【目上へ】何卒 の意味と使い方・例文

何卒 の意味と使い方・例文

何卒(なにとぞ)は、「どうか〜してください」という意味の依頼の表現や、「どうか〜でありますように」という意味の期待の表現において、「どうか」に当たる副詞的な文言として使用される言葉です。

依頼や期待の気持ちを強調したニュアンスになります。

書簡文の中では現在でも大変によく使われる言葉です。

特に依頼の意味での使用では、実際に何かを相手に懇願する場合だけでなく、相手の健康を願うような形式的な挨拶の言葉の中でも頻繁に使用されます。

なお、「何卒」という言葉は、室町期にはすでに使われていた「どうにか」という意味の副詞「何とか」(なんとか)に、そのような疑問語を受けて強調する不定の助詞「ぞ」が付いた「何とかぞ」が本来の形であり、それが訛って江戸時代までには現在の形になりました。

「何卒」は当て字であり、純然たる和語ですから、漢字熟語を多用する硬い手紙などで「なにとぞ」と仮名書きにしても一向に差し支えありません。文面をソフトにしたいときや奥床しい雰囲気を出したいときには、仮名表記が向いています。

何卒の例文

何卒ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。
恐れ入りますが、どうかご理解のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。
大変恐縮ですが、何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます。
恐れ入りますが何卒ご容赦のほど、お願い申し上げます。
明日の会合には、なにとぞご出席ください。
時節柄、何卒、ご自愛専一に。
季節の変わり目でございます、なにとぞご自愛ください。
何卒ご笑覧いただければ幸いでございます。
何卒好天に恵まれますようお祈り致しております。
先日は挨拶回りにお付き合いいただき、誠にありがとうございました。ご厚意に甘えるようで恐縮ですが、今後とも何卒ご指導とご交誼のほどお願い申し上げます。
現状では御社との表立った共同事業をお受け致しかねます。弊社の置かれている立場に何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます。
この度は愚息がまた大変なご迷惑をお掛けし、お詫びの言葉もございません。本人も今回はさすがに深く反省致しておりますので、何卒ご容赦下さいますようお願い申し上げます。
このたびは久しぶりに先生のお元気なお顔を拝見し、楽しいひと時を過ごすことができました。お忙しい毎日とは存じますが、なにとぞお体をおいとい下さいませ。

何卒の類語例文

この度は娘の絵画展のことでもお骨折りを頂き、誠にありがとうございました。お礼のおしるしとしてお菓子を別便にてお送りしましたので、どうぞ皆様でお召し上がりください。
ご注文のズワイガニは、このところの不漁続きで入荷量が極端に減っております。ご希望の量は確保できませんが、どうか悪しからず。
東都信託銀行様の企画案ができましたので、PDFファイルにてお届けします。よろしくご査収の上、ご検討のほどお願い申し上げます。
こちらは周囲が田んぼと雑木林ばかりの田舎ですので気の利いたおもてなしはできませんが、近くへおいでになられたときはぜひお立ち寄りください。
ぜひとも先生のお目に掛けたい作品が手に入りましたので明日お伺いしたいのですが、ご都合はいかがでしょうか。
何としても一度お会いして忌憚のないご意見を伺いたいと思い、矢も楯もたまらず押し掛けてしまいました。ご無礼の段、平にお許しください。
その後、お加減はいかがですか。そちらへ伺った折にはまた元気なお姿を拝見したいと思っておりますので、くれぐれもお大事になさってください。

「何卒」の正しい使い方

「何卒」という言葉にはいくつかの使い方があります。

(1)相手へお願い・依頼をする

相手へ何かをお願いしたり、何かを依頼したりする場合に使う「何卒」には「どうか」という意味があります。

「何卒よろしくお願い申し上げます」であれば「どうかよろしくお願い申し上げます」と言い換えることができます。

また、「この書類に記入をして欲しい」という依頼は「こちらの書類に、ご記入いただきますよう何卒お願いいたします」などとも言い換えられるでしょう。

このように「どうか〜してください」と伝えたい場面で「何卒」を使うことで、こちらの強く願う気持ちをスマートに伝えることができます。

(2)相手へ謝罪をする

相手へ何かの謝罪をする場合にも「何卒」を使うことができます。

「何卒お許しください」「何卒ご了承願います」などです。この場合も「何卒」は「どうか」という意味が強く、㈰お願い・依頼と似た使い方をすることができます。

(3)相手へ敬意を払う

手紙やメールの文末などで「何卒ご自愛くださいませ」などとしている場合の「何卒」には「どうぞ」の意味があります。

「どうぞ、お身体を大事にされてください」と読み取ることができ、相手への敬意を込めることができるでしょう。

この場合の「何卒」のあとには言い切りの語尾が来ることが多く、その分「こちらは強くそう願っています」という思いやりの気持ちを強調する働きもあります。

「何卒お気遣いなく」などとして相手に遠慮をしてほしくないという気持ちを表すこともできるでしょう。

(4)伝えにくいことを伝える場合のクッション言葉

相手の意に添えないことを伝える時に、そのことだけを言葉にすると、思わぬ強い印象を相手に持たせてしまうことがあります。

たとえば「今回の契約は見送らせていただきますので、ご了承願います」などとすると、相手は「拒否された」という印象を強く持ってしまうでしょう。

そこで「今回の契約は見送らせていただきます。何卒ご了承願います」などとして、相手への印象を弱めるクッション言葉の役割をします。

「何卒」の間違った使い方

「何卒」という文章は手紙やメールの文末で良く目にします。

相手に対して「どうぞよろしくお願いします」という意味で使われることがほとんどです。この「何卒」という言葉は、相手を敬う言葉で「どうか」「どうぞ」とも言い換えることができます。

そのため「どうか、何卒よろしくお願いいたします」など「何卒」と「どうか」や「どうぞ」を一緒に使ってしまうと、不自然な言葉となりますので注意が必要です。