「邁進」の意味と使い方・類語「精進」との違いとは

「邁進」の意味と使い方

「邁進」は所信表明や挨拶の場面で良く使われる言葉です。まずは「邁進」の意味について解説します。

「邁進」とは突き進むこと

「邁進(まいしん)とは、どんな危険や困難にもひるまずに突き進むことです。ひたすらまっすぐに進む様子を指します。

・日々邁進し、一日も早く会社の戦力となれるようにいたします

・彼女には多くの困難に負けず、ただ邁進してくれるよう期待しています

「邁進」の「邁」には、進むという意味があります。そこに「進」が付き、前に進む様子を強調しているのが「邁進」です。

言葉のイメージとしては、どんなことがあろうと挫けずひたすら前に進んでいく様子でしょう。その「邁進」を自らや他人の成長と結び付けて、激励や意思の表明として使うことが多い言葉です。

「邁進」には「勇気を奮い起こす」という意味もある

「邁進」には、心や勇気を奮い起こして進んでいくという意味もあります。前途に対してひるみそうになる気持ちを奮い立たせて、勇気を出すというイメージです。

・初めての経験で自分にできるか不安ではありますが、邁進し必ずやり遂げようと思います

・資格試験は大変ハードルの高い試練ですが、邁進し合格してみせます

先に解説した「邁進」が物理的・現実的な困難に立ち向かう気持ちであるのに対し、この「邁進」は心理的な抵抗に挑む気持ちを表します。

どちらの「邁進」も突き進んで行く、という行為に変わりはありませんが、物理的な意味だけでなく心理的な意味でも「邁進」が使えることを理解しておきましょう。

「邁進」の漢字は「萬」ではない

「邁進」に使われている漢字は「邁」です。読みは「まい・ばい」「ゆく・すぎる・つとめる」です。「萬(まん)」ではありません。邁進」には、ひたすらに進むという意味があるので、「萬」では意味が通じなくなります。

漢字の書き間違いと読み間違いに注意をしましょう。

邁進と精進の違い

「邁進」と似た言葉に「精進」があります。この2つの言葉は、音の響き以外にも、同じ「進」という漢字が使われていることや、似た場面で使われることなどから、意味の区別がつきにくいでしょう。

「精進」とは努力を続けること

「精進」とはひたむきに努力をし続けることです。「邁進」は自分を奮い立たせて突き進むことですので、「進み方の違い」があります

この度はこのような賞をいただき大変光栄です、これからも慢心せずに、日々精進して参ります

あなたには可能性があるのだから、一日一日を大切に精進していってほしい

精進する気持ちを忘れてしまったら、人はそこで足を止めてしまうだろう

邁進は、強い気持ちと足取りで目標に向かって勇敢に進んでいくイメージです。一方、精進は強い信念を持ちながらも、小さな努力を重ねて少しずつ、しかし確実に進んでいくイメージ、と言えます。

「邁進」も「精進」も、決意表明などの場面で使われ、自分やその人が成長や挑戦を約束する、という意味では同じです。その上で、邁進と精進のどちらを使うか迷ったら、自分の気持ちに近い方の表現を選ぶと良いでしょう。

「邁進」を使った四字熟語

以下では「邁進」を使った四字熟語について解説します。

直往邁進

「直往邁進(ちょくおうまいしん)」とは、ためらわずにまっすぐと進むことです。「邁進」に、まっすぐという意味の「直往」を付けて四字熟語にしています。

・私の人生は仕事に直往邁進、ただひたすらに仕事をしてきました

・彼は今、趣味に直往邁進しているようだ

「直往」とは、まっすぐな道という意味です。「邁進」だけではなく、その進んでいく道がまっすぐで迷いがないことを表しています。

勇往邁進

「勇往邁進(ゆうおうまいしん)」とは、恐れることなく自分の目的や目標に向かってひたすら前進することを意味します。

・彼は初めての海外赴任にも勇往邁進、何とも勇ましいものです

・私は何に対しても勇往邁進が心情です、与えられたチャンスは必ずものにします

「勇往邁進」は、勇ましく前進していく様子が伝わる四字熟語です。未経験のことに臨む姿勢や、困難と思われる課題に取り組む場面で使われます。

邁進一筋は誤り

「邁進一筋」という四字熟語は存在しません。しかし、文字から伝えたい意味が何となく伝わるために、誤ったまま広まったようです。

恐らくは「邁進することに集中する」「邁進すること一筋に突き進む」というニュアンスかと思われますが、誤った四字熟語であるため使用は控えた方が良いかもしれません。

「邁進」の使い方例文と敬語表現

「邁進」は目上の人との会話や、大人数を前にしたスピーチなどでも使われます。また、自分が邁進する場合だけでなく、これから邁進する人を送り出す場面などでも使われます。

