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「せわしい」の意味
「せわしい」は日常会話で使われます。フォーマルな場面ではあまり使われませんが、人によってはビジネスシーンで多用することもあるようです。
せわしいは「忙しい」と書く
「せわしい」は基本的にはひらがなで書きます。漢字にすると「忙しい」です。
辞書的な意味は「忙しい」
「せわしい」の辞書的な意味は「忙しい(いそがしい)」です。用事が次から次とあり、落ち着いて休む暇がない様子を表します。
単に忙しいというよりも、用事の多さに身心が落ち着かず、一息ついたりものを考えたりする暇もない状況を「せわしい」と表現します。
今日は何ともせわしい1日だった
彼はいつもせわしく動き回っている
このせわしさが終わるのはいつのことだろうか
「せわしい」は「せわしく(いそがしく)」「せわしさ(いそがしさ)」など、形を変えて使うこともできます。
「せわしない」はせわしいの強調
「せわしい」は「とてもせわしい」「大変せわしい」という言い方で強調できますが、「せわしない」であれば一言でせわしい様子を強調できます。
彼女は頑張り屋さんだが、なんともせわしないので周囲が落ち着かない
私は仕事に家事にと、せわしない毎日を送っています
この時期のせわしないことといったら、毎年ぐったり疲れてしまいます
通常「ない」は否定を表しますが、「せわしない」の「ない」は強調です。これは「切ない」「はしたない」などに使われている「ない」と同じ働きと考えられます。
「せわしい」の使い方
「せわしい」は、使い方によって「いそがしい」以外の意味やニュアンスも伝えられます。
慌ただしい意味での「せわしい」
あれこれとやることがあって「いそがしい」というよりも、全体的にざわざわと混乱している様子を「慌ただしい(あわただしい)」と言います。「せわしい」は、この「慌ただしい様子」を表す場合にも使います。
年末年始はどこの会社もそうでしょうが、うちは特にごった返していて、みんなせわしく動き回っています
ニュースで見たけれど、雪の日は交通の乱れで何かとせわしく混み合っているようだ
うちの部署はどうしていつもこうせわしいのだろう
「慌ただしい」という意味で「せわしい」を使う場合は、いそがしいという意味と混同しないための説明が必要になります。説明がなく「せわしい」を使うと、ごたごたとした慌ただしい様子が伝わりません。
言動がせかせかしている「気せわしい」
「気せわしい(気ぜわしい)」は「いそがしい」という意味ではなく、せかせかとしていて落ち着きのない様子を表します。「気せわしい」は状況やその場所の様子ではなく、特定の人の言動について使います。
あなたはどうしてもいつもそう気せわしいの
彼は一生懸命なのだろうが、見ていると気せわしく感じる
この1週間は我ながら気せわしかったと思います
「気せわしい」は、他人や自分の様子を非難する場合に使います。しかし非難と言っても「気せわしい」という言葉で強く相手を責めるというよりは、呆れながら苦言や注意を促す程度です。
うるさいという意味での「せわしい」
「せわしい」は「うるさい」という意味にも使えます。大きな音や声に対して言う「うるさい」よりも、多くの声や音による喧騒や相手から自分に向けられる苦言などについて使われます。
部長はあれこれと文句ばかりでせわしくてならない
新幹線で団体と一緒になってしまって、せわしい旅となってしまった
私もせわしいことは言いたくないが、彼はあまりにたるんでいる
うるさいという意味での「せわしい」は「煩わしい(わずらわしい)」というニュアンスも含んでいます。口うるさく言うことを「面倒なこと」として、「せわしい」と表しています。
性格を表す「せわしい性格」
人の性格を「せわしい性格」と表すこともあります。この場合の「せわしい」には、うるさい・落ち着きがない・煩わしいなどすべての要素が入っています。
彼女は何と言うか…本当にせわしい性格をしている
今回ばかりは課長のせわしい性格のおかげで、事前にミスを防げたのだから感謝しなくては
私は自他共に認めるせわしい性格をしています
「せわしい性格」の定義はありません。うるさい・落ち着きがない・煩わしいなどどれとは言い切れず、総合的に判断して「せわしい性格」と言っているだけです。そのため「どんな風にせわしい性格なのか」は、話している人に聞いてみなければ判断できません。
「せわしい」の類語
「せわしい」にはいくつかの類語があります。以下では日常のビジネスシーンでも使える類語をご紹介します。
「目が回る」
「目が回る」とは比喩表現です。まるで目が回ってしまうのではないか、と思うくらい忙しくしている様子を表します。「せわしい」を「いそがしい」という意味で使う場合の言い換えに使える類語です。
私は仕事に家事にと、目が回るような毎日を送っています
この時期は目が回るような忙しさで、毎年ぐったり疲れてしまいます
「目が回る」は、疲れ切って倒れてしまう様子を表した比喩なので、少々の忙しさには使いません。本人が「本当に倒れてしまうかもしれない」と感じるような、特別な忙しさについてのみ使います。
「きりきり舞い」
「きりきり舞い」とは、コマのように片足だけで回り続ける様子を表す言葉です。「忙しくて休む間もなく、回り続けるような状態」を「きりきり舞い」で表します。
今日は得意先に呼び出されたと思ったら契約の見直し、別の取引先から商品クレームも入り本当にきりきり舞いだった
彼女は余裕がないのか、いつもきりきり舞いしている
「きりきり舞い」には「てんてこ舞い(天手古舞い)」という類語もあります。やはり「せわしい」と同じで「目の前のことに追われて忙しく動き続ける」という意味です。
「慌ただしい」
「慌ただしい」とは、短い時間の中に多くの用事が詰まっていて忙しく動き回る様子を表す言葉です。やはり「せわしい」と同じように、休む暇なく動き回る状態です。
うちの会社は海外との取引が多く、時差の関係でいつも慌ただしいのです
慌ただしいばかりで、それほど利益が出ていないのが問題です
「慌ただしい」は日常のビジネスシーンでもよく使われます。「いそがしい」「せわしい」などよりも使いやすく、せわしい状況が相手にも伝わりやすいでしょう。
「せかせか」
「せかせか」とは、人の落ち着きがない行動を指す言葉です。いそがしいというよりは、何かに焦っている、慌てているというニュアンスの方が近いでしょう。
今日の部長はいつになくせかせかしている、何かあったのだろうか
昨日は納期で、みんな1日中せかせかしていた
「せかせか」は人がせわしなく動く様子そのものを音にした言葉です。落ち着きなく、何かに焦ったように動く様子を表したいときに使えます。
「せわしい」 の失礼・間違った使い方
「せわしい」は自分が見た様子や自分自身の言動に使う言葉です。しかし、相手によっては「せわしい」が失礼にあたる場合もあります。
「せわしい」は目上の言動には使わない
「せわしい」を、目上の人の言動に使うのは失礼です。「せわしい」にはネガティブな印象があるため、自分の言動や自分の同僚や部下、または身内などにのみ使います。
×社長はいつもせわしくされていますね
○社長はいつも忙しそうにされていますね
×御社は業績も良好で、さぞせわしくされているでしょう
○御社は業績も良好で、さぞお忙しいことでしょう