目次
人権作文の例文と書き方
「人権作文を書く」というと、とても難しく感じるかもしれません。しかし難しく考える必要はありません。
まずは、日常生活の中で感じた「人として考えさせられる」という部分に、フォーカスをします。
そして、その「人として考えさせられる部分」が、5つある基本的人権の中のどれに反していると感じるか、を文章にします。これが「人権作文」です。
5つの基本的人権
日本国憲法では、人の自由や権利を守るために、5つの「基本的人権」を保障しています。人権とは、人が当たり前に享受できる人としての権利のことです。
自由権(じゆうけん)
- 自由な思想、自由な良心を持って良い
- 好きな宗教を信仰して良い、宗教を信仰しなくても良い
- 勉強する自由
- 奴隷とならない自由
- 団体を作る、集会を行う自由
- 思想や意見を発表する自由
- 住む場所や引越しを決める自由
- 職業を選ぶ自由
- 国外に移住する自由
平等権(びょうどうけん)
- 人種や職業などに関係なく法律が適用される
- 性別や社会的身分によらず法律が適用される
- 家柄によって差別されなず法律が適用される
社会権(しゃかいけん)
- 最低限の生活を国が保障する
- 教育を受けられることを国が保障する
- 働く機会を得ることを国が保障する
- 労働組合などで団体交渉することを国が保障する
参政権(さんせいけん)
- 選挙に立候補するできる
- 最高裁判所の裁判官を審査できる
- 憲法改正の投票に参加できる
- 条例の廃止や知事・市町村長の辞職を要求できる
国務請求権(こくむせいきゅうけん)
- 権利の保障を求めることができる
- 裁判を開いてくれるように求めることができる
- 国や地方公共団体に損害賠償を求めることができる
人権作文のテーマ
5つの基本的人権を理解したら、次に「自分がどの基本的人権についての人権作文を書くか」を決めます。
先に解説した5つの基本的人権に関係していれば、どれでも問題ありません。しかし、人権作文で取り扱いやすいテーマは以下の2つです。
自由権:考えや表現の人権
自分や他人がそれぞれ個人で考えることや、表現することも「人権」です。
「個人の考え方を否定されたことについて書く人権作文」や「話したり、歌ったり、踊ったりという表現を侵害されたことにつちえ書く人権作文」などを書くことができます。
平等権:平等であることの人権
誰もが、その生まれや生活環境、国籍・人種などによって差別されないことも「人権」です。
「出身地を理由に差別をされたことについて書く人権作文」「貧困を理由に差別されたことについて書く人権作文」などを書くことができます。
人権作文の目的
人権作文は、読んだ人に「共感をしてもらうこと」を目的に書きます。これは、書き手と読み手が共鳴することで、人権を守る環境を整えて行くことが人権作文の目的だからです。
読み手に共感をしてもらうためには、人権侵害についての背景説明や、人物についての説明、周囲の反応や環境などについても触れなければなりません。
人権作文の書き方
人権作文の書き方は決まっていません。作文なので書く人の考え方や感覚によって内容が変わります。
しかし、思ったまま、感じたままに人権作文を書くと、読み手が読みにくく、共感がしにくい文章になることもあります。人権作文の大まかな構成を知っておくとまとまりのある文章にすることができます。
体験談を書く
人権作文は基本的には体験談を書きます。これは人権侵害を受けた本人であればもちろんですが、その周囲で事の成り行きを見ていた人にとっての体験談でも構いません。
最初に「私は学生の頃、人権侵害を目の当たりにしました」など、自分視点からの書き方でも良いですし、「私のクラスには○○出身の生徒がいました」など、人権侵害を受けた本人に成り代わった書き方でも良いでしょう。
自分がどう感じたか
人権作文は「共感をしてもらう」ということを目的に書きます。そのため「自分がどう感じたか」という部分は非常に重要です。
「私はそんな彼女のことを少し差別した目で見ていたのかもしれません」「周囲が彼を差別しているという現実が、私に人権侵害の恐ろしさを教えてくれました」など、自分の気持ちに正直な感想の方が、読み手は共感しやすくなります。
体験に基づく提言
体験を書いた後は、その体験によって自分が考え、周囲の人や社会に提言したいことを書きます。
「私はこの体験から、人種差別の醜さを知りました。どこの国の人であっても同じ人間です。国が違うからという理由で差別をするような国で、これから新しいものが生み出されるとは思えません」など、その人権侵害によっての弊害を提言とするのも良いでしょう。
人権作文を書くときの注意点
人権作文は基本的には自由に、思うように書いて良いものです。しかし、いくつか注意しておきたいポイントもあります。
人権を侵害しない表現を心がける
人権作文を書くときは、その作文自体が人権を侵害しないように注意しましょう。
たとえば「家庭が裕福ではないAさんが差別されるべきではありません。差別されるべきはAさんを差別していた〇〇さんです」などがその例です。
良いことばかり書かなくても良い
人権作文は、特に良いことばかりを書かなくてはならないものではありません。これは自分の行いについても同様です。
差別を受けている人に共感できなかった自分、差別をしている人と一緒になってその人の人権を侵害した自分、など過去の自分の過ちに触れることで、読み手も自分の過去に心当たりを見つけて共感できることがあります。
【人権作文の例文①・書き出し部分】
二年生の六月のある朝、転校生の女の子が私のクラスにやってきました。
教室の前に立って先生から紹介されたとき、彼女の服はなんとなく古めかしい濃紺のセーラー服、それも冬用です。私たちの制服は、グレーのブレザーとタータンチェックのスカート。それに、6月は夏服なので、ブレザーなしでベストかワイシャツ姿でした。
私も含めてクラスの女子は皆、彼女の服装が気になっていました。どうして、この学校の制服に変えないの? と不思議に思っていましたが、それをたずねる前に、彼女が説明してくれました。
彼女はお父さんと二人暮らし。お父さんの仕事は、………
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【人権作文の例文②・書き出し部分】
帰国子女というと、親の仕事の関係で海外で育ち、英語ができて、外国人の友達もいて、かっこいいというイメージがあります。テレビやマスコミで活躍している人も多いみたいです。
私のクラスの女子にも、帰国子女と皆から呼ばれていた人が一人いました。でも、彼女が育ったのはアメリカでもヨーロッパでもありません。親は、外交官でも、海外で仕事する大企業のエリートでもありません。彼女は中国帰国者の子供で、母親が戦争で中国に残された日本人の子、父親は中国人で、………
【人権作文の例文③・書き出し部分】
タイトル「パワハラによる人権侵害」
昨今、テレビやインターネットでも話題の「パワハラ」によってさまざまな形で人権を侵害されている人が多くなっています。
私が以前働いていた会社でも、パワハラによる人権侵害が行われていました。
その男性社員は、取引先から過剰なパワハラを受けており、心身ともに疲弊をしていました。しかし彼は会社のためになるのなら、と耐えながら勤務を続けていたのです。
しかし、ある時その男性社員が退職を申し出ました。理由は自身のスキルアップを目的としたもので、上司も快く送り出すと受け入れました。
ところが、後任への引継ぎ挨拶の場で、取引先担当者より「おまえのような者が他の会社で勤まるわけがない、退職なんて私が認めない」と言い出したのです。
取引先担当者は男性の職場へ赴き、その男性社員を退職させるのであれば今後一切の取引をしないとまで言い出しました。
これはパワハラという形をした、その男性社員が持つ「職業選択の自由」を侵した人権侵害だと私は考えています。
なぜなら‥‥