「身にしみる」の意味と漢字・染みると沁みるの違いと例文

「身にしみる」の意味と漢字

日常会話などで「〇〇が身にしみる」と表現することがあります。しかし、「身にしみる」の意味がわからないと、それがどういうことなのか想像ができませんし、自分で使うこともできません。

まずは「身にしみる」の意味と、その漢字について解説します。

「身にしみる」とは深く感じることを意味する慣用句

「身にしみる」とは、その対象となる事柄や感情・感覚を、深く強く感じることを表す慣用句です。「身にしみる」を使った例文と一緒に「身にしみる」の意味を理解しましょう。

① 仕事も恋人も失くして落ち込んでいる私には、友人の優しい言葉が身にしみた

② 私は彼の仕事を、誰にでもできる仕事だと思っていた しかし、実際にやってみて、それは彼だからこそできた仕事だと身にしみてわかった

①の例文では、「友人の優しい言葉」が身にしみたと言っています。言葉が物理的に「しみる」ということはなく、あくまでも比喩の一つとしての表現です。

友人からの優しい言葉が、まるで身体にしみこんでいくほど、強く受け止めたという意味で使われています。

②の例文は、「その仕事が彼にしかできないものである」ということを強く実感した、という意味で「身にしみた」が使われています。

実際に、その仕事をしてみて「これは彼だからできた仕事だったのだ」と自分の身をもって実感した、という意味です。

ちなみに、「身にしみる」は、「身にしみた・身にしみて」など文章によって語尾を変化させられます。状況や時制によって使い分けられるようにしましょう。

漢字では「身に沁みる・身に染みる」

「身にしみる」の「しみる」は、ひらがなで書いても良いですし、漢字で書くこともできます。「しみる」という言葉には、「沁みる・染みる・凍みる・浸みる・滲みる」など、いくつかの漢字が存在しますが、「身にしみる」は「身に沁みる」または「身に染みる」です。

「沁みる」は、身体への刺激を表す漢字です。

「身に沁みる」と書けば、相手の言葉や自分の置かれた状況ならではの感情などが、さも自分の身体への刺激のように強く感じる様子を表せます。

「染みる」は、色やシミがにじむようにして入り込んでいく様子を表す漢字です。例えば「インクがシャツに染みる」など、物理的に何かが別の物の中ににじんでいくイメージで使われます。

この「染みる」を「身に染みる」に使うことで、相手の言葉や自分の置かれた状況ならではの感情が、まるで何かが自分の中に染みこんでいくように感じる様子を表せます。

「身にしみる」の使い方と例文

次は、実際に「身にしみる」が使われる場面を元に、「身にしみる」の使い方をみてみましょう。「身にしみる」は比喩表現の一つです。定番の使い方を知っておくことで、自分の感情や体験に置き換えて使えるようになります。

強い寒さを表す「寒さが身にしみる」

まずは「寒さが身にしみる」です。寒さが身にしみるとは、実際に強い寒さを感じた場面で使います。

① マイナス20℃の世界は想像以上だった、寒さが身にしみた

② 寒空の下、謝罪のためにクライアントの戻りを外で待っていたときは、空腹だったこともあり、寒さが身にしみる思いだった

①の例文は、物理的な強い寒さを表しています。マイナス20℃という、実際の強い寒さがまるで自分の身体に染みこんでいくかのようだった、という意味です。

②の例文は、実際の寒さに加えて、謝罪をしなければならないという心理的プレッシャーと、空腹という辛さが重なったことで、寒さを強く感じた、という意味です。

どちらの「身にしみる」も「辛い・苦しい」という意味で使われていることは共通しています。

もちろん「暑さが身にしみる」「強い湿気が身にしみる」など、別の気候についても使えますが、②のように辛い感情とリンクさせて使うのは「寒さが身にしみる」が代表的です。

