「脳裏」の意味と例文!「胸裏」との違いとは?

「脳裏」の意味と漢字

「脳裏」は日常や物語の中、ビジネスの場などでも見聞きする言葉です。しかし「脳の裏」と書く「脳裏」にどんな意味があるのか、具体的には知らないという人も多いかもしれません。

まずは「脳裏」の意味と漢字について解説します。

「脳裏」とは意識にある記憶の一部

「脳裏」は「のうり」と読みます。「脳裏」とは、「意識に浮かぶ記憶や考え方の一部分」のことです。

ふとした時に、彼女がの一言が脳裏によみがえる

脳裏にはあるのだけれど、どうしても詳しく思い出すことができない

すっかり忘れていたつもりだったが、土壇場になって教科書に書いてあったことが脳裏に浮かんだ

まるで脳の裏の方にあるような、脳のどこかにそんな記憶や考え方がある、というニュアンスで「脳裏」と表現します。

「脳裏」の漢字

「脳裏」にはもう一つの漢字表記があります。それは「脳裡」です。「裡」には「物の内側」という意味があります。

「脳裏」は脳の裏側、「脳裡」は脳の内側、という違いはありますが、どちらで書いても間違いではありません。

「脳裏」の使い方と例文

次に「脳裏」の使い方を例文と一緒に解説します。

脳裏によぎる・脳裏をよぎる

「脳裏によぎる」「脳裏をよぎる」という表現は、一瞬脳のどこかをその記憶が通り過ぎるような感覚のことです。

その曲を聴いたとき、私の過去の記憶が脳裏によぎった

脳裏をよぎるその言葉を、私はいつしか口に出してしまっていた

「脳裏によぎる・脳裏をよぎる」は、意識していない記憶や考え方が、ふと浮かんだ様子を表します。

しかし、「脳裏によぎる」と表す場合、その記憶や考え方はおぼろげで明確に意識として捉えれない、というニュアンスも含まれています。

脳裏を掠める

「脳裏を掠める(かすめる)」とは、脳内を過去の記憶や考え方が一瞬通り過ぎていくイメージです。

私の脳裏を掠めたのは、懐かしい人の声だった

それを見たとき、私は何かが脳裏を掠める感覚を得た

「掠める」には、人目をくらます・人目をごまかすという意味があります。この「掠める」を「脳裏」にあてると、まるで自分の目がくらまされたのかのように、一瞬だけ記憶がよみがえる、というニュアンスとなります。

脳裏によみがえる

「脳裏によみがえる」とは、すっかり忘れていた記憶がよみがえるという意味です。

その話をしている内に、昔の記憶が脳裏によみがえった

その場所に行くたびに脳裏によみがえるのは、あの時の彼の言動だった

「脳裏によみがえる」は、まるで脳の中で眠っていた記憶が目覚めるようなニュアンスを持つフレーズです。今まで忘れていたことをふいに思い出した時などに使われています。

脳裏に浮かぶ

「脳裏に浮かぶ」とは、まるでふと記憶が浮かび上がってその存在に気がつくようなイメージで使われる表現です。

私の脳裏に浮かんだのは、あまり良いとは言えない考えだった

脳裏に浮かんだ言葉をそのまま口にしたばかりに、彼女には不快な思いをさせたかもしれない

「脳裏に浮かぶ」は、頭の中のどことはわからない部分に、ふと出てきたものを指します。ひらめきや思いつき、というニュアンスで覚えておくと良いでしょう。

脳裏にある

「脳裏にある」とは、記憶の中のどこかにあるはずの記憶、というイメージで使う言葉です。

あの時聞いた言葉は、脳裏にあるはずだけど、どうしてもはっきりと思い出せない

脳裏にあるのは、あの瞬間母親から言われたあの言葉だった

「脳裏にある」は、「ある」と言い切っているところがポイントです。あるはず、あるだろう、ではなく「ある」ということはわかっていて、その詳細については思い出せない、という様子が「脳裏にある」です。

しかし、ある程度思い出せているが、その記憶がおぼろげであったり、一部しか思い起こせない、という場合も「脳裏にある」と表現できます。

脳裏をよぎる

「脳裏をよぎる」とは、脳の中をその記憶が通り過ぎるようなイメージです。「脳裏を掠める」と似た感覚でしょう。

私の脳裏をよぎったのは、あの時の二人の会話でした

その時、課長の脳裏をよぎったのは例の件だったはずだ

「脳裏をよぎる」は、脳の中をその記憶が通り過ぎてしまうかのような断片的な記憶のことを指します。常に明確に記憶しているのではなく、何となく記憶に残っていた、というニュアンスで使うのが「脳裏をよぎる」です。

「脳裏」の類語

次に、「脳裏」と似た意味を持つ類義語について解説します。

「念頭」

「念頭(ねんとう)」とは、人の心の内側のことです。

この件は皆さんの協力が必要です、そのことを全員が念頭においてください

私は念頭にある思いを、ついに彼に打ち明けてしまった

「念頭」とは、心の中の片隅を指しています。「念頭におく」というフレーズで使われることが多く、この場合は「気持ちの中に、片隅でも良いので留めておく」という意味です。

胸裏

「胸裏(きょうり)」とは、胸の内という意味です。「胸裡」とも書きます。

父の遺言を胸裏において、私は日々を過ごしていくことにした

胸裏にあるのは、私を思って心配してくれている友人の言葉だ

「胸裏」は、「脳裏」と言葉が似ているだけでなく、その意味も同じです。その記憶があるのが、脳か胸の中かという違いにすぎません。

言葉のイメージとしては、「胸裏」は感情に近い記憶、「脳裏」は論理や見聞きした現実に近い記憶、と考えると言葉の判別がつきやすいかもしれません。