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「やぶさかではない」の意味と誤用
「やぶさかではない」または「やぶさかでない」という言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。しかし、意味がわからなかったり、思い違いで誤用していることもあるようです。
以下では「やぶさかではない」の意味とやってしまいがちな誤用について解説します。
「やぶさかではない」とは喜んで取り組むという意味
「やぶさかではない」とは、その物事に対して積極的で、喜んで取り組むという意味の言葉です。
入社3年目の私が課長ですか、もちろんやぶさかではございません、精一杯取り組ませていただきます
彼女は趣味にやぶさかではない様子で、いつも忙しくしているよ
私は上司から責任ある仕事を任され、やぶさかではない気持ちでいっぱいだった
例文のように、「やぶさかではない」はその人がその物事に対して非常に前向きで、喜んで取り組む様子を表します。
「やぶさかではない」の語源は「惜しまない」
この「やぶさかではない」の語源は「やふさし」という、日本の古い言葉です。「やぶさし」は、「惜しむ・けちけちする」という意味を持っています。
この「やふさし」を否定形(惜しまない・けちけちしない)にして「やふさし+ない」、となり、その後「やぶさかではない」になったと言われています。
「仕方なく取り組む」は誤用
「やぶさかではない」は、誤用されやすい言葉です。「やぶさかではない」を「仕方なく、いやいや取り組む」と誤認している人は多いと言われています。しかしこれは間違いです。
打消しが付いた言葉は、意味をはき違えてしまいやすいので、注意しておきましょう。
「やぶさかではない」の使い方と例文
次に、「やぶさかではない」の使い方を例文を交えて解説します。
積極的な気持ちを伝えたい場面で使う
自分やその人がどれだけ積極的な気持ちで臨んでいるか、ということを伝えたい場面で「やぶさかではない」が使えます。
私は元々開発の仕事がしたかったので、今回の商品開発部への異動はやぶさかではないのです
彼はこのアーティストのライブを観たいと以前から言っていたので、誘われるのはやぶさかではないはずだよ
目上の人との会話でも使える
「やぶさかではない」は、上司や取引先の方など、目上の人との会話にも使えます。
ただし、その場合は「やぶさかではありません・やぶさかではございません」など、必要な部分を敬語にする必要があります。
社長、この度は海外赴任の辞令をくださりありがとうございます、以前から興味があった海外での仕事は、私にとってやぶさかではございません
この度はお取引をいただきありがとうございます、御社のお役に立つのはやぶさかではございません、ぜひ何でも遠慮なくおっしゃってください
相手も意味を正しく把握している、という確信がない場合は他の言葉を使った方が無難かもしれません。
「やぶさかではない」の類語と対義語
次に「やぶさかではない」の言い換えに使える類義語と、反対の意味を持つ反対語について解説します。
類義語は「よろこんで・ありがたく」
「やぶさかではない」の類語には「よろこんで」「ありがたく」などがあります。どちらも、相手からの申し出や提案を快く引き受けるという意思表示に使える言葉です。
御社からのご意見、よろこんで弊社にて採用させていただきます
課長からそのようなお申し出をいただけるとは思ってもみませんでした、ありがたくお受けさせていただきます
「よろこんで・ありがたく」はどちらも相手に向けてのお礼を兼ねた言葉として機能します。
対義語は「まんざらでもない・やぶさかではあるが」
「やぶさかではない」と反対の意味を持つ言葉には「まんざらでもない」「やぶさかではあるが」などがあります。
どちらも、その事柄についてあまり積極的ではなく、渋々と取り組む様子を表します。
とても良い話だと思うのですが、うちの息子はまんざらでもないという程度で…これからやる気を出してくれればと思っています
この大量の書類をチェックするのか、やぶさかではあるが、同期のよしみで手伝うよ
「まんざらでもない」は、「渋々ながらも嫌ではない、悪い気はしていない」というニュアンスを持つ言葉です。そのため、積極性を感じる「やぶさかではない」の対義語というよりは、積極性を伴わない曖昧な状態、と考えておいて良いでしょう。
「やぶさかではない」に比べると、日常的によく使われる言葉ではありませんが、言葉の意味としては通ると言えます。