厚意への感謝を表す「ありがたみが身にしみる」

次に「ありがたみが身にしみる」です。これは、相手からの厚意や取り計らいがありがたく、そのことに強く感謝し、うれしく思っているという意味で使われます。

① 今になって思えば、自分たちの生活を切り詰めてまで僕を大学に通わせてくれた両親のありがたみが身にしみてわかるよ

② 彼女は昼夜を問わず、私のことを心配して駆けつけてくれた、彼女のありがたみが身にしみて何か恩返しをしなければと思っている

①②どちらも、相手への強い感謝を「身にしみる」を使って表しています。

実際には相手からのありがたさが、身体のどこかに入り込むということはないのに、それがさも入り込んでくるかのように強く実感する、という意味です。

人の親切に感謝する気持ちを表す「優しさが身にしみる」

次は「優しさが身にしみる」です。これも「ありがたみが身にしみる」と同様で、相手からの厚意に強く感謝するとともに、自分がどんな気持ちになったかまで伝えるニュアンスがあります。

① 大荷物を持って電車に乗ろうとしていた私を、通りがかったビジネスマンが手伝ってくれた、人の優しさが身にしみてとても暖かい気持ちになった

② 病気で講義を休んでいた僕のために、ノートをとってくれていたなんて、君の優しさが身にしみるよ、本当にありがとう

①②ともに、他人への強い感謝を「身にしみる」で表しています。

違いは②は感謝をする相手へ、直接「優しさが身にしみる」という言葉を向けていることです。相手へ直接「優しさが身にしみる」と伝えることで、謝意を表すこともできます。

「身にしみる」は敬語と一緒にも使える

最後は、「身にしみる」を敬語と一緒に使う方法です。「身にしみる」という言葉自体には敬語の意味合いは含まれませんし、慣用句であるため「ご・お」などを使って丁寧語にすることもできません。

しかし、敬語と一緒に「身にしみる」を使えば、目上の人へも向けることができます

① この度は、私のミスをカバーしていただき誠にありがとうございました、改めて部長の偉大さが身にしみてわかりました

② 御社の商品と一緒に弊社商品までご紹介いただけるとは、御社の懐の深さが身にしみました

③ 先方の田中様は、今回の件を大変喜んでおられ、「懐の深さが身にしみた」とまでおっしゃっています

①②③のどれも、敬語の中に「身にしみる」を使っています。①②は、身にしみた側が敬語と一緒に「身にしみる」を使っている例文です。

③は、相手に「身にしみる」と言われた側が、敬語を使ってそのことを話している例文です。「おっしゃった」という敬語で「身にしみる」を表していることで、相手の発言を丁寧に扱っていることがわかります。

「身にしみる」の類語

「身にしみる」には、いくつかの類義語があります。「身にしみる」は感情や事柄が自分の中に入り込んでくることを表す、便利な慣用句ですが、ほかの言葉を知っていれば状況や気持ちにより合った表現が可能です。

「ひしひしと」は切実に感じている様子

まず、「ひしひしと」は、何かを切実に感じている様子を表す言葉です。「ひしひし」は、感情や感覚を表すオノマトペの一つで、何かを強く、確かに感じていることが伝わります。

① 自分が体調を崩して、妻のありがたさをひしひしと感じた

② 彼の実力が、1年前に比べて大きく飛躍していることをひしひしと感じることになった

①は「妻のありがたみが身にしみた」と言い換えることができます。②も「大きく飛躍していることが身にしみてわかった」などと言い換えることができるでしょう。

「心底」は心の底から感じている様子

「心底(しんそこ)」とは、その感情を心の底から確かに感じている様子を表します。

① こんなひどい仕打ちを受けるなんて、彼の人間性を心底思い知った気分だよ

② 今回のプロジェクトの成功は、自分だけの力では到底起こりえなかったと心底わかりました

①は「心底」をネガティブな事柄について使っていますが、②はポジティブなことについて使っています。このように「心底」も、「身にしみる・ひしひし」と同じように、良いことにも悪いことにも使えます。

「身にしみる」の英語表現

最後に「身にしみる」の英語表現について解説します。

「身にしみる」は英語で「penetrating」

「身にしみる」は英語で「penetrating」を使います。

It’s penetrating chill.(身にしみる寒さ)

例文では、「寒さが身にしみる」という意味の「penetrating」を使いましたが、日本語の「人の気持ちが身にしみる」と表したい場合は「I come home to his heart.(彼の優しさが身にしみる)」などと表現します。