「旨」の4つ意味と敬語の使い方・類語と旨を伝えるの例文

「旨」の4つの意味

「旨」には、3つの読み方と4つの意味があります。まずは、「旨」が持つ読み方とその意味について解説します。

「旨(むね)」は述べたことの中心的な意味のこと

1つ目は「旨」を「むね」と読み、「述べたことの中心的な意味」を表す意味です。「中心的な意味」とは、「おおよそこういうことを話した」という概要のようなもの、と認識すると良いかもしれません。

今朝の課長の話は、今期のノルマ必達のについてだった

この場合の「旨」は、「~という話」と置き換えることができます。「ノルマを必達するという話だった」と考えると、「旨」の役割がわかりやすいでしょう。

「旨(むね)」は主とする大事な点も意味する

2つ目も「旨」を「むね」と読みます。ただし、意味は「(その話の)主となった大事な点」です。話の全体を示すのではなく、話の中でも特に重要だった点を「旨」で表します。

今朝の課長の話は、今期のノルマ必達についてだったが、中でも既存顧客へのセルアップに力を入れるが伝えられた

この場合の旨は「特にその話の中でも、話し手が一番伝えたかったこと」という意味で使われます。「特に既存顧客へのセルアップに力を入れることが重要と言っていた」と、言い換えることができます。

「旨(むね)(し)」は心の中で考えていることも表す

3つ目は「旨」を訓読みで「むね」、または音読みで「し」と読みます。この場合の「旨」の意味は、人が心の中で考えていることです。

今朝の課長の話では、今期のノルマについてだったが、その旨意は課員に日々の自分の仕事の仕方を振り返ってもらうためだったようだ

「旨」を、人が心の中で考えていることを表す場合には「旨意」や「趣旨」「本旨」など、熟語として使われることがほとんどです。「旨意(しい)」とは、その人の考えや意図のことで、言葉にはしていない狙いなどを表します。

「旨い(うまい)」は食べ物や飲み物がおいしいという意味

4つ目は「旨」を「うま(い)」と読みます。この場合は「旨」は、食べ物や飲み物がおいしい、という意味です。

今朝の課長の話に出てきた、居酒屋Aの裏メニューはとても旨いらしい

「旨い」と似た意味の言葉は、「おいしい・美味しい」などがありますが、「旨い」は「おいしい・美味しい」に比べるとややぞんざいな言い方です。

ただし、「旨い」という言葉を使う人や場面がすべてぞんざいというわけではありません。人によっては、「おいしい・美味しい」という言葉よりも、「旨い」という言葉の方がその味や自分の感情に合っている、と判断して敢えて「旨い」を使うことがあります。

「旨(むね)」の使い方と例文

次に、「旨」の使い方を例文と一緒に解説します。

「その旨」が意味するのは「そのこと」

「旨」の意味の1つである、話の中心的な事・大事な事、を「その旨」ということがあります。この場合の「その」とは、指示語としての「その」と同じ働きをしています。

「その(今話題に上がった内容)旨(話題の中心的な、大事な内容)」が「その旨」です。

この「その旨」が効果的に使えるのは、「その」に含まれる内容が多い、もしくは一言で表すには複雑な場合です。

では今決まったように、次回会議は来週の水曜日で、時間は14時から、場所はA会議室で、テーマは次回新商品のデザインについての最終選考、と各課員に伝えてください

→ では、今決まったその旨を各課員に伝えてください

例文のように、「その旨」を使うことで、包括的な内容を指すことができます。そのため、前提として「その旨」が指す内容を、自分と相手が理解している必要があります。

「その旨を伝える」は話したり聞いたりしたことを伝える

ビジネスシーンで頻繁に使われるのが「その旨を伝える」というフレーズです。この「その旨を伝える」とは、「自分が聞いたり、話したりしたことを、誰かに伝える」という意味です。

かしこまりました、課長の上田からの連絡をご希望でいらっしゃいますね、上田が戻りましたらその旨を申し伝えます

本日は私から新商品について説明させていただきました、みなさん課に戻られましたらこの旨を課内の皆さんに伝えてください

「その旨」とは、「その話・この話」という意味です。あれ・これ、などと同じ指示語の一つですので、「その旨」についての認識が共通していなければ正しく機能しません。

「その旨を伝える」を使う場合は、「その旨」の前後に「〇〇についてですね」「〇〇についてを」など、何についてを「その旨」としているのかわかるような表現があると安心です。

