「狼狽」の意味と読み方・「狼狽える」との違いと例文

「狼狽」の意味と読み方

まずは「狼狽」の意味と読み方について解説します。

狼狽とは「うろたえて慌てること」

「狼狽」とは、慌てふためいて、うろたえることです。何かの事柄や出来事を理由に、ひどく動揺することを「狼狽」と言います。

彼は決まると思い込んでいた契約が急遽頓挫し、ひどく狼狽していた

私は、息子の急な発熱に狼狽していました

「狼狽」は、その人が平常心を保てず、明らかに慌てたりうろたえたりすることです。ひどく驚いたり、落胆をしたりと、何かしらのショックを受けたときの反応が「狼狽」と言えるでしょう。

「狼狽」の読み方は「ろうばい」・「狼狽える」の読み方は「うろたえる」

「狼狽」の読み方は「ろうばい」です。「狼」は動物の「オオカミ」という文字で「ろう」とも読みます。

この「狼狽」に「える」と送り仮名をつけて「狼狽える」と書くと、読み方は「うろたえる」へと変化します。「狼狽える」で「ろうばいえる」とは読みません。

「狼狽」は、「送り仮名の有無によって読み方が変わる言葉」と覚えておきましょう。

「狼狽」の語源は中国の伝説

「狼狽」は、中国の伝説に由来しています。

あらすじ
古い中国の伝説には「狼」と「狽」という、2匹の動物が出てきます。この2匹は片方は前足が短く後ろ足が長い、もう片方は前足が長く後ろ足が短い、という特徴を持っていました。
そこで、2匹はお互いの身体を利用して移動していましたが、驚いたり慌てたりすると2匹は離れてしまい、スムーズに移動できなくなったといいます。この2匹の様子から「狼狽」が生まれたそうです。

「狼狽」の使い方と例文

次に、「狼狽」の使い方を例文と一緒に解説します。

「狼狽」を使った四字熟語は「周章狼狽」

「狼狽」を使った四字熟語に「周章狼狽(しゅうしょうろうばい)」があります。「周章狼狽」とは、「狼狽」よりもさらにひどくあわてふためく様子のことです。

彼はとにかく怖がりで、夜のオフィスで電話が鳴っただけで周章狼狽の大騒ぎだ

入試会場に到着してから、受験票を自宅に忘れたことに気が付いた私は、人目もはばからず周章狼狽した

「周章狼狽」の「周章」とは、あわてふためいて騒ぐことです。この「周章」を同義の「狼狽」と併せることで、「狼狽」を超える慌て方を表しています。

「狼狽売り」は慌てて持ち株を売ること

「狼狽」を使った言葉に「狼狽売り(ろうばいうり)」があります。「狼狽売り」とは株式用語で、株価が急落した株を慌てて売ることです。

今朝のニュースでA社の不正が報じられた、今日はA社株の狼狽売りが多くなるだろう

私は所有していた株の値が急落したことに驚いて、すぐに売却をした、今になって考えてみれば狼狽売りをせず、もう少し様子を見ても良かったかもしれない

「狼狽売り」は、急落した株を慌てて売る様子を揶揄した表現でもあります。そのため、狼狽売りをした本人には「狼狽売り」という言葉はあまり使いません。あくまでも、狼狽して株を急ぎ売る様子そのものについての言葉であると認識しておきましょう。

「狼狽」の類語

次に「狼狽」の言い換えに使える類義語をご紹介します。

「動揺」は気持ちが大きく乱れること

「動揺」とは、気持ちが大きく動いて乱れることです。「狼狽」は動揺をしたことによって起こるため、「狼狽」の類語と考えて良いでしょう。

課長はセキュリティカードを紛失し、かなり動揺していた

私は動揺のあまり、エレベーターを違う階で降りてしまった

「狼狽」は、その人の言動に慌てている様子が見られて使われことが多いですが、「動揺」は言動に現れていなくても使われることが多い言葉です。つまり「動揺」は「狼狽」に比べると、表立っていない気持ちの乱れにも使われやすい言葉です。

「右往左往」はあちこちを行ったり来たりして慌てること

「右往左往(うおうさおう)」とは、体を右へ左へと、行ったり来たりさせるほど慌てる様子です。ひどく慌てる、という意味で「狼狽」の類語として使えます。

私はプレゼン当日になって、データの不備に気が付き、右往左往して何とか改修した

彼は慣れない外回りで、交通機関を効率良く使えず、右往左往しながら何とか顧客との約束に間に合った

「右往左往」は、実際にあわてふためいてあちこちへと走り回る場合にも使いますし、実際に体を動かしていなくても、何かとバタバタとしながら慌てる様子のどちらにも使えます。

「狼狽」の英語表現

最後に、「狼狽」の英語表現について解説します。

「狼狽」は英語で「panic」

「狼狽」を英語で表現する場合には「panic」を使います。「panic」は、日本でも「パニック」という言葉で知られている通り、慌てて取り乱す様子です。

She suddenly realized I had lost my wallet, and started to panic.(彼女は財布を無くして狼狽し始めた)

He really lost his composure when he wake up at 11:00.(彼は起きたら11時で狼狽した)

「狼狽」は「panic」以外にも「lost one’s composure」でも表せます。「composure」は「落ち着き」という意味の単語で「lost one’s」が付くと「落ち着きを失くす」という意味にできます。