「的を射る」の意味と類語・例文!「的を得る」との違いは

「的を射る」の意味と誤用について

「的を射る」という慣用句があります。日常会話やビジネスの場でも頻繁に耳にするこの言葉ですが、使い方や言い方に迷っている人は多いかもしれません。

まずは「的を射る」の意味と、論議されている誤用について解説します。

「的を射る」とは要点を把握できている様子

まず、「的を射る(まとをいる)」の意味は「物事の核心を捉え、要点を把握できている様子」です。

賛否ありますが、私は彼の意見は的を射ていると思います

私が聞いているのは理由であって経緯ではありません、あなたの言っていることは的を射ていない

課長は相手を問わず、的を射た意見しか聞く耳を持たない

言い方を変えれば、「的を射る」とは、相手が望んでいることを答える、その状況に必要な情報を提供する、ということです。

物事の核心や要点を把握できていなければ、相手や状況に合った発言をすることはできません。

たとえば、「好きな食べ物は何ですか」と聞かれているのに、「私はあっさりした味付けの物が好きです」と答えるのは的を射ていないと言えます。この場合は「〇〇が好きです」と具体的に答えるのが「的を射た答え」です。

「的を得る」は間違いとは言い切れない

「的を射る」と非常に似た言葉に「的を得る(える)」があります。「的を射る」と「的を得る」は同じ意味として使われる言葉で、違いは「射る」と「得る」だけです。

まず、結論として「現代では的を得ると言っても間違いとは言い切れない」ということを知っておきましょう。

元々は「的を射る」でしたが、「的を得る」と誤って認識する人が多く、以前は「的を得るは誤り」と言われていました。

しかし、時代と共に「的を得る」も広く使われるようになったと同時に、「得る」という言葉に物事の要点や核心を理解する、という意味も含まれている、と言われ始めました。

現在では、一部の辞書でも「的を得る」という言葉についての表記がされています。

ただし、あくまでも原型は「的を射る」であり、人によっては「的を得るは誤り」と認識していることも珍しくありません。目上の人や言葉に敏感な人との会話では「的を射る」を使った方が無難でしょう。

「的を射る」の由来・語源は弓道

「的を射る」の言葉は、弓道に由来したと言われています。弓道は的に向かって弓を射る競技です。

この弓道の「的に当たるように弓を射る」という動作が、物事の要点を射抜く、というニュアンスになり、「的を射る」という慣用句になったと言われています。

「的を射る」の使い方と例文

次に、的を射るの使い方を例文と一緒にみてみましょう。

その発言や行動が核心をついている様子を表したい時

「的を射る」には、物事の要点や核心を捉えている、という意味しかありません。そのため、使うシーンは限られています。

あの場での田中さんの発言は的を射ていたと思います、他の人の発言は課題に対する問題点を指摘できていなかった

あの状況で席を外した彼の行動は、見方によっては的を射ていたのではないかと思う

「的を射る」は発言や意見について使うことが多い言葉ですが、行動にも使えます。その人の行動が、結果的にその状況をより良くするために必要なものであったのであれば、「的を射た行動」と表して良いでしょう。

目上の人の言動についてはあまり使わない

「的を射る」は、日常会話やビジネスシーンの会話など、どこででも使えます。ただし、その「的を射た言動をした人」が目上の人である場合は、使わない方が良い言葉でもあります。

たとえば、目上の人の発言が的を射ていると感じた時に、そのことを本人に伝えるのであれば以下のような言い回しがおすすめです。

部長の先ほどのご意見は、まさにおっしゃる通りだと思いました

社長があのように振る舞われた理由を知り、感服いたしました

「的を射ている」という表現は、ある意味で「その状況を上から、または並列した立ち位置から見て感じた」というニュアンスを含みます。

そのため、目上の人の言動に対して「的を射ている」を使うと、失礼になることがあるのです。もちろん「的を射ている」は慣用句であり、人によっては自分より目下の人から言われても不快に思わない、ということもあるでしょう。しかし、不安がある場合は「的を射る」以外の表現を使った方が無難です。

 

「的を射る」の類語と対義語

以下では「的を射る」の言い換えに使える類義語と、反対の意味を持つ対義語について解説します。

類義語は「正鵠を射る・看破」

「的を射る」の類語には「正鵠を射る(せいこくをいる)」と「看破(かんぱ)」があります。

「正鵠を射る」とは、「いちばん大事なところをつく」という意味です。

「正鵠」とは急所のことで、いちばん重要な点を指します。この「正鵠を射る」は、的を射るから派生した言葉と言われており、的を射ると同じように使えます。

要点や核心を的ではなく正鵠(弓矢の的)、に変えている言葉です。

彼の言っていることは、まさに正鵠を射るだな、私が待っていたのはあぁいう意見だ

正鵠を射ることができないから、いつまでも君の企画は採用されないのではないのか

「看破」とは、「見破る・本当の部分をつく」という意味です。

看破の「看」は看病などにも使われている漢字で、「みる(看る)」という意味があります。この「看」と破るという文字で構成された「看破」は、本当の部分を見る・正しいものを見破るという熟語です。

彼女は人の気持ちを看破することを得意としている

私は課長に看破され、何も言い返すことができなかった

当を得るは合理的であること

「的を射る」と似た言葉に「当を得る(とうをえる)」があります。しかし、「当を得る」は「合理的、物事の道理にかなっている」という意味です。「的を射る」の意味とは異なります

そのため「的を射る」と同じ状況で使うと、意味が通らなくなるため、誤用に注意しましょう。

反対語は「的を射ていない(的を得ていない)」

「的を射る」と反対の意味を表したい場合は「的を射ていない」という表現が良いでしょう。

「的を射てない」または「的を得ていない」という言い回しは、「的を射る」を否定の形にしているだけです。

あなたの言うことは的を射ていないのだから、採用されないのも無理はない

彼はよく発言する割に、的を射ないことが多いと聞いている

「的を射ていない」は「的を射ない」という言い方でもよく使われます。どちらを使っても間違いではありません。