「~という旨の発言」過去の発言を示す

「旨」を使った表現に「~という旨の発言」があります。「~という旨の発言」とは、過去の発言を指す言葉です。

噂では、部長が人員整理をするという旨の発言をされたそうです

私は先日、経費を個人流用したという旨の発言をしましたがが、それは本当のことです

「~という旨の発言」は、過去の発言であれば、その発言をしたのが自分でも他人でも使うことができます。「~という旨の発言」の「~」の部分は、具体的な話の核となる部分でも良いですし、大まかな概要でも構いません。

「~という旨を伺いました」は相手の発言を聞いたという意味の敬語

「~という旨を伺いました」とは、自分以外の人の発言を自分が聞いた、という意味です。

私は以前、社長より「後3年で退任する」という旨を伺いました、後継者の候補は決まっておられるのでしょうか

先方より、今後は自社へ一任していただけるという旨を伺いました、次回の打ち合わせで詳細について話し合われたいそうです

「~という旨を伺いました」の「~という旨」を話した人は、今会話をしている相手でも、それ以外の第三者でも構いません。

ただし、「伺いました」という「聞きました」の謙譲語を使っていることから、少なくとも今会話をしている相手は自分よりも目上の人、である必要があります。

「~の旨とする」はそのことを第一とすること

旨の使い方に「~の旨とする・~を旨とする」があります。この「~の(を)旨とする」は、他の「旨」とは少し使い方が異なります。

「~の(を)旨とする」とは、そのことを主とする(メインに考える)、そのことを第一に優先する、という意味です。

彼は健康を旨とする人なので、深酒や暴飲暴食をすることはない

A社の旨とする、若者に人気のデザインは、無名のデザイナーによるものだそうだよ

この使い方での「旨とする」は、先にお伝えした「旨」の使い方に比べると、あまり頻繁には使われていません。

自分で使うというよりは、相手の言っていることを理解する上で必要な使い方の知識、と考えておくと良いでしょう。

「~の旨、承知しました」は内容を確認しつつ受け入れる

上司や取引先との会話の中で、それまで相手が言っていたことについて「承知しました(かしこまりました)」と返事をすることがあります。

この時に使えるのが「~の旨、承知しました」です。

では〇〇の手配をしておいてくれ
→はい、〇〇手配の旨、承知いたしました

では以上で、よろしくお願いします
→はい、それではA商品のサンプル送付の旨、かしこまりました

この「~の旨、承知しました」は、自分が何を承知したのかを言葉にすることで、受け入れる返事と内容の確認を同時にできます。

ビジネスシーンでは、ただ「承知しました・かしこまりました」ではなく、「〇〇について承知しました」と、具体的な返事をすることが一般的です。

この具体的な返事をする時に「の旨、承知しました」とすれば、スマートに確認と受け入れの返事をすることができます。

 

「旨」の言い換えに使える類語

次に「旨」の類義語について解説します。

「~とのこと」

「~とのこと」は、比較的フランクな会話でも使われる表現です。「~と言っていた」「~だそうだ」という意味で使います。

例の件は、いったん保留とのことです

先方はこのまま契約を継続したいとのこと

「~とのこと」は、相手が言っていた言葉をそのまま使っても良いですし、相手が言っていた話の内容を要約して使っても問題ありません。

「~とのこと」の後は「です」など丁寧語が来ることもありますし、「だ」などフランクな口調を続けることもできます。話している相手と自分の関係によって使い分けましょう。

「そのように」

「そのように」とは、先に相手が言っていたことを出して、その後「そのように言っていました」などとつなげます。

田中さんは今年いっぱいで産休に入る、課長からはそのように聞いています

A社との契約は予定通り、上手く行くんだろうね
-はい、担当の佐藤君からはそのように聞いています

「そのように」は、「その話・その発言」を指しています。そのため、例文のように相手が言った言葉通りに聞いている場面でも「そのように聞いています」と、相手の言葉を引用して答えることができます。

「旨」の英語表現

最後に「旨」の英語表現について解説します。

「旨」は英語で「to that effect」

「旨」を英語で表す場合は「to that effect」を使います。

Please pass on my message to that effect.((自分が話したことを指して)その旨お伝えください)

I received orders to that effect.(その旨の指示を受けました)

日本語では「その旨お伝えください」など、「その旨」を使ったフレーズは決まり文句の一つです。しかし、英語の「to that effect」は、それほど多用されるフレーズではありません。

「旨」と全く同じニュアンスで使うためには、「to that effect」の前後を丁寧に話す必要があることも知っておきましょう。