答辞の意味とコツ・注意点と例文

「答辞」の意味

まずは「答辞」の意味について解説します。

答辞とは祝辞や送辞への答礼

「答辞(とうじ)」とは、卒業式や入学式・入社式などのお祝いの場で贈られた「祝辞(お祝いの言葉)」や「送辞(送り出す言葉)」に対するお礼の言葉です。

今年の入社式で答辞を読むのは、田中君に決まっているようだ

卒業式の答辞を任せてもらえるなんて、とても光栄です

「答辞」は、祝辞や送辞に対して述べられるものなので、お礼や感謝の気持ちが主な内容となります。

その他にも、これまでの印象的な思い出や、これからの学校生活・社会人生活に対する希望や熱意が述べられることも多いようです。

答辞は「述べる」で表現

「答辞」は言葉で発するものですが、「答辞を言う」とは言いません。「答辞」は「述べる」で表現します。

答辞を述べるからには、代表者として恥ずかしくない堂々とした態度で臨みたい

卒業生を代表して答辞を述べるなんて、緊張してしまいます

答辞は、紙に書いたものを読む人も多く、そういう意味では「答辞を読む」とも言えます。

しかし、「答辞」という言葉自体には「読む」というニュアンスが含まれていませんので、やはり「述べる」の方が自然です。

答辞のコツ

次に、答辞の内容について解説します。答辞を述べるときに、どんなことに注意すれば良いか知っておきましょう。

時候の挨拶

まず、答辞は時候の挨拶から始まります。

やわらかな日差しがそそぐこの頃、春の訪れを感じます

新緑の候となり、美し緑が眩しい季節となりました

時候の挨拶は、特に決まっているものではありません。その時の気候や天気をポジティブな言葉にするよう意識しましょう。

式典開催のお礼を伝える

次に、式典を開いてもらったことへのお礼を伝えます。

本日は、私たちのために素晴らしい卒業式を挙行してくださり、誠にありがとうございます

この良き日に、私たちのためにこのような式を挙行してくださり、心より感謝申し上げます

この、式典開催のお礼では「挙行(きょこう)」という言葉を使うのが一般的です。

「挙行」とは式典の中でも、卒業式や入学式・入社式を開催することを指します。

先生や来賓社・親への感謝を伝える

次に、当日の出席者へ、出席してくれたことへの感謝も伝えます。

先生方をはじめ、ご来賓、ご父兄の皆様に御臨席いただく中で、卒業できることを卒業生一同を代表し厚く御礼申し上げます

本日、ご多用の中、私たちのためにご臨席くださいました皆さまへ心より感謝申し上げます

「御臨席(ごりんせき)」とは、式典などに参加することを表す尊敬語です。似た意味を持つ「御列席(ごれっせき)」でも良いですが、「御臨席」の方が、より格式のある敬語として知られています。

もともと「御臨席」は天皇陛下など、かなり上位の人にしか使われない言葉でしたが、近年では一般的にも使われています。

指導への感謝やこれまでの思い出など

次に、これまでの学生生活を振り返って、指導してくれた人々へのお礼を伝えます。併せて、これまでの思い出などを伝えても良いでしょう。

思い起こせば○年前、期待と不安に胸を膨らませて入学した私たちは、先生方から多くの指導をいただきました

野球部の甲子園出場は記憶に新しく、野球部員のみならず、全校生徒一丸となって応援したのは素晴らしい思い出です

この部分では、その場にいる全員が「そんなことがあったな」と思い起こせる内容でなければ意味がありません。そのため、個人的な思い出や、一部の人しか知らない内容は避けるようにしましょう。

今後の学校生活・人生への決意を表す

次に、これから始まる学校生活や社会人生活への決意を表します。

先生方や同級生との別れは辛くもありますが、○○学校の卒業生として恥ずかしくない未来へ向けて、精一杯羽ばたきます

○○学校での教えを胸に、これからの人生を切り開いて参ります

この部分は、少し抽象的な表現が含まれていても問題ありません。

今後の決意を、答辞の中で具体的に述べるのは難しく、また代表者として述べるという立ち位置から、総合的な決意となるためです。

今後の指導についてのお願い

締めの前には、これからも引き続き指導をして欲しいという思いを言葉にします。

卒業後も変らぬご指導を賜りますよう、何卒お願い申し上げます

これから○○株式会社の社員として、恥ずかしくないよう精進いたします、どうかご指導のほどよろしくお願いいたします

この、今後の指導については、指導をして欲しいという気持ちの他に「卒業をしてもこれで付き合いが終わりというわけではない」ということを伝えたい部分です。そのため、実際に指導してもらうかどうかまでを考える必要はありません。

締めの言葉

最後は締めの言葉です。締めの言葉では、送り出してくれるの今後の繁栄を祈ります。

○○学校が、これからも素晴らしい歴史を刻んでいかれることをお祈りして、答辞とさせていただきます 令和○年○月○日 卒業生代表 田中一郎

○○株式会社が、ますます発展されることを祈り、新入社員の答辞とさせていただきます 令和○年○月○日 新入社員代表 田中一郎

締めの言葉では、その学校や団体の発展・繁栄を祈るのが通常です。

最後は「~の答辞とさせていただきます」の後に、和暦での日付と自分のフルネームを述べます。

答辞の注意点

次に、答辞を述べる際の注意点について解説します。

長い答辞は伝えたいことが伝わりにくい

まず、答辞は長すぎないように注意しましょう。短すぎると答辞として物足りなくなりますが、長すぎても伝えたいことが伝わりにくくなります。

答辞を述べる時間は、3分ほどが良いとされています。

3分を超えると、急に長く感じやすくなるため、あらかじめ分数を計測しながら調整した方が良いでしょう。

一度書き出して読んでみる

答辞は、事前に紙に書き出して構成します。ぶっつけ本番で述べると、まとまりがなくなりますし、時間も長くなりがちです。一度紙に書いた答辞を読んでみて、言葉遣いや表現を修正していくと良い文章になります。

ユニークな表現は控えめにする

答辞は式典へのお礼や、これまでの感謝、これからの決意などを述べる大切なものです。そのため、基本的には堅めの内容となります。

ユニークな表現を使ってはいけない、と決まっているわけではありませんが、内容によっては場違いな答辞となる可能性もあるため、誰が聞いても不快でない内容を目指しましょう。

高校卒業式の答辞のサンプル例文

肌寒い風が吹きつつも、暖かい日差しが私たちを照らす、今日。私たち卒業生のために晴れやかな卒業式を挙行していただき、心より感謝申し上げます。

また、先生方をはじめ、ご来賓、ご父兄の皆様に御臨席いただく中で、卒業できることを卒業生一同を代表し厚く御礼申し上げます。

思い起こせば3年前、期待と不安に胸を膨らませて入学した私たちは、先生方から多くの指導をいただきました。

~中略(在学中の思い出や、世間的に大きな出来事などを述べる)~

先生方や同級生との別れは辛くもありますが、○○学校の卒業生として恥ずかしくない未来へ向けて、精一杯羽ばたきます。どうかこれからも、変らぬご指導を賜りますよう、何卒お願い申し上げます。

最後になりましたが、○○学校が、これからも素晴らしい歴史を刻んでいかれることをお祈りして、答辞とさせていただきます。

令和○年○月○日 卒業生代表 田中一郎