「臥薪嘗胆」の意味と使い方・「堅忍不抜」との違いと例文

「臥薪嘗胆」の意味と読み方

まず、「臥薪嘗胆」の意味と読み方について解説します。

臥薪嘗胆とは「目的のために耐えること」

「臥薪嘗胆」とは、定めた目的のために辛いことや苦しいことに耐えることです。

田中君は、難関試験の合格を目指して、仕事と勉強ばかりの日々を臥薪嘗胆し、見事合格した

彼女は同期の中で一番最初に役職に就きたい、という一心で、辛い仕事も臥薪嘗胆の思いで乗り越えてきた

「臥薪嘗胆」は、目標に向けて力強く向かっていくイメージの言葉です。普通ならくじけてしまうような困難があっても、目標を目指してしっかりと進んでいく様子を表します。

臥薪嘗胆の読み方は「がしんしょうたん」

「臥薪嘗胆」は「がしんしょうたん」と読みます。難しい漢字ばかりが使われていますので、読み方を知らないままでは読めないかもしれません。

「臥薪嘗胆」は中国に由来する四字熟語なので、日本語読みとは違う漢字が使われています。

「臥薪嘗胆」の由来と語源

次に、「臥薪嘗胆」の由来について解説します。

「臥薪嘗胆」の由来は故事成語

「臥薪嘗胆」の語源は中国の故事成語、「春秋戦略」の中にあります。

あらすじ
春秋時代の王だった闔呂の息子・夫差は、父を討った勾践に復讐することを誓います。夫差は時間の経過とともに、自分の中の復讐心が消えてしまうことを恐れ、敢えて寝心地の悪い薪の上で寝起きすることにしました。毎晩薪の上で痛みを感じながら寝ることで、父を討った勾践への恨みを持続させたのです。それから三年後、夫差は勾践を降伏させることに成功しました。

これが「臥薪嘗胆」の語源となった物語のあらすじです。夫差がそうしたように、目的を達成するために、苦しい毎日に耐えることを「臥薪嘗胆」というようになったと言われています。

三国干渉発生時にロシアとの日露戦争のきっかけになった

「臥薪嘗胆」が日本で特に有名になったのは、明治時代の三国干渉発生後に起きたロシアとの日露戦争だと言われています。

当時の日本は、日清戦争で清に勝ち、遼東半島を割譲してもらうよう約束していました。しかし、そこにロシア・フランス・ドイツの三国が、清に遼東半島を返還するよう求めたといいます。

この三国の動きに反発した日本国民の間では「臥薪嘗胆」という言葉が流行し、その反発心が後の日露戦争のきっかけになったと言われています。

「臥薪嘗胆」の使い方と例文

次に「臥薪嘗胆」の使い方を例文と一緒に解説します。

「復讐のために苦難や困難に耐える」という意味での臥薪嘗胆

「臥薪嘗胆」には、復讐のために苦難や困難に耐える、という意味もあります。

父を裏切ったあの人に復讐するために、これまで私は臥薪嘗胆の日々を過ごしてきた

彼は、入社当時に手柄を横取りした先輩社員への臥薪嘗胆の思いを募らせ、ついに取締役に昇進した

自分が見返したり、仕返しをしたい、と強く思う相手のことを思って、苦しいことに耐えるのも「臥薪嘗胆」です。

面接で使える座右の銘では「成功を目指して苦難に耐える」の意味

「臥薪嘗胆」は、その言葉の意味から座右の銘として使う人も多いようです。「臥薪嘗胆」を座右の銘にする人の多くは、成功を目指して苦難に耐える、という意味を自分の行動に課しています

私の座右の銘は臥薪嘗胆です、定めた目標に向かって臥薪嘗胆、苦難に負けず取り組むことを人生の指針としています

私の座痛の銘は臥薪嘗胆です、社会人となれば辛いこともあると思いますが、目的を見失わず日々邁進していきたいと考えております

就活の面接で「座右の銘」を問われるのは珍しいことではありません。これから社会人となり、困難を乗り越えながら目指す方向へ向かっていく、という姿勢を一言で表せるのが「臥薪嘗胆」です。

 

「臥薪嘗胆」の類語

次に、「臥薪嘗胆」の言い換えに使える類義語をご紹介します。

「堅忍不抜」はじっと我慢する様子

「堅忍不抜(けんにんふばつ)」とは「辛いことに負けず、我慢強く耐え忍ぶ」という意味の四字熟語です。

彼女は幼い頃から辛い思いをしてきたが、いつだって堅忍不抜、本当に我慢強く耐えていた

これからは社会人として、厳しい現実の中で仕事に向き合わなければならない、堅忍不抜の精神で頑張りたい

「堅忍」とは、辛抱強く我慢をすること、「不抜」とは心をしっかりと持って動揺しない、という意味です。いつも気持ちをしっかりと据えて、辛抱する様子を「堅忍不抜」といいます。

「捲土重来を期す」は目標をめざして再度奮起する様子

「捲土重来を期す(けんどちょうらいをきす)」とは、正確には「一度失敗した者が、もう一度勢いを取り戻して奮起する」という意味です。一度収まっていた砂埃を再び上げて、立ち上がり奮起する様子を表しています。

彼は司法試験に失敗して落ち込んでいたが、やはり司法の仕事をしたいという思いは変わらないようだ、彼の捲土重来に期待している

来期は、今期のマイナスを巻き返せるよう、必ず捲土重来を期してみせます

「臥薪嘗胆」のように「耐え忍ぶ」という意味は含まれていませんが、目的を見失わずに邁進するというニュアンスは似ているでしょう。また、「捲土重来」という四字熟語だけでも同じ意味として使えます。

 

「臥薪嘗胆」の英語表現

最後に「臥薪嘗胆」を表す、英語表現について解説します。

「臥薪嘗胆」は英語で「perseverance」「endurance」

「臥薪嘗胆」を英語で表現する場合は、「perseverance」または「endurance」を使います。

After persevering for five years, He finally passed the examination.(彼は5年もの間臥薪嘗胆し、見事試験に合格した)

After enduring a long and hard struggle, she got accepted into the University of Kyoto.(彼女は臥薪嘗胆の末、京都大学に合格した)

英語には、「臥薪嘗胆」と全く同じ意味の言葉はありません。そのため「perseverance=忍耐」または「endurance=耐える」などの言葉を使って表します。