「存じます」の正しい意味と使い方・例文

「存じます」の意味は2つ

ビジネスの場や日常で頻繁に耳にする言葉に「存じます」があります。この「存じます」は、社会人にとって非常に重要な言葉です。

まずは、「存じます」の2つ意味について解説します。

① 存じますとは「思います」

ひとつ目の「存じます」は、別の言い方にすれば「思います」です。「私は〇〇と思います」などの「思います」を、謙譲語にすると「存じます」になります。

私は田中さんの案で問題はないと存じます

この度はお力添えをいただき、誠にありがたく存じます

例文の「存じます」の部分は、そのまま「思います」に変換できます。自分はこう思っている、ということを目上の人やお客様へへりくだって伝える言葉が「存じます」です。

ちなみに、謙譲語とは敬語の一種で、相手への敬意を示すために自分の動作・状態などをへりくだって表現する言葉です。

従って、「存じます」は、目上の人やお客様など敬意を払うべき人に対して使う言葉です。

② 存じておりますとは「知っている」

「存じます」と似た言葉に「存じております」があります。この「存じております」は、そのことを「知っています」という意味です。「ており」が付くだけですが、別の意味となるので注意しましょう。

はい、その件でしたら弊社課長の田中より聞いており、私も存じております

私は、御社の佐藤様のことを学生時代より存じております

例文の「存じております」は、どれも「知っています」に言い換えることができます。自分がその事(その人)を知っている、と目上の人やお客様へ伝えたい場合に使うのが「存じております」です。

「存じ上げております」はさらに丁寧な表現

「知っている」という意味での言葉に、もう一つ「存じて上げております」があります。「存じ上げております」とは、「存じております」よりもさらに丁寧な謙譲語表現です。

はい、その件でしたら弊社課長の田中より聞いており、私も存じ上げております

私は、御社の佐藤様のことを学生時代よい存じ上げております

この「上げる」には、相手に対してさらにへりくだり、「存じる」という言葉を相手に差し出すイメージがあります。

「存じております」と「存じ上げております」のどちらを使うかは、相手のとの関係性や、その対象となっている事柄や人物によります。

どちらを使うか迷った場合は、より丁寧な「存じ上げております」を使った方が良いでしょう。ただし、世間話の中などで比較的ライトな話題で「存じ上げております」を使うと、やや仰々しい印象もありますので注意しましょう。

存じます(思います)の例文

私もそのように存じます。
お食事をお出ししたいと存じますが、よろしいでしょうか。

 

存じる(知っているの意)の例文

このことはご存じですか。
はい、存じています。 or 存じております
いいえ、私は存じません。
ご存じのように、日本は地震国です。

「存じます」の使い方と注意点

「存じます」はビジネスシーンだけでなく、日常でも頻繁に使われます。

以下では、「存じます」の使い方と、使う際の注意点について解説します。

「存じます」は目上の人に使う

「存じます」という言葉は「思う」「考える」「知る」「覚える」の謙譲語であるため、主に目上の人へ使います。

「存じます」と言えば「そう思います」「そのように考えています」という意味です。「存じております」と言えば「そのことを知っています」「そのように覚えています」という意味になります。

また、目上の人へさらに丁寧な言葉で応えたいのであれば、相手を敬う意味で使われる「上げる」と付けると良いでしょう。「存知上げております」「存知上げます」と答えることでさらに丁寧な印象が強くなります。

自分に対してしか使わない言葉

「存じます」「存じております」は謙譲語であり、基本的には自分に対してしか使わない言葉です。

自分の身内や部下などのことについて「思う」「考える」の意味で、第三者へ「本人はそう思っている」ということを伝えたい時には「本人は○○と申しております」と表します。

一方「知っている」「覚えている」という意味で、自分の身内や部下のことを第三者に伝えたい場合は「田中は○○であることを存じております」と表します。

さらに、相手方へ「思う」「考える」の意味で「○○についてどう思いますか?」と聞きたいのであれば「○○については、どのようにお考えですか?」と伝えれば、失礼が無くスマートに質問をすることができます。

