「はばかる」の意味と例文!憎まれっ子世に憚るとは?

「はばかる」の意味と漢字

「はばかる」という言葉に、少し古い印象を持つ人は多いかもしれません。しかし「はばかる」は現代でも比較的頻繁に使われている言葉です。

まずは「はばかる」の意味と漢字について解説します。

「はばかる」とは「かかわりを避けようとすること」

「はばかる」とは、自分の置かれた立場・状況などを考えて、その人やその物事とかかわることを避けようとすることです。

私は来客であふれるエレベーターをはばかって、階段で移動した

田中さんは私たちとの付き合いをはばかっているようです

君のプライベートに口を出すのは気が引けるが、彼のような人とははばかった方が良いのではないかと思う

「かかわりを避ける」というと、少しネガティブな印象が強いかもしれませんが「はばかる」は、どちらかと言えば「遠慮する」「差し控える」というニュアンスを含んでいます。

「はばかる」は漢字で「憚る」

「はばかる」を漢字で書くと「憚る」という字があてられます。

「憚」には、差し控える・恐れる・ためらう・遠慮する、などの意味があり、この意味がそのまま、現代の「はばかる」の意味と考えても良いでしょう。

「はばかる」の使い方と例文

次に、「はばかる」の使い方を例文と一緒に解説します。

「遠慮する・ためらう」の意味で使う「はばかる」

「はばかる」を、本来の意味である「遠慮する・ためらう」という意味で使う場合です。

お客様がいらしているのだから、おしゃべりははばかりなさい

私は先方からの提案があまりに魅力的すぎて、少々はばかった

A社の社長とのお食事会ですか…私ははばかった方が良いのではないでしょうか

例文のように、誰かに対して遠慮する様子は「はばかる」で表せます。「はばかる」は変化させて使いやすいことから、以下のようなフレーズも頻繁に使われます。

  • 人目をはばかる(人目につかないように、コソコソとする)
  • はばかることなく(遠慮することなく、堂々としている)
  • はばかって(遠慮して・恐縮して)
  • はばかるべき(遠慮するべき)
  • はばかりなさい(遠慮しなさい)
  • はばかろうとする(遠慮しようとする)

このように、「はばかる」をさまざまな形に変化させることができます。いずれにしても「遠慮する」という言葉に置き換えたときに、不自然でなければ問題はないでしょう。

「幅をきかせる」の意味で使う「はばかる」

次に「はばかる」を、「幅をきかせる」という意味で使う場合です。

この「幅をきかせる」という意味で使う「はばかる」は、ほとんどの場合「憎まれっ子世にはばかる」ということわざとして用いられます。

あの子は昔から厚かましくて、調子も良いのだけど、なぜかいつも上手くやってるんだよね、憎まれっ子世にはばかるというやつなのかもしれないな

田中君は頭が良いだけに狡猾で、抜け目がないよね、しかしそれであの地位まで登りつめたのだから、憎まれっ子世にはばかるだね

「憎まれっ子世にはばかる」とは、無遠慮で気遣いをしない人が、人生を上手く渡って行くことを指すことわざです。

一見、悪い意味で使う言葉のようにも見えますが、必ずしも悪い意味でしか使わないということはありません。

「ダメなところがたくさんあるけれど、何となく憎めない」という、愛着を持った意味でも使われることも覚えておきましょう。

「はばかる」の言い換えに使える類語

次に「はばかる」と似た意味を持つ類語について解説します。

慎む(つつしむ)

「慎む」とは、気を付けて控えめにすることです。その場での言動について、度を過ぎないようにつつましくする様子を表します。

今日は取引先との初めての商談だ、くれぐれも自分勝手な言動は慎むように

私はその場の空気を壊さないよう、慎んで杯を受けた

彼女は身を慎むようにしながら、こそこそと会場を後にした

「慎む」は、例文のように事前の注意喚起や、自分への言い聞かせなどに使われることが多い言葉です。何かを我慢する、そうならないように自制する、という意味で使えます。

また、人に対して注意する場合は「~しなさい」などの命令形でも伝えられますが、「~を慎んでください」という言い方をすることで、ビジネス感が出ますし、立場にかかわらず慎んでほしいことを伝えやすいかもしれません。

差し控える

「差し控える」とは、発言や行動を自制するという意味です。「はばかる」と同様で「遠慮する」と考えると理解しやすいでしょう。

今回のパーティーは、上層部の方ばかりと聞いています、私は差し控えさせていただきます

君はお酒の失敗が多いと聞いている、今回の接待では酒は差し控えてもらえないだろうか

私は彼に、SNSへの書き込みを差し控えるように注意をした

「差し控える」には、遠慮しながら控えるというニュアンスがあります。人が、周りを気遣って言動を控えている場合や、誰かに何かの言動を止めるように伝える場面でも使える言葉です。

また、「差し控える」は単に「やめておきます」という言葉の言い換えにも使えます。「今日の飲み会は差し控えます」など、断りのフレーズとしても使えます。