間違いやすい「精を出す」の意味と使い方・類語と例文

慣用句「精を出す」の意味

「精を出す」はビジネスシーンだけでなく、日常生活でもよく使われる慣用句です。以下では「精を出す」の意味について解説します。

精を出すは「元気を出す・集中する」

「精を出す」とは、簡単に言えば「元気を出す」「集中する」という意味です。「精」には「活動対のエネルギーの根源である元気や集中力」という意味があります。

・彼は社内コンペで勝つため、資料作りに精を出している

・最近の会長は趣味の俳句に精を出しているそうだ

・最近何事にもやる気が起きず、仕事に精を出すなんてできない

「精を出す」は何かの事柄について、人が一生懸命取り組む様子や、日頃以上に熱意を持って臨む姿勢を表すポジティブな言葉です。

しかし、目上の人が何かに集中したり熱意を注いだりする様子にはあまり使いません。目上の人の行動には「精を出される」「ご精を出す」など丁寧な表現を使うようにしてください。

「精を出す」の言い換えに使える類語

「精を出す」の言い換えに使える類語はたくさんあります。以下ではその中から、日常やビジネスシーンで使いやすいものをご紹介します。

勤しむ(いそしむ)

「勤しむ」とは「一生懸命にする」という意味です。

・日夜勉強に勤しむ

・毎日仕事に勤しむ

・昔は仕事と資格勉強に勤しんだものだ

「勤しむ」は「一生懸命に取り組む様子そのもの」を表します。そのため「勤しむ」の後に「○○をした」などの説明は要りません。必要なのは「何に勤しんだか」ということがわかる名詞や動詞だけです。

「勤しむ」は一生懸命よりも、ひたむきに取り組むニュアンスが強く、人知れず頑張っているイメージに使います。

骨を折る

「骨を折る」とは「苦労して力を尽くす」という意味です。

・今回の契約はなかなか決まらず、何かと骨を折った

・次回新商品の件では、部長もかなりお骨折りと聞いております

・あれだけ尽くしたのに、これでは骨折り損のくたびれもうけじゃないか

「骨を折る」は自分がした苦労について使います。目上の人へ向けて、相手が苦労している様子は「お骨折り」という言葉で表せます。また、「骨折り損のくたびれもうけ」はことわざで、「苦労した割に得るものがない」という意味です。

このように「骨を折る」は少しずつ形を変えて、さまざまなシーンで使われています。

尽力(じんりょく)

「尽力」とは、文字通り「力を尽くす」という意味です。

・社長のお力になれるよう、できる限りの尽力をいたします

・彼の尽力は、我社を変える大きな起爆剤となった

・部長のご尽力の甲斐あって、A社との業務提携が有利に進んだと聞いております

「尽力」は自分が力を尽くした場合だけでなく、自分以外の人が尽くした力についても使えます

ただし「目上の人が力を尽くした」と言う場合は少し注意が必要です。丁寧語にして「ご尽力」とすれば、文法的には間違いではありませんが、目上の人に対して「あなたの力を尽くした」と言うこと自体に良い印象を持たない人もいます。

「尽力」という言葉が、目上の人の力を見くびることにつながるためです。そういう意味では「ご尽力」を使う場合は注意をしましょう。

粉骨砕身(ふんこつさいしん)

「粉骨砕身」とは「力の限り尽くし、骨を粉にして身を砕く」という意味の四字熟語です。

・この度エリアマネージャーを仰せつかりました、粉骨砕身で邁進いたします

・あの時の彼はまさに粉骨砕身、周囲が心配するほど徹底して取り組んでいた

・私の座右の銘は粉骨砕身です、自分にできることを常に精一杯やりとげます

「粉骨砕身」は、日常やビジネスシーンでの会話でも使われますが、四字熟語ということもあり、主には決意表明などに使われます。また、面接時の座右の銘などでも使える言葉です。

「粉骨砕身」は、骨を粉にして実を砕くという極端な苦労を表します。そのため、あまり軽々しく「粉骨砕身」を使うと、やや大げさな印象になることに注意しましょう。

精勤(せいきん)

「精勤」とは「熱心に取り組むこと」を意味します。

・ビジネスマンとして、いつも精勤でいたいのです

・専務はお忙しいにもかかわらず、小さな仕事にもご精勤でいらっしゃいます

・明日の全体会議では、今期の精勤者を表彰する予定です

「精勤」はポジティブな意味を持つ褒め言葉のひとつです。そのため、自分自身について使う場合は「精勤でいたい」など、未来の目標として使うことになります。他の人について使うのであれば、現在形として「彼は精勤だ」などと使って問題ありません。

目上の人が精勤であることを表す場合には、「ご」をつけて「ご精勤」とします。「ご精勤」とすれば尊敬語となり、相手に対して失礼がありません。

老骨に鞭打つ(ろうこつにむちうつ)

「老骨に鞭打つ」とは「衰えた老人の体で努力をする」という意味です。

・会社のピンチなのであれば、私も老骨に鞭打ってでも何とか頑張りたいのです

・ご自身では「老骨に鞭打つ」などとおっしゃっていたが、社長はまだまだお若いし十分なお力をお持ちだ

・あの時私は老骨に鞭打って、何とか乗り切ったのです

「老骨に鞭打つ」は、簡単に言えば自虐を意味する言葉です。自分はもう歳だけれど…という、謙遜の気持ちを持ちながら、歳に似合わず頑張る様子を「老骨に鞭打つ」という言葉で表しています。そのため「老骨に鞭打つ」を、目下の者から目上の人へ向けることは失礼です。

目上の人がご自身で「老骨に鞭打つ」を使った場合は、「ご謙遜を」「そのようなことはございません」など、打ち消す相槌が必要です。