【目上へ】「謹んで」と「慎んで」の使い分け・意味と例文

「謹んで」と「慎んで」の使い分け・意味と例文

「謹」と「慎」、その文字の由来はともかくとして、現代では二つの漢字の意味に違いはありません。

 

従って、「謹んで」と「慎んで」は、意味上ではまったく同じであり、両者の違いは言葉の使われ方という習慣上の違いです。

「謹慎」という言葉があるように、どちらも悪い意味で使われることがあります。しかし、「慎」が「身を慎む」・「慎み深い」という控え目なイメージで使われるのに対し、「謹」は「謹賀新年」・「謹啓」・「謹白」など華やかなシーンで使われることが多いようです。

謹んで・慎んでの例文

謹んで新年のお喜びを申し上げます。
謹んでお祝いの言葉を申し述べさせていただきます。
恩師である堀先生の退官のお言葉を、謹んで承りました。
慎みを忘れないよう、そのお辞(ことば)を心に刻みました。
どんなに偉くなっても、身を慎むことを忘れないでください。
その人の慎み深い慈愛のまなざしに、なぜか戸惑う一郎でした。

「謹んで」「慎んで」の違い

「つつしんで」という読みや意味は同じでも、「慎んで」と「慎んで」では使われる場面が変わってきます。

まず「謹んで」は、相手に対して使う言葉です。相手への敬意や感謝の気持ちを表す時に「謹んで」という言葉を使います。

この「謹んで」を自分に対して使うことはなく、相手への丁寧な挨拶の一つとして使われることが多いでしょう。

「謹む」は本来、「言葉をつつしむ」という意味が強く、相手を上に見て、自分は下という位置付けを表しています。

一方、「慎んで」という言葉は自分自身について使います。

「度を越さないようにつつましくする」という様子を表します。この「慎む」には「心からつつしむ」という意味が強く、出過ぎないように控えめにするということです。

「慎む」は「口を慎む」「身の程を慎む」など、自分という人間が過ぎた真似をしないようにする、というへりくだった気持ちを表す言葉となります。

よって、「相手に対しての敬意であれば「謹んで」を使い、自分を戒める意味で使う場合は「慎んで」を使うということです。

「謹んで」「慎んで」の使い方

「つつしんで」という言葉を使う時には、状況を正確に把握して、自分がどのような立ち位置で相手に何を伝えようとしているのか、ということを明確にしなければ、「謹む」「慎む」のどちらを使えば良いかの判断をすることができません。

相手への御礼やお詫び、お悔やみなどは「謹む」を使います。

「謹んで御礼申し上げます」「謹んでお詫び申し上げます」「謹んでお悔やみ申し上げます」など、相手への気遣いを「謹む」という言葉で表現をします。それ以外にも、相手から何かを頼まれた時に「謹んでお引き受けいたします」などとして、相手への敬意を表すこともできます。

自分への戒めとして使う場合には「慎む」という言葉を使います。

「口を慎むべきでした」「行動を慎む」「お酒を慎む」など、自分の言動については「慎む」を使いましょう。

また「慎む」は自分だけではなく、自分を含めた他の人の言動に対しても使うことができます。「公共のマナーを守って言動には慎みましょう」「勝手な行動は慎んでください」などとすれば、自分以外の人についても「慎む」という言葉が使えます。

さらに、「慎む」という意味のことを目上の人へ要求したい場合は「ご遠慮いただきますようお願い申し上げます」「おやめください」など、別の言葉を使って伝えるようにしましょう。「慎む」という言葉はあくまでも、自分や自分を含めた人に対しての言葉であって、目上の人へは使えません。