間違いやすい「努める」の意味と務める・勤めるとの違い

「努める」の意味

まず、「努める」の意味について解説します。

「努める」の意味は努力して目的を果たす

「努める(つとめる)」とは、自分に課せられた役割として、精一杯の努力をし、目的を果たそうとする行為です。

彼は我が社の開発技術の向上に努めている

私は社員の前では感情を出さないように努めた

「努める」は「努力」の「努」と書きますが、「努」には、力を尽くして働く、という意味があります。目的の達成に向けて力を尽くして働く、それが「努める」です。

「努める」の送り仮名は「める」

「努める」の送り仮名は「める」です。「努める」が正しい書き方です。

「努る」「努とめる」などはいずれも間違いですので、「努める」と正しく書くようにしましょう。

「努める」の部首は「力」

「努」という漢字の部署は「力」です。

「努」は「女」「又」「力」と、3つの漢字が集まってできています。この中で、「努」の意味としてもっとも影響力が高いのは「力」です。そのため、「努」の部署も「力」となります。

「努める・務める・勤める」の違い

次に、同じ「つとめる」と読む「務める」「勤める」についても解説します。

「務める」とは任務を怠りなく行うこと

「務める」とは、自分に与えられた任務や役割を、怠りなく行うことです。

彼女は次回の舞台で主演を務める

私は、役職に関係なくしっかりと務めている人こそが次期課長に相応しいと思います

「努める」が目指すものは、自分の役割を果たすことであり、「務める」が目指すのは、自分の任務を怠らずに遂行することです。

目指すところは似ていますが、「努める」はたとえ途中で怠ってしまったとしても目的を達成できれば問題ありません。一方、「務める」は自分に課せられた任務を怠った時点で「務めていない」ということになります。

「勤める」とは報酬をもらって仕事をする

「勤める」とは、報酬などの条件を、契約によって定めてその組織・団体の一員として課せられた仕事をすることです。

私は大学卒業後から現在まで、今の会社で勤めています

彼の父親はあの大企業に勤めていると聞いたことがある

「勤」は、「勤務」などにも使われている文字で、職務に従事するという意味があります。その「勤」を使った「勤める」は、その通りどこかの企業や団体に属して、勤務している様子です。

「努める・務める」とは根本的に意味が違うため、文字の間違いをしないように注意しましょう。

「努める」の使い方と例文

次に、「努める」の使い方を例文を交えて解説します。

予防に努める・解決に努める

「努める」は、さまざまな言葉と組み合わせて使うことができます。病気の予防に努める、物事の解決に努める、などは日常でもよく耳にするフレーズです。

私は身体が弱いので、いつも風邪の予防に努めながら生活しています

彼は社内の問題解決に努めるという、大きな任務を全うした

「努める」の使い方に迷ったときは、その物事が努力や工夫で解決・改善しそうなことかどうかを考えてみましょう

風邪や社内の問題のように、然るべき対応をすれば恐らく目的を達せられるだろう、と考えられることなら「努める」です。

目標達成に努めるは二重表現

「努める」には「自分に課せられた役割として、精一杯の努力をし、目的を果たそうとする行為」という意味があることは先に解説しました。つまり、「努める」という言葉には「すでに目標(目的)を達成する」という意味が含まれているということです。

そう考えると「目標達成に努める」というフレーズが二重表現であることがわかります。

「目標達成に向けて努力する」もしくは、「利益20%増を目指して努める」など、表現を変える必要があります。

「努める」の尊敬語表現

次に、「努める」の尊敬語表現について解説します。

「努める」の敬語は「お努めになる」

「努める」の尊敬語は「お努めになる」です。「努める」に「お」をつけて丁寧語にし、目上の人の行為を表す「~になる」をつけて「お努めになる」とします。

課長は課の効率化向上にお努めになっています

先方のご担当者様は弊社との契約に前向きで、これから上司の方の許可を得るためにお努めになるとのことです

ちなみに、「お努めになられる」は二重敬語です。

「お努めになる」「お努めでいらっしゃる」「お努めくださっている」など、「~なる」と「~られる」を一緒に使わない表現を使いましょう。

「努める」の言い換えに使える類語

次に、「努める」の類語について解説します。

「努める」の類語は「励む」

「努める」の類語は「励む(はげむ)」です。

彼は我が社の開発技術の向上に励んでいる

私は社員の前では感情を出さないように励んだ

「励む」とは、心を奮い起こしてつとめる、精を出す、という意味です。

「努める」の、精一杯の努力をし、目的を果たそうとする行為、という意味に大変近く、「努める」をそのまま「励む」と言い換えても問題ありません

反対に、「努める」で合っているか自信がない場合は、仮に「励む」と当てはめてみるのも良いでしょう。「励む」で違和感がなければ、「努める」で合っていると考えられそうです。

「努める」の英語表現

最後に「努める」の英語表現について解説します。

「努める」は英語で「take action」

日本語の「努める」は、英語で「take action」です。

We would like to take action to prevent a recurrence.(私たちは再発防止に努めたいと考えています)

He take action about his weight problem.(彼は減量に努めている)

「take action」は、直訳すると「行動をとる」です。そのため、直接的に「努める」という意味は持っていません。しかし、「努める」には、何らかの行動をとる必要があり、その言葉のイメージを「take action」にあてています。