「老婆心」の意味と類語・老婆心ながらへの返しと例文

「老婆心」の意味と読み方

まずは、「老婆心」の意味と読み方について解説します。

老婆心とは「余計かもしれない忠告をする気持ち」

「老婆心」とは、相手にとっては余計と思うかもしれないことを忠告したい、という気持ちのことです。相手に「お節介」と思われるかもしれないが、どうしても伝えたい、と考える気持ちそのものを指します。

老婆心ながら、この予算はもう一度見直した方が良いように思う

これはただの老婆心だけれど、あなたが彼のことを誤解している可能性もあるから、一度話し合った方が良いのじゃないかな

「老婆心」とは、文字通り「老婆の心(気持ち)」です。一般的に、年配者は若い人に比べると何かと心配性で、相手のことを思うばかりにお節介なことを口にしてしまいがち、と言われています。この気持ちを「老婆心」という言葉にして、相手へお節介をすることの断り文句とするのです。

老婆心の読み方は「ろうばしん」

「老婆心」の読み方は「ろうばしん」です。「ろうばこころ」とは読みません

漢字の印象が似た「乳母心」がありますが、これは「うばごころ」です。ちなみに「乳母心」という正式な言葉はありません。ただし、「乳母(母親代わりの女性)」が、相手を息子や娘のように考えて接する気持ちを「乳母心」ということはあります。

「老婆心」の使い方と例文

次に「老婆心」の使い方を例文と一緒に解説します。

「老婆心ながら」は目下への注意をする際に使う

「老婆心」は主に「老婆心ながら」という形で使われます。この「老婆心ながら」とは、「お節介ながら」という意味です。自分より年下、目下の人へ注意や意見をする際に使います。

老婆心ながら、君は社会人としてのマナーを勉強しておいた方が良いように思うよ

私が言うことではないけれど、老婆心ながらのお節介として聞いてほしい

「老婆心ながら」は、自分よりも目下の人に「鬱陶しい」と思わせて申し訳ない、という気持ちを含んだフレーズです。「相手に鬱陶しいと思わせないため」ではなく、目下の気持ちを汲んだ思いやりのフレーズとして覚えておくと良いでしょう。

「老婆心が働く」は忠告したくなる気持ち

「老婆心が動く」とは、目下の人の言動を見ていて、どうしても忠告したい気持ちが出てくる状態を指します。「老婆心」が「動く」ことで、相手へ何か忠告や意見をしようとする様子です。

お節介はいけない、とわかっているのだけれど、新入社員の彼を見ていると老婆心が動いて仕方ないよ

部下の田中君には言いすぎてしまった、つい老婆心が動いてしまって…

「老婆心」は形としてあるものではなく、人の気持ちの中にある要素です。そのため実際に「動く」ことはありませんが、「気持ちが動く」などの「動く」と同様で、忠告したい気持ちが湧いてくる様子を「老婆心が動く」といいます。

「老婆心」は上司など目上には使わない

「老婆心」は、相手よりも年上である人しか使えません。そのため、上司や目上の人へ忠告や意見をしたい場合に「老婆心」は使えません。

出過ぎたことかと思いますが、この点はもう一度精査した方が良いように思います

私が申し上げることではありませんが、部長にはもう少しお体を大事にしていただきたく存じます

年上や目上の人へ何か忠告や進言をしたい場合は、例文のようなフレーズを使うと良いでしょう。目下からの意見や忠告は受け入れがたい、という人は多いでしょう。できるだけ柔らかい言葉を選ぶと、相手も聞き入れやすいかもしれません。

「老婆心」は男性でも使える

「老婆心」には「婆」という文字が入っています。「婆」とは老いた女性のことです。しかし「老婆心」は男性でも問題なく使えます

この「老婆心」は、あくまでも「年配者」を表す言葉の一つであって、「婆」という文字に忠実である必要はありません。自分が男性でも「老婆心」と使うことができます。

「老婆心」の返しは「勉強になりました」

「老婆心ながら…」という言葉で、目上の人から注意や意見をされた場合は、「勉強になりました」などと返すのが良いでしょう。

老婆心ながら、この予算は一度見直した方が良いように思うよ
ご意見ありがとうございます、それでは〇〇を加味した上で見直しを行います、勉強になりました

他にも「かしこまりました」「承知いたしました」など、相手の言葉を受け入れるのみの返答をしても問題ありません。

しかし、「老婆心」という言葉を使った相手は、お節介を承知で進言している可能性が高いため、「勉強になりました」など前向きな返答で相手の気持ちを汲むと喜ばれます。

「老婆心」の類語

次に「老婆心」の言い換えに使える類義語について解説します。

「僭越ながら」は身の程をわきまえない断り

「僭越ながら(せんえつながら)」とは、自分の身の程をわきまえない言動への断り文句です。「私のようなものが申し訳ありません」という意味で使われます。

僭越ながら、課長のご意見に補足させていただきます

僭越ながら、この度課を代表して挨拶を任されることとなりました

「僭越ながら」は「僭(目上の人)越(飛び越えて)でしゃばる」という意味の言葉です。身に余る役割を命じられたときや、目上の人に進言をする場面で使われます。

「僭越ながら」は、相手が目上の人である場合に使う言葉ですが、多くの人を前にしたスピーチなどでも使われます。

「差し出がましいようですが」はお節介をすることの断り

「差し出がましいようですが」とは、自分がでしゃばってお節介をすることへの断り文句です。「自分のようなものがすみません」という気持ちを表します。

差し出がましいようですが、自社の製品には若者を惹きつける斬新さが欠けていると思います

差し出がましいようですが、この課では備品の無駄使いが多いように感じています

「差し出がましいようですが」は、目下の人が目上の人へ意見をする場面で使います。

「自分が相手よりも下の立場で、本来であれば意見をすることはできないのだが、失礼を承知してでも伝えたい」という気持ちが「差し出がましいようですが」です。

「老婆心」の英語表現

最後に「老婆心」の英語表現について解説します。

「老婆心」は英語で「give advice」

「老婆心」を英語で表す場合は「give advice」を使います。「give advice」とは「忠告する」という意味です。

I give advice though it may not be necessary.(不要な忠告だと思うが…)

「老婆心」に含まれる「不要(な忠告)だろうけれど」は「may not be necessary」です。「give advice」と組みわて「不要な忠告だとは思うが」というニュアンスになります。