「無常」の意味とは?無情との違いや使い方と例文も!

「無常」の意味

「無常」は仏教用語のひとつですが、日常でも使われることがあります。「無常」は意味の幅が広く、人だけではなく自然や物事についても使える言葉です。

まずは以下で、「無常」の意味について確認しておきましょう。

「無常」とは不変のものはないという意味

「無常」とは、人や物・自然など、この世の全ては必ず変化する、という意味です。

世の中は無常なのだから、物事が予定通りに進まないからと言って、そんなに悲観することはないと私は思います

人も自然も無常であることは同じ、その時々に対応していくしかないのだろうね

「無常」は仏教用語のひとつです。仏教では、生あるものはいつか必ず滅びる、何一つとして変わらないものはない、と言っています。これが「無常」です。

この仏教の教えに、毎日の生活や出来事をなぞらえて使うのが、日常で使う「無常」といえます。

諸行無常とはこの世のすべては移り変わる

「無常」と聞いて「諸行無常(しょぎょうむじょう)」を思い浮かべる人は多いでしょう。諸行無常とは、平家物語に出て来る有名な言葉に「諸行無常の響きあり」というものがあります。

確かに今回のことには大変驚いた、しかし諸行無常というように、世の中はこうやって変わっていくのだろう

いくら諸行無常と言っても、まさかあのA社が倒産するなんて誰が予想しただろうか

この諸行無常も、「無常」と同じように「世の中のすべては移り変わる」と言っています。「諸行」とはこの世のすべて、という意味です。

「諸行無常」と「無常」の意味は同じですが、特に世の中全体のことや、とても大きな変化や驚くべき変化については「諸行無常」を使うことが多いでしょう。

「無情・無上」の意味と無常との違い

「無常」には、同じ読み方で漢字と意味が異なる言葉が2つあります。それは「無情」と「無上」です。

以下では、無情と無上について解説します。

無情とは人としての情けがないこと

「無情」とは、文字通り「情けがないこと」です。「無情」は人の心について使う言葉で、その人の中に人間らしい情や思いやりの気持ちがないことを意味します。

彼は評判以上に冷酷な人間だよ、無情にもほどがある

彼女は人がどんなに困っていても、手を貸すどころか無視すらする、あんな無情な人を私は見たことがない

「無情」も「無常」と同じで仏教用語のひとつです。無情とは、人や動物・植物などをいつくしむ気持ちがなく、自分以外の人やものを思いやる気持ちがまったくない様子を意味します。

似た意味を持つ言葉に「薄情」がありますが、薄情は薄いながらも情があるという点が「無情」との違いです。

無上とはこの上ないこと

「無上」も仏教用語のひとつで、「この上ない・最上の」という意味があります。

その時、私は人生において無上の喜びを感じた

今回は細かい部分にまでとことんこだわり、自分にとって無上の作品を作り上げたつもりです

「無上」は、文字通り「これ以上はない」という意味を持っています。過去から現在までの間で最も優れている、最も嬉しい、などポジティブな意味として使うことが多い言葉です。

「無上」を他の言葉に言い換えるのであれば、「最高」「この上ない」などが良いでしょう。

「無常」の使い方と例文

「無常」を日常で使うシーンは、ある程度限られています。以下では、「無常」の使い方を例文と一緒にご紹介します。

人の変化を表す

「無常」が使われるシーンのひとつに「人の変化を目の当たりにしたとき」があります。

「無常」は世の中や人間は常に変わり続けると言っていて、何かしらの要因で人間が変化することも「無常」に当てはまるためです。

先日までとても元気だった彼が、まさか亡くなってしまうとは、世の中の無常を感じる

若い頃に比べると体が衰えるのは当然のことだ、それが無常というものだ

世の中の時間の経過と共に、人が変わっていくことが「無常」です。この場合の「変わっていく」とは、生きていた人が亡くなったり、そこになかったシワやシミができたりすることを指しています。

基本的には、多くの人がネガティブに感じている変化について「無常」は使われ、「それも当然のこととして受け入れるしかない」というニュアンスを持っています。

物事の変化を表す

「無常」を使うもう一つのシーンは物の変化についてです。

今まであった物が無くなる、成立していた物が壊れる、このような変化も「無常」だと言えます。

娘はお気に入りのおもちゃが壊れた事実を受け入れられていない、すべては無常だとまだ知らないからだ

どんなに優れた商品でも、いつまでもそれが最も優れているというわけではない、無常であることを受け入れるべきだ

お皿が割れる、花が散る、などこれまで成立していた形が変化することも「無常」です。割れる・散る、その他の表現もすべて物の変化について表しますが、「無常」は「そうなることも当然と受け入れる」という、考え方自体を指しています。

そのため、物が壊れたこと自体を「無常」と表現するよりも、物が変化することについての真理が「無常」と表現しているのです。

「無常」の言い換えに使える類義語と対義語

「無常」には、似た意味を持つ言葉がいくつかあります。

以下では、「無常」の類義語と、反対の意味を持つ対義語について解説します。

無常の類語は「千変万化・万物流転」

「無常」の言い換えに使える類義語には「千変万化」や「万物流転」があります。

千変万化

「千変万化(せんぺんばんか)」とは、物事が変化することを意味する四字熟語です。

山々の景色はいつ見ても千変万化、一つとして昨日と同じものなどない

どの業界も同じだが、ビジネスはまさに千変万化、常に進み続ける覚悟がなければ置いて行かれてしまう

「千変万化」も、無常と同じように物事が変化し続けることを表現します。

違いは、無常は「変わらないことはない」で、千変万化は「変わり続ける」という視点であることです。どちらも結論は同じですが、言葉としてのニュアンスが異なります。

万物流転

「万物流転(ばんぶつるてん)」とは、この世にあるものはすべて絶え間なく変化し続けている、という意味の四字熟語です。

まさかあの大企業が倒産してしまうとは驚きだが、万物流転と考えればそういうこともあるのだろうと思える

見事に咲いたこの花たちも、季節が変われば枯れてしまう、万物流転とはそういうことだ

万物流転も、無常と同じで「変わらないものはない、すべては変わる」と言っている言葉です。

万物とは「すべてのもの」、流転は「変化」を表しています。「無常」との違いは、変化する対象です。万物流転は、主に自分以外のものの変化について使い、無常は自分の変化についても使います。

無常の対義語は「永久不変」

「無常」とは反対の意味を持つ言葉に「永久不変(えいきゅうふへん)」があります。永久不変とは、いつまでも変わらないという意味です。

私は彼女との、この信頼関係が永久不変であると信じています

わが社が目指すのは、永久不変の情熱です、いつまでも自社製品に絶対的な愛情と自信を持ち続けようとしています

「永久不変」には、どれだけ時間が経過しても変化しない、何があっても変わらない、という意味があります。

実際に永久に不変であるかどうかは誰にもわからず、確かめることもできません。あくまでも、そういう気持ちでいる、そうだと信じている、という意味合いで使う言葉です。