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「なまじ」の2つの意味と語源
会話の中で「なまじ」という言葉を聞いたことがある、という人は多いのではないでしょうか。しかし「なまじ」は、意味を知らなければ想像することが難しく、話の筋がわからなくなってしまう言葉でもあります。
まずは、「なまじ」が持っている2つの意味と語源について解説します。
好ましいものが期待に反して不完全な様子
1つ目の「なまじ」の意味は、「そうしたこと自体は好ましいことなのに、状況への悲観や対応を誤るなどして期待に反する結果を招く様子」です。
なまじ口を出したのが悪かった(口を出さなければよかった)
なまじ健康に自信があったため、かえって病気を悪化させてしまった(健康を過信しなければよかった)
なまじ引き受けるとあとでひどい目にあうにちがいない(引き受けない方が良かったと思うことになるだろう)
簡単に言えば「いいところまでいっている(いた)けれど、結果的に悪い方向へと向かってしまった」です。後の使い方の見出しでも、詳しく解説します。
予測よりも程度がはなはだしい様子
2つ目の「なまじ」の意味は、「知識や経験などから予測されるよりも、程度がはなはだしいことを表す様子」です。
赤道直下はなまじの暑さではなかった(並大抵の暑さではなかった)
彼のその腕前はなまじ素人のものではない(到底素人とは思えない)
なまじ勉強したくらいでは合格できる試験ではない(ちょっと勉強したくらいでは)
こちらの例文にも()で、「なまじ」が伝えようとしていることを記載しました。
なまじっかとはなまじの口語的表現
「なまじ」と似た言葉に「なまじっか」があります。
なまじっか食べなければよかった(中途半端に食べなければよかった)
なまじっかなお金では家は買えない(ちょっとやそっとのお金では家は買えない)
「なまじっか」とは、「なまじ」の口語的(話し言葉的)表現です。そのため、「なまじっか」と言っても間違いではありません。
「なまじ」が「なまじっか」になっても、使い方や意味に違いはありません。
「なまじ」の語源は漢字の「生強(なまじい)」
「なまじ」という言葉の語源は、漢字の「生強」だと言われています。
「生強」とは、「中途半端な様子、未熟」という意味で、古くから使われていたそうです。
この言葉が元になり、現代の「なまじ」になったと言われています。
「なまじ」の使い方と例文
以下では「なまじ」の使い方を、例文と交えて解説します。
なまじ頭がいい
「なまじ頭がいい」とは、中途半端に頭がいいという意味です。
彼はなまじ頭がいいものだから、みんながわからない言葉を使いたがるんだよね
彼女はなまじ頭がいいらしく、すぐに学歴をひけらかしてしまうんだ
本来であれば「頭がいい」は褒め言葉のはずです。しかし「なまじ」が付くと、ネガティブな表現へと変わります。
なまじ可愛い・なまじ美人
「なまじ可愛い」「なまじ美人」という言葉は、下手にかわいい・下手に美人、という意味です。
彼女は本当に性格の良い子なのだけど、なまじ可愛いものだから同性からはやっかまれているようだ
妻はなまじ美人なもので、美容にお金をかけたがるんだ
下手に可愛い、とは「可愛いことは良いことのはずなのに、可愛いことによって弊害がある」というニュアンスの言葉です。下手に美人、も同じように解釈ができます。
「なまじ」は誤用に注意
「なまじ」は、近年誤用されることが増えているようです。その誤用とは「なまじ」を「ある程度」という意味で使うものです。
- なまじ間違いではない
- なまじ嘘じゃない
これらは、「なまじ」を「ある程度・ある意味」という意味で使っています。しかし「なまじ」にはそれらの要素は含まれていません。
「なまじ」の言い換えに使える類語
以下では、「なまじ」と似た類義語について解説します。
中途半端
先の解説でも紹介したように「中途半端」は、「なまじ」と似た意味を持っています。
彼は中途半端にハンサムだから、結構人受けがいいんだよね、私は好みではないけれど
課長は中途半端に器用で、毎年手作り年賀状の感想を聞かれるのが困る、手放しでほめられるほどではないから
「なまじ」という意味で「中途半端」を使う場合は、その「中途半端」が「なまじ」の役割をしていることがわかる発言が必要です。
到底〇〇ではない
「なまじ」を予測よりも程度がはなはだしい様子として使う場合の言い換えは「到底〇〇ではない」が使えます。
彼の演奏は、想像を遥かに超えるもので、到底アマチュアだとは思えなかったよ
あなたはネイティブスピーカーだと言うけれど、その英語の発音は到底ネイティブではないよね
この「到底〇〇ではない」という表現は、良くも悪くも使われますが、「なまじ」の言い換えとして使う場合も同様です。