「享受」の意味と使い方!類語と対義語の例文も解説

意味と読み方

ビジネスシーンや文章の中で「享受」という言葉を見聞きすることがあります。「享受」は文字だけでは意味の把握が難しく、読み方にも迷いやすいのではないでしょうか。

以下では「享受」の意味と読み方について解説します。

享受とは受け取って自分を豊かにすること

まず、「享受」の読み方は「きょうじゅ」です。アクセントは頭の「きょう」の部分で、同じ読みの「教授」とは異なるイントネーションです。

「享受」の意味は「そのものの持つ良さを味わったり受け入れたりして自分の精神や生活を豊かにすること」です。

物や経験、体験や教えによって自分が得たもので、自分の精神的な部分を豊かにすることを「享受」と言います。

佐藤部長そばで働いている私は、仕事のノウハウや多角的な思考など、さまざまなものを享受していると思う

この地域は病院や学校、スーパーや大きな公園などが集中しているため、生活や子育てに必要な環境を享受できます

その権利を享受するのは、税金を支払っている国民として当然のことだと

「享受」の対象となるものに縛りはありません。その人が何かしらのメリットを得ていると感じていれば、それは「享受」しているものです。

享受の使い方と例文

次に、「享受」の使い方を例文と一緒に解説します。

目上から何かの利を受け取る場面

自分より目上の人から、何かしらのメリットを受け取った場面で「享受」が使えます。

今回のOB訪問では、先輩方から社会人に必要な考えや学び方を享受しました

私が佐藤部長から享受したものはたくさんあります

父からは多額の遺産を享受しました

「ご享受ください」は誤り

「享受」は、目上の人から立場が下の人に対して行います。

そのため目上の人に対して「ご享受ください」という言い方はしません。「~してください」は、目下の人に対して使うためです。

目下の人が、目上の人に対して何かを提供する場合は「享受」という言葉自体を使いません。「ご提供します」「ご利用ください」「お納めください」など、目上の人に提供するものに適した表現を使います。

「享受」の類語と対義語

以下では「享受」の言い換えに使える類語と、反対の意味を持つ反対語について解説します。

「享受」の言い換えに使える類語

「享受」が意味する「目上から何かを得て、自分を豊かにする」を他の言葉で表す場合、以下の3つの言葉が使えます。

「恩恵」は幸福感を受け取る

「恩恵(おんけい)」とは、自然や他人から、自分を豊かにし幸福をもたらす物事や行為を受けることです。

私は自給自足の生活をしています、毎日食べる野菜や米はまさに自然からの恩恵と言って良いでしょう

彼は前会長に大変かわいがられ、さまざまな恩恵を受けたそうだ、その結果が敏腕経営者として知られる彼なのだろう

「恩恵」が表す「受け取るもの」は、形のある物だけではなく、形のない感動や知識、教えなども含まれます。いずれにしても、受取った人が「受け取れてよかった、幸せだ」と感じるものです。

ただし「恩恵」も享受と同じで、誰かによって(または自然や環境などの何かによって)与えられたことが前提です。自分自身の力だけで生み出したものによって幸福を得た場合は、恩恵は使いません。

「謳歌」は状況を楽しむ

「謳歌(おうか)」とは、自分が置かれた状況に十分に満足して楽しむことです。自分が今いる場所や、環境によって、自分がより一層幸せを感じることを「謳歌」と言います。

彼はこれまでの功績が認められて、希望するアメリカ支社へと転勤した、今頃海外生活を謳歌していることだろう

私の目標は、自分の人生をどんなときも謳歌し続けることです、どんなピンチも必ずチャンスに変えるんだ、という強い気持ちを持っています

「謳歌」は、享受に比べてさらにポジティブな印象が強い言葉です。「享受」は目上からありがたく受け取る、というニュアンスですが、「謳歌」はその環境や状況を自分から積極的に楽しむようなイメージが強くなります。

「甘受」は仕方なく受け取る

「甘受(かんじゅ)」とは、やむを得ないものとして、文句を言わずに受け取ることです。享受や恩恵と違い、甘受が示す受け取るものとは、主に形のないものです。

私は彼の苦しい嘘の言い訳を甘受せざるを得なかった

お客様からのご意見の中には耳が痛いものも多くありますが、今後の参考にするためひたすら甘受しております

「甘受」は、簡単に言えば「我慢して受け取ること」です。何かしら思うところがありながらも、仕方なくそれを受け入れる様子を表します。

「享受」の反対語

次に、「享受」とは反対の意味を持つ対義語について解説します。

「提供」は与えること

「提供(ていきょう)」とは、自分が持っているものを、他の利用にあてることです。

今回の資料は、A社の佐藤様よりご提供いただきました

今回の祭りでは、私から町内会へお弁当300個を提供する予定です

「提供」は、享受と反対で「与えること」です。自分が他人へ何かを与える、もしくはある人がある人へ何かを与えることを「提供」と言います。

「提供」を敬語表現にする場合は、「ご提供」です。目上の人や敬語を使わなければならない相手が、何かを与える場面では「ご提供」、もしくは「提供くださった(くださる)」と表現します。

「供与」は相手が望むものを与える

「供与(きょうよ)」とは、相手が欲しいと思う物品や利益を与える行為です。

今回の違法な利益供与によって、A社は窮地に追い込まれるだろう

今回だけは仕方なく、佐藤君の便宜供与に応えようと思っている

「供与」は、日常的な会話で頻繁に使われるというよりも、「利益供与(利益を求められて与える)」や「便宜供与(事が上手く運ぶように力を貸してほしいと求められて与える)」という熟語で使われる言葉です。

しかし、享受とは反対の「与えるという行為」と言葉の意味を把握しておけば、日常でも問題なく使うことができます。

「享受」の英語表現

最後に、「享受」の英語表現について解説します。

享受は「enjoy」

日本語の「享受」を英語にすると「enjoy」です。「enjoy」は「楽しむ」という意味です。享受の持つ「受け取って幸せを感じる」という意味の、その先にあるものが「楽しむ」という行為であることから「enjoy」を使って表せます。

They enjoy the fruit of their labor.(彼らは努力をして、その成果を享受した)

I will enjoy the beauty of nature.(私は自然の美しさを享受する)