年賀状では「邁進してまいります」

目上の人へ出す年賀状では「邁進してまいります」が良く使われます。

・本年は仕事に邁進してまいります ご指導のほどよろしくお願い申し上げます

・本年は旧年以上に技術の習得に邁進してまいります

年賀状には、新年の挨拶以外に一言添えるのが通常です。その年賀状の相手が目上の人であれば敬語を使わなくてはなりません。

「がんばります」などでは少し幼く、敬語に相応しい表現でもないため「邁進してまいります」などが良いでしょう。

決意表明では「邁進する所存でございます」

ビジネスシーンで、自分の決意を表明する場面では「邁進する所存でございます」などが使われます。

・この度課長を拝命いたしました、課員のため、会社のために邁進する所存でございます

・今回はこのような場をいただきありがとうございます、皆様にご満足いただる結果が残せるよう邁進する所存でございます

「邁進する所存でございます」は、「邁進いたします」よりも控えめな敬語表現です。

「所存」とは「思う・考える」という意味で、自分はこうしたいと思っている、ということを伝える場面で使います。

上司へ向けての意気込みでは「邁進いたします」

上司へ向ける自分の意気込みは「邁進いたします」で伝えられます。「邁進いたします」とは「邁進します」という意味です。

・今期は目標達成に向けて邁進いたします

・部長のご期待に添えるよう邁進いたします

「邁進いたします」は、簡潔ながら失礼のない敬語表現です。させていただきます、~する所存でございます、などよりもストレートで、それでいて敬語として間違ってもいません。

「~します」の謙譲語が「~いたします」です。「邁進」という少し難しい言葉と併せるとバランスも良く、スマートな表現となります。

他人の邁進を祈る場面では「邁進してください」

自分より目下の人や部下などが、進学や転勤などでその場を離れる際の送別の挨拶などでも「邁進」が使われることがあります。

田中さんにとって、これはとても大きなチャンスです、どうか邁進していってください

進学おめでとう、どうかこれから将来のために邁進してください

自分が他人を送り出す際の「邁進」は、例文のような形で使われます。相手の飛躍や成長を祈っている、という気持ちを「邁進してください」という言葉に込めています。

ただし、目上の人に「邁進」という言葉は使いません。

目上の人に対しては「ますますのご活躍をお祈りしています」などが適切です。

「邁進」の言い換えに使える類語と例文

最後は「邁進」と似た意味を持つ類義語について解説します。

前進

「前進」とは、前に進むという意味です。日常会話でも頻繁に使われる表現なので、非常に使いやすい言葉でしょう。

・私にできるのはただ前進するのみ、毎日を大切に過ごしていきます

・彼は常に前進しようとしている、向上心が高い証拠だろう

「前進」は、物理的に前に進むという意味でも使いますが、その人の成長や向上という意味でも用いられます。成長することや向上することを「前に進むこと」とイメージしているためです。

反対に、ネガティブな思いは「後退」で表せます。「前進」とセットで覚えておくと良いかもしれません。

奮発

「奮発(ふんぱつ)」とは、今までよりもさらに力を奮い起こすという意味です。

・田中君の成功を見て、私も奮発しました

・娘のかわいさが私も奮発する

「奮発」というと、お金を多く出すというイメージを持つ人は多いのではないでしょうか。あの奮発も、今までよりもさらに力を奮い起こしてお金を出す、ということです。

つまり、力を奮い起こす様子そのものだけでなく、力を奮い起こした結果についても使えるのが「奮発」です。

躍進

「躍進(やくしん)」とは、体を起こして駆け進むような、スピーディーな成長や発展を意味します。

10年前までシェア最下位だったA社が、あそこまでの躍進を見せたのは、外部から来た一人の社員の発言がきっかけだったと聞いたことがある

今期は、この新商品で大いなる躍進を遂げたいと考えております

「躍進」は「邁進」に比べると、人よりも会社などの団体について使われることが多い言葉です。

「〇〇の大躍進」などのフレーズは、ニュースや新聞などでも良く使われていますが、そのほとんどはやはり団体に向けてのものです。

人について使えない言葉ではありませんが、元々が「それまで伏せていたものが起き上がって活躍する」という意味であるため、躍進の前の状態は「伏せている(ネガティブなイメージとなりやすい言葉)」ことが前提です。

そう考えると、人には躍進よりも「邁進」などの方が無難だと言えます。