間違いやすい「はにかむ」の意味と使い方・類語と例文

「はにかむ」の3つの意味と使い方

「はにかむ」は、人の様子や態度を表す言葉です。何となく「控えめに微笑む様子」を「はにかむ」と思っている人は多いのではないでしょうか。

以下では「はにかむ」が持つ3つの正しい意味について解説します。

意味① 「はにかむ」とはうつむいて恥ずかしそうにする様

「はにかむ」とは、辞書によると「若い女性や子供が他人を意識し過ぎて、うつむき恥ずかしそうにする様」のことです。

・新入社員の女性は、自己紹介のときにはにかむ様子が印象に残っている

・友人の子供に会ったが、はにかんで親の後ろに隠れてしまった

・彼はまるで子供のようにはにかんでしまい、その様がかわいらしくみんな微笑ましく見守っていた

「はにかむ」は、若い女性や子供が恥ずかしそうにする様子を指していますが、日常では男性や年配の方が恥ずかしそうにする様も「はにかむ」で表すことがあります。

その人が若い女性や子供でない場合、「はにかむ」の本来の意味とは異なることにはなりますが、一般的には特に誤用と捉えられることはないでしょう。

「はにかむ」を微笑むとするのは誤用

「はにかむ」の意味を「微笑む」と解釈するのは誤用です。「はにかむ」の意味に、微笑むという要素は含まれていません

しかし、はにかんだ結果控えめに微笑むという状況は起こり得ます。その場合は「はにかんだように微笑む」「はにかんだ後微笑んだ」など、「はにかむ」と「微笑む」を別のものとした上で一緒に使うと良いかもしれません。

意味② 歯をむき出す

「はにかむ」には、意味①以外にも意味があります。その一つが「歯をむき出す」です。人間や動物が、意識的に歯をむき出す様子も「はにかむ」と表現します。

その子は、こちらをはにかみながら振り向いた、良く見てみると口の中をケガしているようだった

犬がはにかむと、威嚇をしているということだから気をつけた方が良い

この意味の「はにかむ」は、日常ではほとんど使われません。そのため、歯をむき出しにする意味であれば、「はにかむ」よりも「歯をむき出す」と、ストレートに表現した方が、誤解を避けられるでしょう。

意味③ ふぞろいな歯並び

3つ目は、人間の歯が「ふぞろいに生えている」という意味です。ふぞろいの中でも、特に歯が重なって生えている様子を「はにかむ」と言います。

私の歯ははにかんでいるので、歯医者では矯正を勧められています

彼ははにかんだ歯が特徴的で、印象に残りやすいのかもしれない

この意味での「はにかむ」も、意味②と同様にほぼ使われません。「はにかむ」の意味は意味①で使われることが主であるためです。

しかし、古い小説などの中には、たまにこの意味での「はにかむ」が出てきます。こういう意味もあるのだな、と留めておくと良いでしょう。

 

「はにかむ」の語源と漢字

以下では「はにかむ」の語源と、漢字について解説します。

「はにかむ」の語源は歯が不揃いに生える様子

「はにかむ」とは、もともと「歯が不揃いに生える様子」を意味していました。そして、歯が不揃いに生える様子が転じて「歯を剥き出しにする」という意味になったそうです。

さらに、歯を剥き出しにするという行為が、恥ずかしそうに笑っている様子に見えることから、今の「はにかむ」に変化したと言われています。

つまりは「照れくさそうに歯を剥き出しにしている様子」が、「うつむいて恥ずかしそうにする様子」と解釈され「はにかむ」となったようです。

「はにかむ」には漢字がない

「はにかむ」には漢字がありません。「はにかむ」はひらがなで「はにかむ」と書きます。

しかし、あて字としてであれば「含羞む」「恥かむ」などがあります。どちらも正式な「はにかむ」の漢字表記ではありませんが、漢字の意味や言葉のイメージから「はにかむ」と読むこともあるようです。

正式な文書や目上の人への手紙などには、あて字ではない「はにかむ」を使った方が良いでしょう。

「はにかむ」の言い換えに使える類語表現と例文

以下では「はにかむ」の言い換えに使える類語と、その例文について解説します。

照れる

「照れる」は、普段の会話でも頻繁に使われる言葉です。「照れる」とは、自分の事が話題になり、内心嬉しく思うと同時に注目を浴びすぎることで気が引ける様子のことです。

・みんなに褒められると照れるからやめてよ

・彼はみんなにもてはやされて、終始照れていた

・会議で、最近の私の働きが良いと話題になったそうで照れる

「照れる」は、「はにかむ」よりも直接的な表現です。「照れる」のポイントは「内心嬉しく思うと同時に」という部分です。いくら自分のことが話題になっていたとしても、その内容が嬉しくないものであれば照れることはありません。

褒められたり、もてはやされたりすることが「照れる」の前提条件となることに注意しておきましょう。

恥じらう

「恥じらう(はじらう)」とは、人見知りをしてはにかむ様子です。まだ大人に慣れていない子供や、人に慣れていない人が相手の目を気にして恥ずかしがる様子を表します。

・親戚の子供が久しぶりに会ういとこに恥じらう姿は微笑ましい

・彼はいい大人なのだけれど、とにかく人見知りで取引先の人と会っても恥じらってばかりだ

・私は子供ころは恥じらってばかりでしたが、大人になると誰とでもすぐに打ち解けられる性格に変わりました

「恥じらう」には、子供が慣れない大人を前にもじもじとする様子が含まれています。そのため、本来であれば子供について使われる言葉ですが、まるで大人に慣れない子供のようにもじもじと振る舞う大人にも使われるのが一般的です。

ただし、大人に「恥じらう」を使う場合は、少なくともその様子を揶揄する印象がありますので、目上の人の行動などには使わない方が良いでしょう。

花恥ずかしい

最後は「花恥ずかしい(はなはずかしい)」です。「花恥ずかしい」とは、若い女性の初々しい美しさを表します。

・姪は今年中学校に入学した、新しい制服を着て登校する様子は何とも花恥ずかしい

・成人したばかりの娘は、親の私が言うのもおかしいかもしれないが花恥ずかしく、まぶしいほどだ

「花恥ずかしい」には、美しい花さえも恥じらってしまうような、誰の目に見ても美しい様子という意味もあります。花が美しいという意味ではありませんので、美しさの対象を間違えないようにしましょう。

また、「花恥ずかしい」は現代で日常的に使う言葉ではありません。結婚式や入学式、その他娘や孫の成長を喜ぶシーンなどで使うと良いでしょう。