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「で・にて」の意味
「で・にて」は、いずれも場所や時間、手段や方法などを表す場合に用いる格助詞です。場合によっては物事の原因や理由などを示す場合にも使います。
「電車で帰ります=電車にて帰ります」「会場で会いましょう=会場にてお会いしましょう」「約束は5時でお願いします=約束は5時にて取り付けております」など、「で・にて」はほぼ同じ意味として使われます。
格助詞とは、主には主語の後に来る助詞のことです。
「で・にて」 の使い分けと例文
たとえば「スプーンで召し上がる」は、「スプーンにて召し上がる」と言い換えることができます。この場合、「で」を使うことが一般的だと思われますが、状況によっては「にて」の方がふさわしいと感じる場合もあります。
この「で」と「にて」のニュアンスの違いは何なのでしょう。
「で」と「にて」の違いは?
「で」・「にて」は、どちらも場所・時間や手段・方法、原因・理由などを示す格助詞であることはお伝えしました。この「で・にて」に違いがあるとすれば、「にて」の方が言葉の格式が高く、丁寧な印象を強めることができます。
実際に「にて」の方が古くから存在し、奈良時代に成立した『万葉集』の中にもすでにその用例が見受けられます。
一方、「で」は平安時代の文献から見られるようになり、「にて」が変化したものと考えられています。通常は、硬い内容の文章や改まった丁寧な言葉遣いのときに用いられます。
【で・にて の使い分け例文】
丸の内線をご利用の場合は、新宿駅にてお乗り換えください。(場所+にて)
ご予約の受け付けは、先月末日にて終了させていただきました。(時間+にて)
当日ご都合によりご欠席の場合は、電話またはメールにてお知らせください。(手段+にて)
この書類へのご署名・ご捺印にて、手続きはすべて完了いたします。(方法+にて)
この度の事故にて、生産計画の大幅な変更を余儀なくされました。(原因+にて)
皆様の多大なるご支援にてプロジェクトを成功させることができました。(理由+にて)
「で・にて」の言い換えに使える類語
「で・にて」を他の言葉で言い換える場合は、「で・にて」をどのような意味で使うかによって選ぶ言葉が変わります。
場所を表す「で・にて」の類語は「~において」
「で・にて」が場所を示す意味で使われている場合は、「~において」という言葉で言い換えが可能です。「○○ホテル(で)にて記念式典を行います=○○ホテルにおいて記念式典を行います」「自宅(で)にて待機します=自宅において待機します」などが使用例です。
「~において」は、「にて」と同様に格式のある言葉として知られているため、「~において」を使うのはある程度改まった場面です。日常的に頻繁に「~において」が使われることはほとんどありません。
理由や原因を表す「で・にて」の類語は「~により(よって)」
「で・にて」が物事の理由や原因を示す意味で使われている場合は、「~により・~によって」という言葉で言い換えることができます。
「○○様のご支援にて、無事成功いたしました=○○様のご支援により(よって)、無事成功いたしました」「天災で多くの電車に遅れが生じています=天災により(よって)多くの電車に遅れが生じております」などが使用例です。
「で・にて」を使う場合の注意点
「で・にて」は、使い慣れると大変便利な言葉です。しかし、便利だからこそ気を付けておかなければならない注意点もあります。
「で・にて」は多用すると内容を複雑にする
「で・にて」という言葉を、一文の中で多用すると、話の内容が理解しにくくなるので注意しましょう。
たとえば「この書類は次回の会議にて必要ですのでお持ちいただきたいことと、おいでいただく際には渋谷駅にてお集まりいただき、担当者にてご案内させていただきますので~」という文章があったとします。
「にて」がさまざまな意味で使われていることで、読み手や聞き手が内容を理解しにくくなっています。