くこともできます。

それではまたお会いできる日を楽しみにしております。乱筆乱文で申し訳ございません。敬具

簡単ではございますが、取り急ぎお知らせまでとさせていただきます。乱筆乱文にて失礼いたしました。早々

文末で「乱筆乱文」を使う場合も、結語の概念に変わりはありません。

また、文末での「乱筆乱文」を使った文章は、手紙の冒頭で「乱筆乱文」の文章を使っていない場合のみです。「乱筆乱文」は、手紙の最初か最後か、どちらかでしか使いません。

パソコンで作成した手紙には「乱筆乱文」は使わない

ビジネスメールなど、パソコンで作成した手紙には「乱筆乱文」というフレーズは使いません。その理由は2つあります。

1つ目は「パソコンで作成しているため、少なくとも「乱筆」ではないから、です。2つ目は「ビジネスについての手紙(メール)」である以上、「乱筆乱文」であってはいけないから、です。

パソコンで作成した手紙の場合は、文章の読みやすさに気を配る必要があります。

もしも、文章の読みやすさについて自信がない場合は「ご不明な点がございましたら、お手数ですがご連絡ください」など、相手が困った場合の解決方法を提示しておくと良いでしょう。

「乱筆乱文」の類語

次に「乱筆乱文」の言い換えに使える類語について解説します。

「拙筆」は下手な文字

「拙筆(せっぴつ)」とは、拙い(つたない)文字のことです。「乱筆」と同じように、自分が書いた文字をへりくだって表現します。

拙筆でお恥ずかしいのですが、趣味の習字を展覧会に出すことになりました

拙筆ながら、一生懸命書かせていただきましたので、お時間のあるときに読んでいただけますと幸いです

「拙筆」は、「乱筆」と違って文章内でなくても使えます。会話の中で、自分の書いた上手くはない文字のことをへりくだりたい場面などで使ってみましょう。

「拙文・駄文」はくだらない文章

「拙文(せつぶん」とは、拙い文章のことです。「拙筆」の「拙」が使われていることからわかるように、自分が書いた文章をへりくだって表現しています。

拙文ではありますが、これまでの半生を小説にいたしました

拙文ながら、先日のお礼をお伝えしたくお手紙を書かせていただきました

「駄文(だぶん)」とは、くだらない文章のことです。「拙文」との違いは、自分が書いた文章だけでなく、自分以外の人が書いた文章を批判する意味でも使えるところです。

我ながら駄文ではございますが、気持ちを込めて書かせていただきました

この作家は、批評家から駄文が多いと言われている

「乱筆乱文」の英語表現

最後に「乱筆乱文」の英語表現について解説します。

「乱筆乱文」に該当する英語表現はない

英語で「乱筆乱文」を意味する表現はありません。これは文化の違いによるものです。日本では「自分が書いた文字や文章を謙遜することがマナー」という風習がありますが、英語圏ではそのような考え方がないためです。

多くの英語圏の国では、書いた内容が伝われば、それだけで良いと認識されます。その上で、「乱筆乱文」に近い内容を英語で表現したい場合は「乱筆」と「乱文」をそれぞれ文章にする必要があります。

I’m sorry I’m not good at handwriting.(上手く書けませんでしたが)

it’s hard to read.(読みにくいと思いますが)

「乱筆乱文」という言葉のニュアンスとは異なりますが、実際に自分の書いた文章や文字に自信がなく、そのことを本当に謝りたい場合には、例文のような表現を使うと良いでしょう。