「知る」「覚える」の意味で「○○を知っていますか?」と聞きたい場合は「○○をご存じですか?」と「存じる」に「ご」をつけた「ご存じ」という尊敬語に変わります。

「存じます」は多用しないこと

「存じます」は、人が会話の中で良く使う「思います」を意味します。そのため、意識せずに使っているとどうしても多用してしまいがちです。

しかし「存じます」を多用すると、回りくどい印象となりやすく、かしこまりすぎて違和感を覚えるという人もいるます。

「存じます」は発言の締めに使う程度と考えておきましょう。

それ以外の部分では、「~と思いますので」「~と考えておりますので」など、別の言葉を使うと自然な会話になります。

メールの最後で使われる「存じます」

取引先や上司へ宛てたメールの最後などでも、「存じます」はよく使われています。

お忙しいとは存じますが、掲題の件についてのご回答をいただけますと幸いです

お急ぎのところご迷惑かと存じますが、何卒ご対応のほどお願い申し上げます

通常の言葉に言い換えれば「忙しいとは思いますが」「迷惑かと思いますが」となります。

これは、ビジネスメールの文末でよく使われる表現で、相手に対しての気遣いの一文です。実際に相手の状況が磯がしいかわからない場合であっても、一方的なメールにならないよう配慮する文章として使われています。

「存じますので」の後には提案が来る

「存じます」は「思います」という意味です。そのため、提案や交渉の場面でもよく使われます。

この価格ではご納得いただけないと存じますので、本日は見直したお見積りをご用意いたしました

先方には私のお詫びだけではご容赦いただけないと存じますので、大変申し訳ございませんが部長もご同行願えませんでしょうか

どちらの例文でも、「存じますので」の後に相手に新たな提案やお願いが来ています。

「ので」は、直前までの言葉を翻す接続詞です。そのため、「~と思うから〇〇した(したい)」という文章になっています。

そのため、後に提案や交渉が来ない場面で「存じますので」を使うと不自然です。後に何もない場合に「存じますので」を使うと、相手は後に何か続くのだろう、と考えます。

「存じます」の言い換えに使える類語

「存じます」は慣れると使いやすく、目上の人との会話でつい多用してしまいがちです。

以下では「存じます」の言い換えに使える言葉をご紹介します。

「~と考えます・~と考えております」

「思う」「考える」という意味での「存じます」は「〜と考えております」と言い換える事ができます。

この件については、これまで通り田中君に一任して良いのではないかと考えております

私は本年度の実績について、特に問題はないと考えます

「存じます」は「思う」ですが、この「考える・考えている」は「思う」と同じ意味として使われます。「自分はこう考えている=自分はこう思っている」という意味で「存じます」と同義です。

「存じます」と同じように、「考えます」の後に「なぜなら~」と続けることでそう考える理由を述べる際にも使えます。

「~と心得ております」

「存じます」が「思う」であるに対して、「~と心得ております」は「~と認識しています」という意味です。

この件については、担当の田中より報告を受けており、万事順調と心得ておりますが違うのでしょうか

私はこのプロジェクトが、大げさでなく社運を握っていると心得ております

 

「思う」を表す「存じます」よりも、そのことについて把握しているというニュアンスが強くなります。そのため、物事の確認の場面や、お互いの意思の確認の場面などでよく使われる言葉です。

「存じ上げます」

「存じ上げます」とは「存じます(思います)」を丁寧にした言葉です。この「存じ上げます」は「人」についてしか使いません。

あの方は確か、A社の田中会長かと存じ上げます

その電話に出られたのは、社長のお嬢様であったかと存じ上げます

「存じ上げます」は「存じます」と置き換えても間違いではありませんし、一般的には相手が目上の人であっても「存じます(存じております)」とすることが多いです。

「存じ上げます」は、謙譲語である「存じる」に、丁寧語の「上げます」がついている分、非常に丁寧な表現として受け取られます。大げさな使い方にならないよう注意が必要です。

知っている、わかっている、と言いたいなら「存じております」が一般的です。この「存じております」をより丁寧にしたい場合は「存じ上げております」となります。