いたします の意味と使い方・例文

いたします の意味と使い方・例文

「いたします」は、「する」の謙譲語「いたす」に丁寧語の「ます」が付いた形であり、一般的に相手への敬意を払って「〜します」、「〜させてもらいます」というニュアンスの表現になります。

漢字熟語が前に来て、「失礼いたします」、「拝見いたします」、「感謝いたします」という使われ方がもっとも多いように見受けられますが、熟語であるなしを問わず「御」(お、ご)を冠した言葉に付いて、「お供いたします」、「お出しいたします」、「ご連絡いたします」といった形の用例も一般的です。

また、「〜をする」、「〜がする」という言い方の謙譲表現として、「失礼をいたします」、「ご連絡をいたします」や、「笑い声がいたします」、「いい匂いがいたします」、という言い方もあります。

相手の行動には「なさる」「される」を使う

「いたします」という言葉は謙譲語なので、自分や自分の身内、自社の人間の行動をへりくだって相手に伝えるための言葉です。

そのため、相手の行動については「いたす」という言葉は使いません。

相手の行動については「なさる」という敬語を使います。「外出なさる」「出席なさる」「お食事をなさる」などとすることで、相手と相手の行動についての敬意を表すことができます。

この「いたす」と「なさる」は場合によってはとても間違いやすいので注意が必要です。

たとえば、相手へ質問を投げかける時に「大阪までは飛行機と新幹線のどちらにいたしますか?」としてしまいやすいのですが、正しくは「大阪までは飛行機と新幹線のどちらになさいますか?」です。

これは頭の中で「どちらにする?」と訳してしまうと「いたしますか」と間違った言葉を選んでしまいやすいでしょう。

または「される」という言葉を使うこともできます。「どちらにされますか?」などと使うことで「なさる」と同じ意味で目上の人への敬語として機能します。

「いたす」という言葉を「する」とだけ覚えずに、「いたす」=「自分がすること」とセットで覚えておけば、間違いを回避しやすくなります。

「致す」と「いたす」の違い

口頭であれば「イタス」と同じ発音をしますが、書面などで「致します」「いたします」と表記の仕方が異なる場合があります。

これは、ただの表記の違いではありません。言葉の働きによって漢字なのか平仮名なのかが変わります。

「致す」

言葉として動詞の働きをする場合は、漢字で「致す」と書きます。

「ひきおこす」「もたらす」「届くようにする」「全力で行う」「心を尽くす」などの意味で使われる「イタス」は全て漢字の「致す」です。

よく耳にする言葉だと「不徳の致すところ」でしょう。「自分の不徳がひきおこした、もたらした」という意味で「イタス」が使われています。

「致す」の例文

この度は私の不徳の致すところでございます。
致し方ないにせよ、それは許されないことです。

「いたす」

主に補助動詞として使われる「イタス」は平仮名で「いたす」と書きます。

この補助動詞としての働きは「する」という意味ですので、言葉を「する」に置き換えてみて、不自然でなければ「いたす」となるのです。

たとえば「すぐに手配をイタシマス」であれば、「イタシマス」の部分を「する」に変えても「すぐに手配する」となり、意味が通じます。

つまりこの場合の「イタス」は補助動詞としての「いたす」が正しい書き方ですので「すぐに手配をいたします」です。

いたしますの例文

ご迷惑をお掛けいたしましたが、来週月曜日から出社いたします。
ご面倒をお掛け致しまして恐縮ではございますが、何卒よろしくお願い致します。
お蔭様にて新社屋が無事竣工し、落成式を挙行致します。
かねて市報にてお知らせしました通り、4月1日より実施いたします。
お庭のすみから、あまい沈丁花のかおりが致します。

「いたす」と「させていただく」

自分の行動を表す言葉に「させていただく」というものもあります。意味は「致す」とほぼ同じです。

しかし、基本的には「させていただく」という言葉は「相手からの許可を得ていること」または「相手からの許可を必要とすること」に使います。

たとえば、「本日お休みをさせていただきます」などは「休みの許可」を上司からもらう必要があるので「させていただく」となります。

しかしその休みに旅行をするとしたとき「旅行をさせていただきます」とは言いません。休みの許可はもらわなくてはなりませんが、旅行にいく許可は必要ないからです。「旅行いたします」と使います。