「顧みる」の2つの意味
「顧みる」は、口頭でも文章内でも使われる言葉です。「顧みる」は「かえりみる」と読みます。
この「顧みる」には、主に2つの意味があります。まずは「顧みる」が持つ2つの意味について解説します。
振り向いて後ろを見る
1つ目の「顧みる」は、通り過ぎたあとを振り返って見る、という意味です。この場合の「振り返って見る」には、人が実際に振り返って後ろを見るという意味と、意識の中で過去を振り返るという意味があります。
彼は、ふと何かを思い出したように今来た道を顧みた
私は家の鍵を落としてしまったことに気がついて、思わず後ろを顧みた
私は入院をきっかけに、これまでの人生を顧みるようになった
妻は当時のことを顧みて涙を流していた
この「顧みる」は「意識の中で過去を振り返る」という意味で使われることが多いですが、実際に首や体を後ろに向けてその場所を見る、という意味でも使うという点がポイントです。
ゆっくりと考てみる
2つ目の「顧みる」は、世話が行き届いているかどうかをゆっくりと考えてみる、という意味です。この場合の「世話」とは、会社や家庭など何かしらの団体の経営や運営、特定の誰かについての手助け、を指しています。
今の私は、忙しくて家庭を顧みる暇がない
彼女は、仕事に追われて、子供のことを顧みない自分が許せなかった
この「顧みる」は、自分を取り巻く環境や、自分が世話をすべき対象について、ゆっくりと考えてみることを意味します。
「顧みる」の使い方と例文
以下では、「顧みる」の使い方について解説します。
反省・想起の意味で使う「顧みる」
「顧みる」が持つ、「振り向いて後ろを見る」という意味は、反省や想起の意味で使えます。
彼は、過去の失敗を顧みて、心を入れ替え頑張っているよ
あの頃を顧みると、私は自分のことしか考えられない、未熟な人間だったと思います
心配の意味で使う「顧みる」
何かを心配する意味でも「顧みる」が使えます。「心配」は、気にかけて思いわずらうことです。何かを思いわずらうことと、時間をかけてゆっくりと考えることにも通じる意味があり、「顧みる」を使って表せます。
私は遠方に住む父のことを顧みては、東京に来るよう話しているがなかなかその気になってくれない
母は自分が入院している間、家のことを顧みる余裕などなかったようだ
「省みる」との違い
「顧みる」は、別の漢字を使って「省みる」とも書きます。顧みると省みるに、大きな違いはありません。ただし「省みる」と書くのは、心配の意味での「かえりみる」の場合だけです。
「顧みる」の言い換えに使える類語
次に、「顧みる」の言い換えに使える類語について解説します。
一顧・内省
「顧みる」は、一顧・内省、で言い換えられます。
「一顧(いっこ)」とは、ちょっとだけ振り向いてその対象を目に留めることです。この「一顧」には、実際に振り返る意味だけでなく、記憶の中で以前のことを思い返す、という意味もあります。
「内省」とは、心の中で反省をすることです。この「内省」は、物理的に後ろを振り返るという意味は含んでいません。過去のことに思いを巡らす、という意味での「顧みる」の場合にのみ言い換えとして使えます。
私はその言葉で、数日前のあの出来事について一顧した
後ろから誰かに呼ばれた気がして、一顧したがそこには誰もいなかった
上司に注意をされた後、私はこれまでの自分の仕事ぶりについて内省をした
顧慮・後顧
「顧みる」は、顧慮・後顧でも言い換えができます。
「顧慮(こりょ)」とは、考慮しながら心遣いをするという意味です。
「後顧(こうこ)」には、振り返る・後に心がひかれる、という意味があります。
部長は、幹部の反対意見を顧慮せず、顧客と社員の満足を目指して仕事をしているところが特に人気だ
その時彼は、彼女の声に後顧し、軽く会釈をして歩き始めた
顧慮、後顧ともに、日常であまり頻繁に使うことはないかもしれません。しかし、「顧みる」の類語として覚えておけば、その場の様子や人の状態について細やかな表現ができます。
また、「後顧」については、口頭の会話で使うことはほぼありません。後顧は文章内で使う言葉です。