間違いやすい「祈念」の意味と使い方・類語と例文・英語

「祈念」の意味と読み方・使える場面

まずは、「祈念」の意味と読み方について解説します。

「祈念」とは心を込めて祈り念じること

「祈念」とは、神や仏に祈って、念じることです。自分以外の人の幸せや、企業や人の繁栄、物事の成功などが上手くいくように祈ることを「祈念」と言います。

「祈念」が使われるのは、主に以下の4つの場面です。

・お祝い
・お見舞い
・励まし
・文章の締め

それぞれの「祈念」の使い方を以下の例文でご紹介します。

お祝いで使う「祈念」の例文

それでは、○○株式会社様のますますのご繁栄を祈念して、乾杯

それでは最後に、新郎新婦、並びにご参列の皆様の今後のご健勝を祈念し、お祝いの挨拶とさせていただきます

お見舞いで使う「祈念」の例文

最後となりましたが、○○さんの一日も早いご回復を祈念いたします

○○さんが一日も早く復帰し、またご指導いただけるよう心より祈念いたしております

励ましで使う「祈念」の例文

貴社の新プロジェクトが成功することを祈念いたしております

○○さんのオリンピック出場を祈念し、ご挨拶とさせていただきます

文章の締めで使う「祈念」の例文

貴社のますますのご繁栄を祈念いたしております

貴殿のますますのご健勝を祈念いたしております

「祈念」の読み方は「きねん」

「祈念」の読み方は「きねん」です。

「祈」は、「いのり」とも読みますが、「祈念」の形では「き」と読みます。「念」は「ねんじる」と読むため、そのまま「ねん」と読んで間違いではありません。

ただし「きねん」という発音には、他にも「記念」「紀年」など、他の言葉もありますので、アクセントには注意しましょう。次の見出しでは「祈念」の発音について解説します。

「祈念」の発音は「き」にアクセント

「祈念」の発音は、頭高です。「きねん」の「き」にアクセントを置いて「きねん」と読みます。未練・試練、などと同じイントネーションで読むと間違えずに読めるでしょう。

「祈念」はアクセントの場所を間違えると、「記念」と聞き間違えてしまうので、挨拶などで「祈念」を使いたい場合は事前にアクセントの確認をしておくのがおすすめです。

「祈念」の使い方と例文

次に、「祈念」の使い方を例文を交えて解説します。

結婚式の乾杯時などお祝いの席で「ご多幸を祈念(ごたこうをきねん)」

結婚式など、おめでたい場面で使う「祈念」は、「ご多幸を祈念」とするのが決まり文句です。「ご多幸」とは、相手が得るたくさんの幸せのことです。

それでは、最後になりましたが、新郎新婦のご多幸とご参列の皆様のますますのご健勝を祈念し、乾杯の言葉とさせていただきます、乾杯

○○株式会社様の、今後ますますのご発展と、社員の皆様のご多幸を祈念してお祝いの言葉とさせていただきます

結婚式だけでなく、会社の記念パーティーなどでも「祈念」を用いた挨拶ができます。「祈念」を使うタイミングで多いのは乾杯の挨拶です。来賓として招かれ、乾杯の音頭をとる場面などで「祈念」を使うと、挨拶が締まりやすくなります。

ただし、お祝いの席であっても「祈念」を使いすぎないようにしましょう。「祈念」を使うのは、挨拶の最後だけです。

メール・手紙での「ご健勝を祈念申し上げます」

ビジネスメールやビジネスレターだけでなく、個人的なメール・手紙など文書のやりとりの中でも「祈念」は使えます。「ご健勝」とは、相手の健康が優れて、健やかなことです。

最後になりましたが、○○さんのますますのご健勝を祈念申し上げます

○○先生の教師生活30周年をお祝いするとともに、ますますのご健勝を祈念申し上げます

「ご健勝」を使えるのは、相手が現時点で健康な人の場合のみです。たとえば、病気療養中の方や、ケガの治療をしている方、重い持病がある方には使えません。

また、「祈念申し上げます」を誤って「お祈り申し上げます」としてしまうと仏事用の言葉になってしまいます。「祈念」でなければお見舞いやお祝いの言葉にはなりませんので注意しましょう。

スポーツや受験での「必勝を祈念いたします」

相手がスポーツの大会を控えていたり、大事な受験を控えている場面では「必勝を祈念いたします」が使えます。「必勝」とは文字通り、必ず勝つことです。

○○選手の、次回○○大会での必勝を祈念いたします

ご子息の○○大学合格、必勝を祈念いたしております

尚、この「必勝を祈念」はある程度その見込みがある場面で使うのがマナーです。どう考えても見込みが薄い場面で「必勝を祈念」を使うと、受け取り方によっては嫌味と感じられてしまいます。

きっと大丈夫だろう、もう少し頑張ればいけるだろう、という状況で「必勝を祈念」を使うと相手にとっての励ましとして機能するでしょう。

入学・卒業時の「門出を祈念」は誤り

入学や卒業を祝う言葉で、誤って使いがちなのが「門出を祈念」です。「門出」とは、旅立ちを意味する言葉で、お祝いの場面でよく使われます。

しかし、「門出」は「祝う」ものであって、祈念するものではありません。門出を祝いたい場合は以下の例文を参考にしてください。

ご子息の晴れやかな門出をお祝いしたく、ささやかではありますがお祝いの品を用意いたしました

○○君の門出を祝って、今夜はみんなで飲もうじゃないか

「祈念」できるのは、その人の行為や将来などです。門出はただのタイミングに過ぎないため、祈念をしても意味がありません。

「祈念」が使えるか迷ったときは「自分が祈念したいのは何なんか」と考えてみるとようにしましょう。

「祈念」の言い換えに使える類語との違い

次に、「祈念」の言い換えに使える類語について解説します。

「祈願」との違いは宗教色の強さ

「祈念」と似た言葉に「祈願(きがん)」があります。「祈願」とは「神や仏に願いを込めて祈ること」です。神や仏に祈る、という気持ち自体は「祈念」と同じように見えます。

しかし、「祈願」は「祈念」よりも祈りが具体的で宗教色の強い言葉です。

「祈念」が心の中で祈るイメージだとすれば、「祈願」は実際に神社仏閣に赴き、神や仏に向けて何らかの働きかけをするイメージ、と考えるとわかりやすいかもしれません。

「祈念」の英語表現

最後に「祈念」の英語表現について解説します。

「祈念」は英語で「pray」

「祈念」を英語で表現する場合は「pray」を使います。「pray」とは日本語で「願い求める」という意味の単語です。

I pray for your company’s development.(貴社の発展を祈念します)

I pray for your health.(ご健康を祈念します)

「pray」は日本語の「祈念」と違い、「祈願」という意味も持ち合わせています。

また、日本語の「祈念」はポジティブな事柄に使いますが、英語の「pray」は病気療養中の方に向けたお見舞いなどにも使われるので、日本語とのニュアンスの違いに注意しましょう。