「適宜」の意味と使い方!随時との違いとは?

「適宜」の意味と読み方

ビジネスの場でよく使われる言葉に「適宜」があります。社会に出てしばらくすれば、聞きなれる言葉ですが、その言葉から意味までを知るのは難しいでしょう。

まずは、「適宜」の意味と読み方について解説します。

「適宜」とは必要に応じて

「適宜」とは、その場合や状況に合わせて・必要に応じてという意味です。

メールのチェックは漏れがないように、適宜各自で行ってください

新入社員の全体での教育は本日で終了です、今後は適宜指導を行って参ります

適宜の「適」にはふさわしいという意味があります。「宜」は都合が良い・ほどよい、という意味です。

つまり「適宜」は、その場合や状況にふさわしく都合が良い、と解釈できるのです。

「適宜」の読み方は「てきぎ」

「適宜」の読み方は「てきぎ」です。

適宜の読み方に迷う人の多くは「宜」の読み方でしょう。「宜」はギの他にも「よろしい・よし」などの読み方があります。人の名前に使われることも多く、その場合の多くは「よし」です。

「適宜」の使い方と例文

次に「適宜」の使い方を例文と一緒に解説します。どの言い方もビジネスの場で頻繁に使われているので、熟語として覚えておくと便利です。

適宜解散

「適宜解散」は、社員旅行や修学旅行など、団体行動の際によく使われています。「解散時間は決めず、都合の良いタイミングで解散をします」という意味です。

尚、東京駅へ到着したら、その後は適宜解散とするので、各自気をつけて帰ってください

適宜解散と聞いていたので、研修の終了後、施設を出て社に戻った

団体で行動する場合の多くは、集合時間と解散時間が決められています。しかし、一緒に行動する人数が多くなると、解散時にひとつの場所に集まることが難しくなったり、人によって集合できる時間が異なったりすることがあります。

そんな時に設けられるのが「適宜解散」です。「適宜解散」と言われたら、メインの用事が終わった後は自由に解散して良い、と解釈して問題ありません。

適宜対応

「適宜対応」とは、必要に応じた対応、という意味です。

お中元の時期が過ぎたので、専用窓口は撤去しました、お客様から今年のお中元について問い合わせがあった場合は、各自で適宜対応をしてください

この件については、経理課で適宜対応します、何かあれば内線で問い合わせをしてください

「適宜対応」は、対応する人や内容を特に決めずに、その時の状況で判断をして対応するという意味です。会社などではよく使われます。

特に対応方法や対処は決めていないけれど、その時になったら各自で良いように対応して欲しい、ということを伝える場面などで用いる表現です。

 

適宜変更

「適宜変更」とは「その時が来たら、良いように変更します」という意味です。

いったんこの案でいきましょう、A社の出方によっては適宜変更します

現在のルールは以上の通りです、後は様子を見て適宜変更としましょう

適宜変更も、適宜解散などと同じ意味で「適宜」が使われています。

このように、「適宜」の後には何を持って来ても「必要に応じて~」という意味になるので、その場の状況や自分が言いたいことが「適宜」で良い場合は、自由に言葉をつなげて問題ありません。

ビジネスの場では、他にも適宜確認・適宜指導・適宜提案・適宜連絡・適宜訪問など、さまざまな言葉が使われています。しかし「適宜」の意味は一つであり、基本的な意味は変わりません。

 

「適宜」は敬語での使用に注意

「適宜」にはひとつだけ注意点があります。それは目上の人との会話で使う「適宜」です。

「適宜」は自分や自分の身内についてしか使いません。目上の人の言動に適宜の意味合いを求める場合は、別の言葉を使います。

× では田中様、こちらの資料をご覧になって、ご質問などございましたら適宜ご連絡ください

〇 では田中様、こちらの資料をご覧になって、ご質問などございましたらいつでもご連絡ください

〇 では田中様、こちらの資料をご覧になって、ご質問などございましたらお手数ですがお問合せください

「適宜」という言葉の意味だけを考えると、特に目上の言動に使っても問題がないように感じるかもしれません。

しかし「適宜」に含まれる「自分で判断して必要と感じた時に」、という部分を目上の人に求めることは失礼です。

目上の人に適宜の要素を求める場合は、例文のように「いつでもご連絡~」「お手数ですがお問合せ~」など、別の言葉を使って伝えるようにしましょう。

「適宜」の言い換えに使える類義語と対義語

「適宜」はよく使われる言葉ですが、状況によっては少しニュアンスを変えて伝えたいこともあるでしょう。

以下では「適宜」と似た意味を持つ3つの類義語と、反対の意味を持つ対義語について解説します。

「適宜」の類語

「適宜」が「必要に応じて」という意味であるのに対して、以下の3つの言葉はもう少し具体的にそのタイミングを伝えられます。

「適時」とはちょうどよいタイミング

「適宜」と似た意味を持つ言葉に「適時(てきじ)」があります。「適時」とは、適切でちょうど良いタイミングという意味です。

先方へは、適時でプレゼントが届く手はずになっています

私は適時だと思っていたのですが、相手にとってはまだ早すぎたようです

「適時」は、漢字の通りの意味で理解がしやすく、意味も通りやすいでしょう。「その状況や必要に応じて考えた結果、これがベスト」と考えられるタイミングが「適時」です。

適時と適宜の違いは、「適宜で考えた結果決めた、行動を起こすタイミングが適時」と言えます。

「随時」とはいつでも・常に

「随時(ずいじ)」とは、期間や期限を決めず「いつでも・常に」を意味します。

会員は随時募集しています、気になった方はいつでも連絡してください

商品の購入は随時可能です、在庫がない場合はお声がけください

「随」には、「〇〇に従って・まにまに」という意味があります。その随と時が一つになった「随時」は、状況や必要に応じて・いつでもを意味する言葉です。

随時と適宜の違いは、随時は「常にその事柄に対して対応する準備ができている」のに対して、適宜は「必要なときに対応する」という点です。

「適切」は折を見て

「適切」は日常でも頻繁に使われています。「いつでも必要な時に」という意味です。

今は会員数が多いので、次回の新規会員の募集は、適切なタイミングで行おうと考えています

いつでも適切な対応ができるように、各部署は日頃から準備をしておいてください

「適切」には、「適宜」と似た意味の「いつでも必要な時に」という意味とは別の意味があります。それが例文下段の「適切」です。

この場合の「適切」は、タイミングについて言っているのではなく、「状況や相手が求めるものに対してきちんと合った」ということを言っています。どちらも「適切」なので、正しく理解をしておきましょう。

タイミングについて使う「適切」と適宜の違いは、「適切」が「適切な〇〇」という形で使われるのに対して、適宜は「適宜〇〇を行う」という形で使われることです。

適宜と適切は非常に意味が近いので、言い換えとしてはもっとも使いやすいかもしれません。

 

「適宜」の対義語は「常時・定時」

「適宜」と反対の意味を持つ言葉は「常時(じょうじ)」と「定時(ていじ)」です。

お歳暮期間中は常時アルバイトを募集しています

新商品のリリースは定時となっていますので、リリース前の情報漏洩に気をつけてください

「常時」とは、文字通り「いつでも・常に」という意味です。「定時」とは、決まった日時を指しています。

どちらの言葉も、「必要に応じて」と個人や会社などの判断に任せる「適宜」とはまったく反対の意味です。

ちなみに、「常時」は「常に・いつでも・期間を設けず」などと言い換えることができます。「定時」は「〇月〇日〇時になったら・〇〇が出来上がったら」などへの言い換えが可能です。