【目上へ】ひとかたならぬの意味と使い方 例文

ひとかたならぬの意味と使い方

「ひとかたならぬ」は、非常に古い文語表現なのですが、現在でもメールを含めて書簡文でよく使われます。

ちなみに、この言葉は、普通であることを意味する文語の形容動詞「一方」に否定の助動詞「ず」が接続した形(未然形「一方なら」+連体形「ぬ」)であり、「普通ではない」、「並々ではない」、「尋常ではない」という意味となって、その次に来る名詞を修飾します。

例えば、「ひとかたならぬご恩を被る(こうむる)」、「ひとかたならぬご配慮を賜る」、「ひとかたならぬお世話になる」といった使われ方をします。

一般に、「ひとかたならぬ」は良い意味の名詞を修飾する場合が多いようです。

しかし、例えば「ひとかたならぬ愛情を注ぐ」という用例がある反面、「ひとかたならぬ」は悪い意味合いの名詞にも使える言葉です。「ひとかたならぬ憎悪を抱く」という表現もできます。

注意
しかしながら、いずれにしても古めかしい硬い言葉であり、改まった文面の書簡・メールで使うべきでしょう。

ひとかたならぬの例文

在職中はひとかたならぬお世話になりまして、本当にありがとうございました。

この度はひとかたならぬお世話になり、お礼の言葉もございません。

日頃より一方ならぬご愛顧を賜り、厚く御礼申し上げます。

旧年中はひとかたならぬご厚誼を賜り、深く感謝申し上げます。

先生よりひとかたならぬご指導とご鞭撻を頂いた2年間の思い出を胸に、今日、私たちは卒業致します。

「ひとかたならぬ」は特別な思いを伝える

「本当にお世話になりました」「誠にありがとうございました」などの言葉では、自分の気持ちが伝えきれないような気持ちになることがあるでしょう。相手が友人や気心の知れた人であれば別ですが、目上の方の場合はその気持ちみ見合った言葉でお礼を伝えたいものです。

そんな時に「ひとかたならぬ」という言葉を使えば、こちらの深い感謝の気持ちを伝えやすくなります。

「ひとかたならぬご愛顧を賜り、厚く御礼申し上げます」などとすることができるでしょう。

「ひとかたならぬ」という言葉自体に「言葉に表せないほど」というニュアンスが含まれているので、その後に来る御礼の言葉に重みを持たせてくれます。

「ひとかたならぬ」は「区切りの挨拶」に使う

「ひとかたならぬ」を上手く使えると、お礼に言葉に自身の気持ちを乗せやすくなりとても便利に感じるものです。

しかし「ひとかたならぬ」は言葉にとても高い品位を持つことから、普段使いには向きません。お正月や就任の挨拶、または異動や転勤など、何かしらの「区切り」で使うことが多いでしょう。

「この区切りに、いつも胸に持っていた感謝の想いを伝えたい」という気持ちで使うと上手く使うことができます。

普段から多用してしまうと、いざという時の「ひとかたならぬ」に重みがなくなってしまいますし、ここぞという時以外で使うことで相手に対して「大げさ」「軽い」という印象を持たれる可能性もあるので注意が必要です。

「ひとかたならぬ」の類語表現

「ひとかたならぬ」を使うほどの場面ではない、または「ひとかたならぬ」という言葉が合うほど自分が成熟していない、という場合は類語表現を上手く使って想いを伝えましょう。

「誠に」

普段から使っているという人も多い「誠に」も「ひとかたならぬ」の類語です。

本来であれば「誠に」という言葉にも品格があり、気持ちを表すには適した言葉です。しかし、一般的に広く使われていることや、普段使いをする機会が多いことでなんとなくありきたりな印象を持たれやすくなっています。

「誠に」という言葉を使って、強い感謝の気持ちを伝えたい場合は「誠に」の前に「理由」を付けるようにしてみましょう。

「先日は誠にありがとうございました」だと、「何となく」「挨拶程度」という印象を持たれやすくなりますが、「先日は暑い中わざわざおいでくださり、誠にありがとうございました」など、どの部分に感謝をしているかということを言葉にすれば、「誠に」が生きてきます。

「ひとえに」

相手からの協力などに感謝している気持ちを表す場合に「ひとえに」という表現を使うこともあります。

「ひとかたならぬ」は「相手がしてくれた努力」「相手がしてくれた配慮」などにかかる言葉ですが、「ひとえに」は「相手の力」「相手の度量」などにかかる言葉です。

「この場に立てているのは、ひとえに○○様のお力があってのことでございます」などとすることで、相手の「人としての価値」にスポットを当てることができます。