手紙の書き方の基本と例文

手紙の書き方の基本と例文

明治時代になって新しい国語が確立するまで、日本語には句読点段落がなく、手紙は縦書きの筆文字で書かれていました。今でも葬儀のときの会葬御礼などは古い様式を守って印刷されていますが、私たちが普段書く手紙でも、その伝統が手紙文の常識的なマナーとして受け継がれています。

一方、現在ではアルファベットやアラビア数字で書く言葉が多用されているため、ビジネスレター以外の改まった文面の手紙でも横書きが一般化しています。横書きの場合も、手紙文の構成や文字の配置などは基本的に縦書きと同じです。

ここでは、丁寧で礼儀正しい言葉遣いで書く手紙について、その基本的な書き方を説明します。

手紙文の基本的な構成と書き方

手紙文は基本的に以下の順序で書きます。前文から末文までは一連の文章ですので、改行しても行間を空ける必要はありません。

① 前文

前文は、「拝啓」・「謹啓」などの頭語で始まり、次に時候の挨拶を書きます。

時候の挨拶の後半は、先方の健康や幸福を祝う文言がもっとも一般的ですが、こちらから久しぶりに送った手紙では「お元気でいらっしゃいますか」のような安否伺いの文言もよく用いられます。そのほかに、こちらの現況を知らせる簡単な文言を書き加えても結構です。

前文は慣例として以下のルールに従って書きます。

  1. 頭語の前には1字あけない
  2. 頭語と時候の挨拶の間に1文字分の空を入れるか、改行する
  3. 前文の途中で改行しない

② 本文

手紙の用件を書きます。改行したらかならず段落を付けます。前文の後から始まるため「さて」など、一言入れると本文が書きやすくなります。

基本的には、最初に「用件を要約した文章」を入れます。たとえばお願いがあって手紙を書いているのであれば「さて、本日は〇〇様にお願いしたいことがあり筆をとりました」などです。

要約した一文の後から用件の詳細に触れていくようにすると、読み手も内容を理解しやすくなります。

③ 末文

用件を締めくくる文言や、時候の挨拶、先方の健康・幸福などを祈る文言などを書き、最終行の行末に結語を書きます。途中で改行したらかならず段落を付けます。なお、結語は、改行して行末に書いても構いません

「当分は暑い日が続きますので、ご自愛ください」「師走の候、ご多用中のところ失礼いたしました」「ますますのご健勝をお祈りいたします」など、相手に伝えておきたいことを一文にして書くと良いでしょう。

④ 日付

行頭から2〜3文字分下げた位置に書きます。縦書きの場合は、年号と漢数字を使用してください。横書きの場合は、年号と西暦どちらを使用しても構いません。また、文字の大きさを本文よりも小さめにした方が、目立たずにすっきりと納まります。

基本的には「手紙を書いた日」ですが、状況によっては「投函予定日」を文末の日付としても構いません。

⑤ 署名

差出人の氏名を行末に書きます。姓と名の間に空きを入れる必要はありません。自分の名前は縦書きなら下の方、横書きなら右端に近いところに書きます。また、名前の文字は本文よりも少し小さめにしましょう。

ちなみに、本文中でも自分のことを表す「私」「私ども」「弊社」など、自分を表す言葉は少し小さめに書くことがマナーともされています。

極端に小さな文字にする必要はありませんが、あまり堂々と書かない姿勢を伝える意識をしましょう。反対に相手を表す「〇〇様」「貴社」などは丁寧な文字で堂々と書くようにします。

⑥ 宛名

先方の氏名を敬称(一般に「様」)付きで行頭に書きます。文字の大きさは本文よりも大きめにします。また、役職名など肩書きを付けるときは本文と同じ大きさか小さめの文字で行頭に記し、改行して大きめの文字で氏名を書きます。なお、姓と名の間に空きを入れる必要はありません。

文末の署名とは正反対で、縦書きであれば上に、横書きであれば左端に大きく書くようにしましょう。便箋の中でも、相手と自分の立場を場所や書き方で表します。

手紙の例文

※基本は縦書きです

拝啓

風薫る五月を迎え、皆様には益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。お蔭様で、私どもも大過なく元気に致しております。

さて、この度はご主人様のご栄転、誠におめでとうございます。そちらへ移られてより、ご主人様のご活躍は主人から折に触れて伺っておりました。三年で本社に復帰されるのは日頃のご精勤の賜物と、主人ともどもご同慶の至りでございます。

長らく奥様とお会いすることが叶わず、寂しい思いをしておりましたので、東京に戻られる日が待ち遠しくてなりません。また親しくお付き合いのほど、よろしくお願い申し上げます。お祝いの気持ちをこめて心ばかりの品をお贈りしましたので、どうぞお納めください。

末筆ながら、お引越しの準備でご多忙の折、くれぐれもご自愛のほどお祈り申し上げます。

敬具

   平成二十九年五月一日

松本幸子

本田暢子様